How to stretch your comfort zone in 2018
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探検

コンフォートゾーンから抜け出す方法

今年は少し自分を成長させたいと考えているなら、自分を枠の外へ出す必要がある。英国人冒険家がその方法を教えてくれた。
Written by Matt Prior
読み終わるまで:9分Published on
  
一般的に、人間は動物と同じで危険性が最も低い道を選ぶ。そしてその道が向かう先はひとつ、コンフォートゾーンだ。多くの人はこのゾーンにいようとする。
心理学的な説明をすれば、コンフォートゾーンとは人為的に作られる心理状態で、中にいれば「安心」が得られ、外に出ると「不快さ」を感じる "メンタルエリア" のことだ。そして、個人的な意見を言えば、コンフォートゾーンの中にいながら自分を成長させることはほとんど不可能だ。
コンフォートゾーンについて様々な意見が存在していることは知っている。しかし、17年間に渡り、様々な社会的地位と年齢の人たちをコンフォートゾーンの外へ連れ出してきた私は、ほとんどの人たちが人生の大半をこのゾーンの内側で過ごしていることを学んだ。私はこれを変えたいと思っている。なぜなら、コンフォート(快適)はアンビション(大志)を奪ってしまうからだ。
グループを率いている時の私は、何かを始める前に必ず下のグラフを見せて、私が彼らに何をしようとしているのか、そしてなぜそうしようとしているのかについて説明している。
ストレッチゾーンに留まることが重要

ストレッチゾーンに留まることが重要

© Red Bull/Thomas Elliott

グラフの見方:
  • 縦軸:パフォーマンス
  • 横軸:プレッシャー
  • イエロー:コンフォートゾーン(けん怠)
  • オレンジ:ストレッチゾーン(ピークパフォーマンス)
  • レッド:パニックゾーン(疲労)
ピークパフォーマンスが引き出せるストレッチゾーンに入るのは簡単ではない。まず、チャレンジレベルが低すぎれば、コンフォートゾーンに留まるので何も起きない。逆にチャレンジレベルが高すぎれば、パニックゾーンに入ってギブアップしてしまう。非常に微妙なバランスが必要なのだ。しかし、ストレッチゾーンに留まることができれば、魔法のように素晴らしい体験ができる。

なぜコンフォートゾーンの外は快適ではないのか?

その理由の大半は恐怖だ。そして、そのような恐怖の多くは意味不明で理不尽なものだ。いつのまにか「未知」が「恐怖」に置き換えられてしまい、行動を取らなくなってしまう。恐怖は、現実とは異なる仮想現実を生み出す。そして、このような理不尽な恐怖は、過去の経験から生み出されている(Xを試してYという結果を得た経験を持つ人は、"YはXから生まれる" というイメージを持ち続ける)。
過去の経験の多くは、幼少時のものである可能性が高い。また、人生経験や知識が少なく、自信が足りなくても、成長は止まってしまう。何かにチャレンジした経験がなければ結果を予想するのは難しく、予想できないと、リスクを負って挑戦する価値はないと自分を言いくるめてしまうようになる。
恐怖と不安は、その存在を意識して、最悪のケースをイメージしてしまうとさらに大きくなってしまう。よって、コンフォートゾーンの外側で恐怖を乗り越えようとするなら、「今感じている恐怖は自分が作り出したものだ」と強く意識する必要がある。その恐怖はリアルではないと意識するのだ。
メンターは恐怖を克服する助けになるが、頼りすぎないようにする

メンターは恐怖を克服する助けになるが、頼りすぎないようにする

© Red Bull Content Pool

恐怖の受け止め方をコントロールすることが重要

しかし、恐怖をある程度リスペクトすることも必要だ。恐怖をリスペクトすれば、集中力が高まり、あらゆる感覚が研ぎ澄まされ、最終的には危険を回避する助けになる。恐怖の受け止め方が、体験をポジティブなものにするか、ネガティブなものにするかを分けることになる。
恐怖に呑み込まれてしまうと、自分らしくない行動を取るようになり、心配したり、不安になったり、汗をかいたり、泣いたり、震えたり、怒ったり、苛立ったり、混乱したりする。最悪の場合、自分を傷つけることもある。このような感情は全てリアルに感じられ、感じている間は非常に不快だ。しかし、チャレンジングな環境に身を置く回数を増やし、その環境に慣れていけば、参照できる「体験ライブラリー」の蔵書数が増えることになる。
この「体験ライブラリー」は非常に重要だ。ライブラリーの蔵書数を増やせば、その分だけ何が可能なのかを判断できるようになり、恐怖心をアドバンテージに変えることができるようになるからだ。
慣れていけば、不快な状況の中に快適さを見出せるようになる

慣れていけば、不快な状況の中に快適さを見出せるようになる

© Red Bull Content Pool

恐怖をどう受け止めるかは、学習によってコントロールできるようになる。その場に身を置き、経験を積み、対処方法を得ていくことが重要だ。自分の限界をプッシュすれば、それだけ自分について学べ、対処方法を実用できるようになっていく。対処方法は個人によって異なる。他人には機能する方法でも、自分には機能しない可能性があるので、色々と試しながら、自分に合う方法を見出すことが重要だ。
今まで挑んだことがないビッグバレルなど、恐ろしい何かを目の前にしている時、大勢の前で話す時、そして飛行機から飛び出してスカイダイビングをする時などに役立つ、恐怖への対処方法をいくつか紹介しておこう。
  • 深呼吸をする、または息を止める
  • 目を閉じて、自分が望んでいる結果を視覚化する。
  • 自分ひとりになるか、静かな空間に座って、意識を集中させる。
  • モチベーションを高める音楽を聴く、または友人から元気を分けてもらう。
  • 自分の前にやる人を良く見る。
  • 過去の「怖かったけれどやり遂げた」経験を全て思い出す。
  • 細々とした考えを全てシャットアウトして、目の前のタスクに集中する( "言うは易く行うは難し" だが)。
  • 感情に身を任せ(泣く、怒るなど)、そのあとでリセットボタンを押す。感情を爆発させることが自分を浄化してくれるケースがある。
  • メンターや信用できる人物に相談して導いてもらう(頼りすぎないように注意する必要がある)。
常にプッシュしている人たちに囲まれる

常にプッシュしている人たちに囲まれる

© Mathias Jensen

自分に最適な恐怖への対処方法を見つけた時はすぐに分かるはずだ。なぜなら、不快な状況に身を置いている自分にある程度の快適さを感じるようになるからだ。私は、ティム・フェリスの著作『Tribe of Mentors: Short Life Advice from the Best in the World』の中で引用されているクリステン・ウルマーの次の言葉が大好きだ。「恐怖を頑なに拒否すれば、恐怖はクレイジーで理不尽でねじ曲げられた姿になってしまいます。ですが、恐怖を受け容れ、自分の中に取り込めば、そのエナジーと英知が姿を現します」
人間の肉体は恐怖を感じた体験を記憶して、過去に似た状況が起きた時に警告を発したり、どう対応すべきかについてアドバイスを送ったりしてくれる。よって、この能力を利用しながら少しずつ自分をプッシュしていくことが重要だ。プッシュを続けなければ、折角コンフォートゾーンを広げることができても、そこにまた留まることになってしまう。せせらぐ川と淀んだ沼のどちらになりたいかという話だ。

小さくても良いので今日から始める

私が経営している会社の事業と私個人の活動は、短時間で最大限の結果が得られるように特別にデザインされている。しかし、コンフォートゾーンの外側に飛び出すために、世界の果てに向かってビッグアドベンチャーに挑む必要はない。自宅でも取り組むことができる。小さな目標を設置して、不快な状況を受け容れられるように無意識の改革を促すことが大事だ。
"川の流れのように" が大事

"川の流れのように" が大事

© Jeremy Bishop

では、日々の生活の中でストレッチゾーンに入るにはどうしたら良いのだろうか? また、上のグラフで示しているパニックゾーンに入ることなく、ストレッチゾーンに留まるにはどうしたら良いのだろうか? いくつか例を挙げよう。
  • これまで絶対に「ノー」と返事をしていたことに「イエス」と返事する。少しでも興味がある時、どちらか決めかねている時、本心は「イエス」と言っている時は、特にそうすべきだ。
  • いつもよりも予定を決めずに過ごし、その中で起きる「違い」に慣れ、それを楽しむようにする。
  • 快適な温度のシャワーを浴びている時に冷水に切り替えてみる。これも選択のひとつだ(ただし、温暖な国ではそこまで効果はない)。
  • 学校や職場までのルートを変えてみる。環境を変えることで好奇心を維持する。
  • 不確実性と未知を受け容れる。
  • 常に自分たちをプッシュして成長している人たちと一緒に行動し、彼らから学ぶ。観察するだけで自分に変化を起こせることもある。
  • 流れに身を任せる。先ほども書いたように、せせらぐ川をイメージしよう。川の流れは止まらない。川には岩などの障害物や分岐点が数多くあり、渦巻いているセクションさえあるが、全てが向かうべきところへ流れていく。
限界をプッシュすれば、人生がさらに面白くなる

限界をプッシュすれば、人生がさらに面白くなる

© Austin Neill

チャレンジを重ねていくほど、気に病むことが減っていく。チャレンジを重ねれば、恐怖へのリスペクトを維持しつつ、積み上げた経験と「体験ライブラリー」の蔵書を参照できるようになるので、ほとんど全ての状況を快適に感じられるようになる。そして、アドベンチャーはスケールの大小を問わず、短期間で数人分の経験と人生の教訓を一気に得ることができる素晴らしい方法だ。だからこそ、私はアドベンチャーに夢中なのだ。
私が執筆した他の記事を読んだことがある人なら、私が適当に書いているわけではないことを知っているはずだ。クリシェに聞こえるかもしれないが、今回の記事もウソではない。自分の限界を押し広げていけば、人生はもっと面白くなる。コンフォートゾーンの外へ出てみれば、自分の邪魔をするものはほとんど存在しないことが理解でき、毎日成長をしたいと思うようになるはずだ。それはある意味中毒状態と言えるが、嬉しいことに、至って "健康的な" 中毒状態だ。
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冒険家マット・プリオールは、パイロットや写真家、そして世界記録保持者としての顔も持つ。マットは英国空軍で6年間に渡るジェット機操縦経験を持ち、さらには英国陸軍海外訓練リーダーとして世界中での様々な遠征訓練活動を指揮してきた。
マットは経験豊かな救援隊員やパラモーター・パイロットで構成されるクラブ組織Explorers Clubの会員としても活動している。マットはこれまで100カ国以上でサポートなしの遠征を行い、5大陸の様々な有名峰に登頂してきた。彼と共に比類のない1週間のアドベンチャーを体験してみたい方は、彼が主宰する Adventure Academyに参加してみよう。詳細は www.mpadventureacademy.comをチェック。