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EVO 2017:プレイヤー投票を振り返る

EVO 2017のメインステージ最後の枠を『UMVC3』が獲得した理由は?
Written by Barrett Womack
読み終わるまで:11分Published on
惜しくも2位に終わった『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』

惜しくも2位に終わった『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』

© Namco Bandai/TPCi

先日、EVO 2017の使用タイトルが発表されたEVO 2017 Announcement Showが開催されたが、その中で、Mr. Wizard、Markman、Mike Rossから重大な発表があった。EVO Charity Driveが復活したのだ。2013年以来開催されていなかったEVO Charity Driveは、各格闘ゲームコミュニティに世界最大の格闘ゲームトーナメントのメインステージに上がるチャンスを与えるプレイヤー投票企画だ。

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この企画のルールはシンプルだ。2013年は、Breast Cancer Research Foundation(乳がん研究振興財団)に最高額を寄付したゲームコミュニティが、メインステージタイトルの権利を得られるというもので、『スマブラDX』と『スカルガールズ』のコミュニティが最後まで接戦を繰り広げたが、最後には『スマブラDX』が94,683ドル(約1,070万円)、『スカルガールズ』が78,760ドル(約890万円)を集め、『スマブラDX』がメインステージを勝ち取った。
2017年のEVO Charity Drive(今年はMake-A-Wish Foundationへの寄付となる。この団体の詳細は メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパンを参照)もフォーマットは同じで、最高額を寄付したコミュニティがEVO 2017の公式タイトルの座を勝ち取るという仕組みになっていた。しかし、フォーマットにはほとんど変化がなかったが、レース展開は、2タイトルが発表と同時にスタートダッシュしたものの、その他のタイトルの動きが緩慢という、前回とはかなり異なるものになった。
メインステージを逃した『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』

メインステージを逃した『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』

© Namco Bandai/TPCi

『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』

格闘ゲームコミュニティを知っている人ならば驚くことではないが、EVO Charity Driveの発表後、真っ先に動いたのが『Ultimate Marvel vs. Capcom 3』のコミュニティだった。彼らは発表後1時間以内にMake-A-Wish Foundationに高額の寄付を行うと、その後も順調に寄付額を伸ばし、最終的にメインタイトルの座を勝ち取った。
『UMVC3』コミュニティの結束力は素晴らしいものがある。Capcomからの公式サポートが終了し、一時的にはゲームの購入さえも不可能になったものの、彼らはグラスルーツの活動を続けて、コミュニティを保ち続けてきた。彼らの情熱と愛を踏まえれば、このような企画で彼らが首位に立ったのは当然の話だ。むしろ、そうならないことを想像するのが難しい。
しかし、予想外の形で『UMVC3』コミュニティを追撃したコミュニティがいた:『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』だ。
驚く人がいても当然だった。『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』は売上本数こそまずまずだが、格闘ゲームコミュニティの中では目立った存在ではなかったからだ。格闘ゲームコミュニティには複数のタイトルをプレイするプレイヤーが存在するが、格闘ゲームの数が揃っていないプラットフォームでリリースされ、しかも、リリース1年後にThe Pokémon Company Internationalからの公式サポートが打ち切られたこともあり、多くの人たちは『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』を終わった存在と見なしていた。
しかし、そのような考えは間違っていた。『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』のコミュニティはそこまで目立つ存在ではないが、まだまだ健在なのだ。Wii Uの仲間である『スプラトゥーン』のコミュニティと同じで、彼らはDiscordを使って活動を続けている。『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』のコンテンツクリエイター / YouTuberのPKSparxxxもコミュニティのおとなしさについて次のように説明している。「『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』はライブストリーミングをするプレイヤーの数が少ないから目立たない。でも、今は毎週・毎月のペースで、東海岸と西海岸でライブストリーミングイベントが配信されているんだ」
家庭用ゲーム機版には新キャラクターが追加されていない

家庭用ゲーム機版には新キャラクターが追加されていない

© Namco Bandai/TPCi

情熱的な『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』プレイヤー / コンテンツクリエイターで、『A Very Brief Spectator’s Guide to Pokken Tournament』の筆者でもあるBurnsideは、このゲームのEVO進出に多大な労力を割いてきた人物だが、彼は、なぜ『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』が終わった存在と思われてきたのかについて次のように説明している。「The Pokémon Company Internationalがサポートを打ち切ったあと、世間はこのコミュニティが終わったと思ったんだ。自分が知りたい情報を拾うのは簡単だけど、特に知りたいと思っていない情報はついつい見逃してしまうよね。だから気付かなかったのさ」
しかし、『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』のコミュニティは、今回のEVO Charity Driveで大きな動きを見せた。プレイヤーやファンがパロディ小説の執筆やレアなマーチャンダイズの制作など、多方面に活動を展開し、その売上をEVO Charity Driveの寄付金に充てた。
『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』コミュニティはスポットライトを勝ち取るべくハードに活動したが、彼らはもっと大きなもの、公式サポートに目を向けていた。このゲームは、日本のアーケード版には4匹のポケモンが追加されているが、欧米では追加されていない。また、『ポケットモンスター』シリーズとトレーディングカードゲームは株式会社ポケモンの強力なバックアップを受けながら巨大なトーナメントシーンを誇っているが、『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』はリリースから1年が経ったあとは、隅に追いやられてしまっている。
『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』コミュニティの伝えたいメッセージは、「僕たちの存在を知って欲しい」という非常にシンプルなものだった。Burnsideは次のようにコメントしている。「EVOのメインステージに採用されれば、バンダイナムコ、任天堂、The Pokémon Company Internationalへのメッセージになる。 “僕たちは終わっていないし、サポートを受けるにふさわしい存在だ” ってね」
「EVOのメインタイトルを逃しても、このコミュニティがなくなることはない。でも、メインタイトルになれれば、知名度が低いタイトルを僕たちが諦めていないこと、そして世間も諦めるべきじゃないことを示すことができるチャンスを得られる。そう考えたのさ」
独自路線を行く『Mortal Kombat X』

独自路線を行く『Mortal Kombat X』

© NetherRealm Studios

『Mortal Kombat X』

しかし、EVO Charity Driveを、自分たちの生死を賭けた重要な企画だと捉えていないコミュニティも存在していた。そのひとつが、『Mortal Kombat X』だ。このNetherRealm Studiosのフラッグシップタイトルは、同社が手がける『Injustice 2』の登場と共に消える可能性が高く、EVO 2017はこのゲームのトップレベルの対戦が確認できるラストチャンスになる可能性が高かった。しかし、『Injustice 2』のメインステージでの採用がすでに決定していたため、NetherRealm Studiosファンはメインステージに2タイトルも必要ないのではないかと考えた。『Mortal Kombat X』のコメンテーターKetchup、そしてMustardとして活躍しているRyan NealとJake Nealの兄弟は、次のように説明する。
KetchupことRyan Nealは「『Mortal Kombat』シリーズのカジュアルプレイヤーとプロプレイヤーは、『Mortal Kombat X』をEVO 2017で見たいと思っているよ。でも、『Injustice 2』のメインステージでの採用が確定しているから、今はこっちに注目している。個人的にも、新作が注目されるべきだと思っているんだ」とコメントしている。彼らにとって、『Mortal Kombat X』はメインステージを飾る必要はなかった。何かしらの形でEVO 2017に存在できればそれで良いのだ。「EVO 2014の『Mortal Kombat 9』と一緒で、『Mortal Kombat X』に関しては、コミュニティが独自にオーガナイズするサイドイベントをやろうかって考えているのさ」
MustardことJake Nealは、『Mortal Kombat X』をメインステージで見たいとしているが、格闘ゲームコミュニティ全体として優先すべきことがあると考えている。「僕たちは2年間近くを捧げてきた『Mortal Kombat X』が大好きだし、実際、トーナメントシーンも最高の盛り上がりを見せている。でも、NetherRealm Studiosファンとしては『Injustice 2』のメインステージ採用で満足しているんだ。このゲームがNetherRealm Studiosを代表してくれるわけだからね。それに、メインステージにまだ採用されたことがないタイトルが選ばれるのはとっても全体にとって良いことだと思う」

その他と結果

こう感じていたのはKetchupとMustardだけではなかった。結果を見れば、『Mortal Kombat X』及びNetherRealm Studiosのコミュニティ全体がどう感じているのかが簡単に理解できる。最終的に『Mortal Kombat X』から寄付したのはわずか8人、総額は137ドル(約15,500円)に留まったのだ。尚、寄付金が集まらなかったゲームはこれだけではない。『Nidhogg』の寄付金は158ドル(約17,800円)で、『ARMS』、『フライングパワーディスク』、『ストリートファイターII X』も大して集まらなかった(結果はそれぞれ5位・4位・7位)。2013年に最後まで接戦を演じた『スカルガールズ』でさえも、今年はほとんど動きがなかった(6位)。尚、これはデベロッパーLab ZeroがEVO Charity Driveを批判していること、そしてこのゲームのコミュニティの方向性の違いも原因だろう。
結局、EVO 2017のメインステージ最後の枠は、『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』と『UMVC3』の2タイトルの間で争われた。当初、この2タイトルに食い込む可能性があったのは『Killer Instinct』だけと見られていた。というのも、このゲームのコミュニティの顔役を務めるXboxVikingが、投票締め切り直前に10,000ドル(約113万円)を寄付して、格闘ゲームコミュニティを驚かせる予定があることをほのめかしていたからだ。しかし、いざ蓋を開けてみれば、3位ではあったものの、寄付金は6,116ドル(約69万円)に終わった。
このように各コミュニティの動きは様々だが、その理由は同じで、『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』も『Mortal Kombat X』も、自分たちにとってベストな選択をしたに過ぎない。NetherRealm Studiosファンはメインステージに2タイトルが採用されることを望まず、『Mortal Kombat X』に関しては独自のサイドトーナメントを開催すれば良いと考えた。そして、『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』のコミュニティは、シーンが格闘ゲームコミュニティ、そしてデベロッパー側から注目されるきっかけになると考えた。その他のゲームに関しても、それぞれの理由があったはずだ。
今年のEVO Charity Driveの結果が何かを示しているのであれば、それは格闘ゲームの各コミュニティはそれぞれ独自の歩みを続けていくということだろう。リーグやツアーを組んでeSportsタイトルを目指すコミュニティもいれば、『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』のように、サポートを得るチャンスだと考えるコミュニティもいる。そして、『スカルガールズ』や『Mortal Kombat X』のように自分たちで独自の活動を展開し、世間の評価は気にしないコミュニティも存在する。各コミュニティが足並みを揃える必要はない。むしろ、個性があった方が良いだろう。バラエティは人生をスパイスアップするものであり、格闘ゲームコミュニティの屋台骨なのだ。