Exeter Chiefs and England rugby union player Jack Nowell on the beach in Jersey, 14th October 2022.
© Will Douglas/Red Bull Content Pool
eスポーツ

ラグビーイングランド代表:エディー・ジョーンズHCが取り入れた日本流 “禊” 合宿とは?

ラグビーイングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズは、イノベーティブなトレーニングを取り入れていることで知られている。2022年秋、ジョーンズは代表合宿で日本の儀礼を取り入れた。
Written by Alex Mead
読み終わるまで:5分公開日:
世界的に有名なイングランド代表チームの合宿で “滝に打たれる” がトレーニングメニューに含まれているとはまず思わないだろう。
しかし、日本の “禊(みそぎ)” が、イングランド代表の結束力を高めるトレーニングメニューを探していたエディー・ジョーンズに大きなインスピレーションをもたらした。
「禊」は神道における沐浴行為で、罪や汚れを浄化するために冷たい滝に打たれたり、湖・川に入ったりする儀礼だ。この儀礼は感覚をリセットし、メンタルストレングスを得る助けになると考えられている。
英国海峡から上がったビリー・ヴニポラ、トム・カリー、ジャック・ノーウェル
英国海峡から上がったビリー・ヴニポラ、トム・カリー、ジャック・ノーウェル
日本人を母親に持ち、日本代表ヘッドコーチを務めた経験を持つジョーンズはこのアイディアを日本から持ち帰ると、同代表のストレングス&コンディショニングコーチのジョン・クラークレッドブルと協働してイングランド代表のトレーニングメニューに取り入れた。
01

禊とラグビーイングランド代表

2022年秋の一連のテストマッチに向けて(11月12日の日本代表戦も含まれていた)、ジョーンズは英国領ジャージーにチームを集めた。その後、2チームに分かれてそれぞれ海へ入り、4枚連結されたパドルボードを操作して複数のブイを通過するというタスクに挑んだ。また彼らはマネキン人形を使った救命シミュレーションと重さ10kgのジム用ウエイトを目指すダイビングも行った。
クラークは次のように説明する。「合宿の始めに禊を行ってチームメンバーたちの意識を所属クラブから代表へ切り替えました。メンタルとフィジカルの両方にとって厳しいタスクに挑んでもらうために禊を取り入れたのです。試合中の厳しい状況でも効果が得られることを願っています」
「冷たい水とタスクの組み合わせにより、チーム全体が厳しいストレスに晒されました。ラグビーの試合におけるそのようなシチュエーションでは、選手たちはキャプテンやコーチを頼りにします。ですが、このタスクでは全員が常に自主的に関わる必要があります。全員でタスクを完了させる方法自分のロールについて考える必要がありました」
「このようなトレーニングでは選手たちの異なる一面を見ることができます。泳ぎが得意ではない選手が9人いたので、彼らにとってはかなり難しくて圧倒されるトレーニングになりました」
「このようなトレーニングが試合中の大きなストレスに晒される状況下で活かされることを願っています」
02

選手たちの反応

英国領ジャージーのビーチでトレーニングに挑んだビリー・ヴニポラ、トム・カリー、ジャック・ノーウェル
英国領ジャージーのビーチでトレーニングに挑んだビリー・ヴニポラ、トム・カリー、ジャック・ノーウェル
泳ぎが得意ではない選手たちは救命具を着用していました
ジャック・ノーウェル
選手たちに目を向けると、コーニッシュ出身のジャック・ノーウェルを含む一部の選手たちにとってこのようなタスクは日常と変わらなかった。ノーウェルは次のように説明する。
「今回のトレーニングは選手たちをコンフォートゾーンの外側へ連れ出すことが目的です。普段やらないことをやらなければなりません。僕たちはウエイトリフティングやグラウンドでのトレーニングは得意ですが、海では異なるチャレンジに直面する必要があります。協力して目標を達成するというタスクは、チームとしての自分たちについて多くを学ぶ機会になります」
「ウェットスーツは着ていませんでした。ストレングス&コンディショニングコーチが許してくれなかったのでショーツだけでした!」
ビリー・ヴニポラ、トム・カリーと休憩するジャック・ノーウェル
ビリー・ヴニポラ、トム・カリーと休憩するジャック・ノーウェル
「僕は慣れていたのでラッキーでしたが、泳ぎが得意ではない選手たちは救命具を着用していました」
普通とは違うチャレンジでした。チームとしていかにまとまれるかが問われました
トム・カリー(セール・シャークス)
泳ぎが得意ではない選手に含まれるビリー・ヴニポラでさえもトレーニングの効果を感じている。
「楽しかったですね。ノーウェルのような選手たちが海水をたらふく飲んでいた僕のような選手たちを率いていました。トム・ローバックもリーダー格でしたね。彼らのおかげで助かりました。メンタルにはとても大きな効果があったと思います」
セール・シャークスのフランカー、トム・カリーもチームの助けになったと感じている。「普通のトレーニングとは異なっていたので、普通とは違うチャレンジでした。チームとしていかにまとまれるか、どうやって一緒に仕事をしていくのかを学ぶ機会になりました」
「僕は救命具組でしたし、トレーニングについては少し懐疑的でした。ですが、グループとしてまとまれたのでとても良いチャレンジだったと思いますし、チーム内で競い合うこともできました。これもチームには当然のことです」
「また、今回のトレーニングはいくつかの障壁を越えることになったと思います。異なる環境で異なることを学ばなければならない環境では、なるべく速やかに意思統一する必要があります。今回のようなトレーニングはその大きな助けになるでしょう」
トレーニング後にタオルで身体を温める3人
トレーニング後にタオルで身体を温める3人
冷たい英国海峡から上がった今、全員が同意するのはメンタルレジリエンスの重要性だ。カリーが続ける。「僕たちの間ではラグビーについて色々と異なる意見が出るときもありますが、レジリエンスはとても重要です。どのような状況でも何回でも盛り返せる能力ですからね」
「勝利を目指しているときは特に重要です」とヴニポラが加える。「たとえば、互角の実力を持つ相手とアームレスリングで対戦するときに、自分が得られるアドバンテージはメンタルだけです。冷静になり、状況を変えられるかどうかが勝敗を分けます
「ですが、これは誰でも試みることでしょう。ですので、一歩先を行くことが大事です。相手と同じことをやらないことが重要なのです。一番重要なスキルは、周囲が取り乱しているときに冷静沈着を保つことです」
ノーウェルが同意する。「レジリエンスは試合でアドバンテージになりますし、流れを引き寄せられます。あとはこれを最大限活かすことと、対戦相手に流れを渡さないことが重要です」
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページをスクロールしてチェック!