A screenshot from Eastward

『Eastward』:香港印の和洋折衷JRPG

© Pixpil/Chucklefish

『ゼルダの伝説』シリーズや『MOTHER』シリーズに影響を受けている香港発JRPGのデベロッパー&パブリッシャーに話を聞いた。

ロンドンに拠点を置くパブリッシャーChucklefishは現在あるひとつのプロジェクトに取り組んでいる。
Eric “ConcerenedApe” Baroneが手掛けた農業シミュレーション『Stardew Valley』が大ヒットしたことで、この企業は一気に有名になった。
その結果、デベロッパーでもある彼らが自分たちで開発した『Wargroove』や『Witchbrook』も注目を集めることになったが、彼らがパブリッシャー業をやめるつもりはまだないようだ。
現在、彼らは上海に拠点を置くデベロッパーPixpilが3年前から開発に取り組んでいるピクセルアートのRPGアドベンチャー『Eastward』を担当している。
『Eastward』は、日本のアニメや『ゼルダの伝説』シリーズ、『MOTHER』シリーズなどから得たインスピレーションを魅力的なSFストーリーと組み合わせた作品だ。
Pixpilの共同設立者でデザイナーのFeng Yeは次のように話を始める。
「リードアーティストのHongが、香港の九龍城砦のような姿をした、モンスターが棲む奇妙な建物のスケッチを描いたことから全てが始まりました。私たちはそのスケッチが大いに気に入り、ゲームを作ろうという話になったんです」
「最初のブレインストーミングではモバイルパズルゲームなど別のアイディアが出ましたが、最終的には分厚いストーリーを用意したアクションJRPGを作ろうという結論になりました」
「そして、共同設立者のTommoが『Eastward』というタイトル、世界観に関するいくつかのキーコンセプトを思いつきました。その日から『Eastward』は実現に向けて本格的に動き始めたんです」
Pixpilは3人の少数精鋭チームとしてスタートしたが、『Eastward』の開発が進むに連れて、12人のチームに膨らんだ。
彼らのオフィスは人で賑わう上海のあるショッピングモールの家具屋に囲まれた一角にある。
Yeが言うところの、この “小さくて目立たない” ロケーションが、謎の勢力によって破壊されたあとも攻撃に晒されている未来都市を舞台にした殺伐とした終末論的ストーリーに多少なりとも影響を与えていると思わずにはいられない。
プレイヤーは不思議な魅力を備えている2人の主人公と共に、この恐ろしい世界を突き進んでいくことになる。
Yeが説明する。
「このゲームの主人公はJohnSamです。Johnはタフな努力家の男性で、Samはふわりとした白髪が特徴の女の子ですね。2人は世界から切り離されたミステリアスな地下から旅を始めます」
「世界は人類滅亡の危機に晒されていて、奇妙な生物が都市を襲うようになっています。地下の小さな村から出発した2人は、徐々に世界が危険になった原因と先に待つ運命を知ることになります」
人類滅亡の危機という設定が用意されているにも関わらず、『Eastward』にJRPGのクラシックタイトルと同じく、多種多様なキャラクターが大量に用意されている。
ChucklefishのマーケティングストラテジストKaty Ellisは次のように説明している。
「個性豊かな奇妙なキャラクターが多数登場します。JohnとSamは自分たちの旅を通じて、不思議な魅力に溢れている市民たちに出会っていきます」
「たとえば、人間になる手術を受ける予定のロボット少年と一緒に暮らしている、Williamという名前の紳士的な商人が登場します」
『Eastward』には、このような古典文学にSFタッチを加えた設定が数多く用意されている。

キャラクターを切り替えて操作

『Eastward』はシングルプレイヤー専用だが、プレイヤーは2人の主人公を切り替えながら操作して、それぞれのスキルを駆使してパズルを解いていく必要がある。
Pixpilのプロデューサー兼コーダーTommo Zhouが説明する。
「チャレンジングですが非常に面白いデザインになっています。最終的にはJohnの方が比重が大きくなる予定ですが、Samにも重要な役割を任せたいと思っています」
「ゲームプレイは、基本的には片方のキャラクターを操作するともう片方のキャラクターがついてくるようになっていて、プレイヤーは操作キャラクターを切り替えながら、それぞれのスキルで様々な問題やパズルをクリアしていきます。もちろん、2人を別の場所に配置してクリアしなければならないシーンも用意されています」
「このシステムがゲームプレイの可能性と複雑性を高めていると言えるでしょう。プレイヤーがこの部分を楽しんでくれることを願っています」
A screenshot from Eastward
アジアンテイスト溢れるデザイン
『Eastward』は、2Dに3Dエフェクトを加えていることも特徴で、これはPixpilが独自に開発したゲームエンジンにオープンソースソフトウェアMOAIを組み合わせることで実現されている。
Yeが説明する。
「3Dグラフィックスからいくつかのアイディアを借りているので、最新のハードウェアの性能を無駄なく活かしています。ライティングは基本的に遅延シェーディングで、デザイナーがステージに制限なく光を加えらます。これを活用して各シーンのムードを変化させています」
「ポストプロセッシングやスプライト、3Dグラフィックス用語としてのマテリアルなど、この先もいくつかの部分を詰めていく予定です。また、スプライトを上手く配置して3D的な表現をしつつ、2Dの美しさを保っている部分もあります。このような私たちのヴィジュアルエフェクトを気に入ってもらえれば嬉しいですね」
ChucklefishのプロデューサーRosie Ballは『Eastward』の美しいヴィジュアルが、自分たちがパブリッシャーを担当することになった大きな理由のひとつだとし、次のように続ける。
「この『Eastward』をひと目見た瞬間、その美しいアートスタイルの虜になりました。もっと見たいと思ったんです。それでPixpilに連絡を取り、実際にプレイさせてもらいました」
「テストプレイで、このゲームはルックスだけが魅力ではないことが分かったのは嬉しかったですね。ヴィジュアルに使用されているテクノロジーも非常に興味深いものなんです。また、ピクセルアートの扱いも非常にクリエイティブでした」
「Pixpilは非常に革新的なテクニックを使っています。Chucklefishとしてはそこにも興奮を感じています」
しかし、Pixpilはこの部分だけに力を入れているわけではない。
彼らはオーディオも同様に魅力的なものにしようと努力しており、音楽をJoel Corelitz(『The Unfinished Swan』/『Gorogoa』/『TumbleSeed』)とHyperduck Soundworks(『Dust: An Elysian Tail』/『The Adventure Pals』)に依頼している。
Yeは音楽担当を社内に用意しなかった理由について次のように説明している。
「ゲーム用語を理解している作曲家を上海で見つけるのが難しいというのが理由のひとつです。また、私たちはゲームにおける音楽の重要性を十分に理解していますが、インディーデベロッパーが音楽&サウンド担当をフルタイムで雇うのは難しいという現状があります。これがもうひとつの理由です」
Zhouは、PixpilはCorelitz、Hyperduckの2人と細かく連絡を取りながら、サウンドトラックがゲームに合うようにしているとしている。
「Joel CorelitzやHyperduckのような経験豊かな人たちとの仕事にはひとつのメリットがあります。それは、彼らがゲームに何が必要なのかを非常に良く理解しているということです」
「最初はアイディアを試したり、組み合わせたりしていたので少し時間がかかりましたが、開発が進んでいくと、苦労することなくお互いを良く理解できるようになりました」
「今は自分たちが求めている音楽を参考資料やデモと一緒に説明したあとは、素晴らしいサプライズが届くのを待つだけで良くなりました」
『Eastward』が完成に近づいてきた今は、Pixpilがこれまでの全作業を振り返るのにパーフェクトなタイミングと言える。
Yeは「このゲームのアート、音楽、雰囲気を誇りに思えています。完成してリリースしたあとは、ストーリーやステージデザイン、売り上げについても誇りに思えれば嬉しいですね」と語っている。
またYeは、Chucklefishとのパートナーシップが非常に役に立っていると続ける。
「彼らはレスポンスが速いモダンなパブリッシャーです。メールではなくチャットで連絡を取り合っています。全てがスピーディかつプロフェッショナルに進んでいますね」
「彼らはインディーデベロッパーが何を必要としているのかについて熟知しているので、開発をスムーズに進められる助けになっています」
ChucklefishもPixpilに好印象を持っているようだ。プロダクトマネージャーTom Katkusは「Pixpilとの仕事は最高に楽しいですよ。努力を怠らない情熱的なチームですね。クリエティブでナイスな人たちの集まりです」としている。
2018年5月現在、『Eastward』はPCとMacのみでのリリースが予定されているが、Pixpilは他のプラットフォームでのリリースについても隠さずに語ってくれている。
「可能ですよ。Linux版もあるかもしれません。今はPC版とMac版のみに注力していますが、全てが上手くいけば、家庭用ゲーム機を含めた他のプラットフォームについて考えることになるでしょう」
また、他のプロジェクトに関して質問が及ぶと、Yeは、現在は『Eastward』に絞っているとし、そのあとの展開についてはまだ特に予定を決めていないとしている。
しかし、Chucklefishは、『Eastward』は両社の協力体制の始まりであり、Pixpilがエキサイティングなスタジオとして注目を集める可能性も十分にあると考えているようだ。
Ballは最後にこうコメントしている。
「Pixpilは素晴らしいインディースタジオになれる可能性を秘めています。彼らから次のアイディアを見せてもらうのが楽しみですよ」
   
『Eastward』はPC・Macでリリース予定。リリーススケジュールは未定。
   
Twitterアカウント@RedBullGamingJPFacebookページをフォローして、ビデオゲームやesportsの最新情報をゲットしよう!