レギュレーションの全面的見直しにより、F1 2026シーズンはこれまでの戦力図を一気に書き換える1年になるだろう。マシンのホイールベースと全幅が狭められ、新エンジンが搭載される一方、DRSは新たなアクティブエアロシステムへと置き換わる。 また、新サーキットが登場し、グリッドに並ぶマシンは2台増加する — そのうち1台をドライブするのは、かつての仲間、“メキシコの防衛大臣” だ。
今回は、F1 2026シーズンで注目すべき14のポイントを深く掘り下げていこう。
01
“現役最強ドライバー” マックス・フェルスタッペン
それまでとは大いに異なる展開となった2025シーズンのマックス・フェルスタッペンは、持ち前のレジリエンスと優れた力量を発揮した。2022シーズン以降、マックスは最速マシンに乗ってトップに立ち続けていたが、2024シーズン後半にマクラーレンがさらに上回る速さのマシンを生み出したことで、状況が一変した。 大勢のファンからの応援を背に、マックスはクレバーな戦略と卓越したドライビングスキルを駆使して見事なポールラップや巧みなオーバーテイクを披露し、2025シーズン最多勝ドライバーとなった。鈴鹿での優勝は、彼のキャリアの中でもベストレースのひとつに数えられる。
2025シーズン後半に歴史的な挽回を見せたマックス・フェルスタッペン
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プレシーズンテストが始まるまでは、2026シーズンのマックスが追われる側と追う側のどちらになるのかを予想することはほぼ不可能だ。2025シーズンのマックスは、8月末の地元オランダGPまで本調子ではなかったが、そこから最終戦アブダビGPまで表彰台フィニッシュを逃すことは一度もなかった。
しかし、2026シーズンがどのような展開になろうとも、マックスが最後までプッシュし続けることは確実だ。
02
マックスの新チームメイトはアイザック・ハジャー
才能溢れるアイザック・ハジャーが、2026シーズンのマックスのチームメイトを務めることになった。この若きフランス人ドライバーは、デビューシーズンを過ごしたレーシングブルズで大きく成長し、開幕戦オーストラリアGPは悔しい結果に終わったが、オランダGPでは殊勲の3位表彰台を獲得してみせた。 レッドブル・レーシングへの昇格を果たすアイザック・ハジャー
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オラクル・レッドブル・レーシングへの昇格決定を受け、ハジャーは次のようにコメントした。
「F1のトップレベルでレースを戦う機会と信頼を与えてくれたオラクル・レッドブル・レーシングに大いに感謝しています」
「ビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズと共に過ごした2025シーズンは非常に素晴らしい1年になり、僕は多くを学び、初表彰台を獲得しました。レーシングドライバーとしても、人間としても大きく成長できたと感じています」
「オラクル・レッドブル・レーシングに加わる準備は整っていると思いますし、彼らも同じように感じていることを嬉しく誇りに思います。素晴らしいステップアップです。最高のチームと一緒に仕事をして、マックスから学ぶのが待ちきれません」
素晴らしいステップアップです。最高のチームと一緒に仕事をして、マックスから学ぶのが待ちきれません
21歳のハジャーは角田裕毅の後任となるが、2025シーズン序盤にリアム・ローソンに代わってRB21のコックピットに収まった角田は、2026シーズンのレッドブル・レーシングのテスト&リザーブドライバーを務める。 角田、ローソン、セルジオ・ペレス、アレックス・アルボン、ピエール・ガスリー、ダニエル・リカルド、カルロス・サインツに続き、ハジャーはマックスにとって8人目のF1チームメイトとなる。
ペレスを除いたこれらのドライバー全員と同じく、ハジャーもレッドブル・ジュニアチームを経てオラクル・レッドブル・レーシングのシートに辿り着いた。そして、レッドブル・ジュニアチームといえば、次のビッグニュースに触れないわけにはいかない。
03
ヘルムート・マルコがレッドブルのモータースポーツアドバイザーから退任
マルコ博士は、レッドブル・レーシング及びレーシングブルズ両チーム、レッドブル・ジュニアチームの全ドライバー、さらにはレッドブル・リンクを含め、数多の実績に彩られたレッドブルのフォーミュラ・プログラムのほぼすべての側面を主導してきた。
2009シーズン 日本GPでセバスチャン・ベッテルと共に勝利を祝うヘルムート・マルコ
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レッドブル・リンクでBRM 157のコックピットに乗り込むヘルムート・マルコ
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ゲルハルト・ベルガーもかつてヘルムート・マルコに見出された才能の1人
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ヘルムート・マルコはマックス・フェルスタッペンを4度のワールドチャンピオンに導いた
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耐久レースで成功を収めたマルコ博士は、1971年ル・マン24時間で総合優勝を飾り、かの有名なタルガ・フローリオ(率直なマルコ博士に言わせると “完全に狂っている” レース)ではラップレコードを樹立した。 しかし、1972シーズン フランスGPで目を負傷し、マルコ博士のドライビングキャリアは早すぎる終焉を余儀なくされた。ドライバーマネージャー業に転身したマルコ博士はゲルハルト・ベルガーのキャリアをサポートすると共に、F3でチームマネージャーを務めた。
1999年、マルコ博士が所有していたRSMマルコはレッドブル・ジュニアチームに改められ、世界最高のドライバー育成プログラムへと成長すると、ワールドチャンピオンとなったセバスチャン・ベッテルやマックス・フェルスタッペンをはじめとするドライバーたちを極めて競争の激しいフィーダーシリーズを通じてF1へと送り込んだ。 退任にあたり、マルコ博士は次のようにコメントした。
「私はモータースポーツに60年関わってきましたが、レッドブルでの過去20数年はとてつもなく大きな成功を収めることができた旅路となりました。才能溢れる多くの方々と形作り、共有してきた時間は素晴らしいものでした。私たちが共に作り上げ、成し遂げてきたすべてが、私を誇りで満たしてくれます」
ありがとう、ヘルムート。僕たちが一緒に夢見てきたことを、僕たちはすべて成し遂げた。あなたが僕を信じてくれたことに、僕は永遠に感謝する
2025シーズンは大勢のルーキーがF1デビューを飾ったが、2026シーズンのルーキーはひとりだけだ。それが、F2を卒業してレーシングブルズからデビューするアービッド・リンドブラッドだ。 将来有望なアービッド・リンドブラッドはレーシング・ブルズからF1デビューを果たす
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英国出身・18歳のリンドブラッドは、ジュニアフォーミュラを急速に駆け上がってきた将来有望な若手ドライバーで、F3とF2の両カテゴリーで史上最年少ウィナーとなった。
レッドブル・ジュニアチームに所属するリンドブラッドは、2025シーズン初頭にフォーミュラ・リージョナル・オセアニア選手権でチャンピオンとなりFIAスーパーライセンスとF1出走資格を取得したあと、F1テストに参加して1年を締め括った。リンドブラッドは、リアム・ローソンのチームメイトを務めることになる。
2026シーズンのルーキーはリンドブラッドだけだが、セルジオ・ペレスがバルテリ・ボッタスと新チームからF1に復帰するため、グリッドが2枠増加する。キャデラックは11番目のF1チームで、同じ米国国籍のハース以来10年ぶりの新規参戦チームとなる。
リアム・ローソンは2026シーズンも引き続きレーシング・ブルズに残留する
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ハース同様、キャデラックはフェラーリ製エンジンを搭載するが、2029シーズンからは自社開発パワーユニットを生産開始する見込みだ。ピットレーンをさらに進んで見ていくと、ザウバーがアウディへ改称された。このドイツ・バイエルン州に本社を置くメーカーは、F1の上位チームの仲間入りを目指している。
06
F1 2026シーズン 参戦チーム&ドライバー
新規参戦のキャデラックからF1復帰を果たすセルジオ・ペレス
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新たに導入されるF1レギュレーションには、接近戦の増加と新テクノロジーの開発によるF1と世間の距離感の維持という2つの大きな狙いがある。
新レギュレーションの特徴のひとつは、グラウンドエフェクトなどのエアロダイナミクス廃止で、これはマシン後方のダーティエア(乱気流)を減らしてオーバーテイクをしやすくすることが目的だ。
また、マシンはこれまでより若干小型化されて30kg軽くなる。重量が削減され、ダウンフォースが30%減・ドラッグ(空気抵抗)が55%減となることで、マシンはより扱いやすくなる。
2026シーズンは近年稀に見る大規模な戦力図の変化が起こるはずだ
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ライバルへ接近してオーバーテイクをしやすくするために、2026シーズンのF1マシンには接近戦を促すための可動フロント / リアウイングが備えられる。《Zモード》では、マシンが高速でコーナーを旋回できるようにフロント / リアウイングが位置調整される。
マシンがストレート区間に入ると、ドライバーはさらにクールな名称の《Xモード》をアクティベートできるようになる。このモードではフラップ位置が低ドラッグ設定に変わり、トップスピードがさらに伸びる。
09
内燃エンジンと電気モーターの出力比率が50:50に変更
接近戦の増加は新レギュレーションの大きな狙いのひとつ
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今回のレギュレーション変更の後半部分は、純粋なエンジンパワーへのシフトを目指している。現行の1.6リッターV6ターボ・ハイブリッド内燃エンジンは既に世界で最も高効率なパワーユニットだが、従来の3倍となる120kWから350kWに増加した発電を可能にする新たなバッテリーコンポーネントの追加によりさらに向上する。
マシンはブレーキング時に従来の2倍のエネルギーを回生し、使用される燃料は100%サステナブルとなる。ドラッグの低減も多くの燃料節約に繋がる見込みだ。新エンジンはクリーンかつグリーンな上に、オーバーテイクやディフェンス時にドライバーをアシストする120馬力のブーストも提供できる。
これまでのレッドブル・レーシングはシャシー設計で優位性を示してきたが、パワーユニットは社外エンジンマニュファクチャラーからの供給に頼ってきた。
この状況が変化したのが2021年で、レッドブルはレッドブル・パワートレインズを設立して自らの命運を握ることを決定し、ホンダの既存設計をベースにしたパワーユニット製造に乗り出した。RBPTH001〜003 シリーズはレッドブル・レーシング及びレーシングブルズによって2025シーズンまで使用された。
ミルトン・キーンズのレッドブル・パワートレインズ施設
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しかし、2023年以降、レッドブル・パワートレインズはフォードと協業し、レッドブル・レーシングとレーシングブルズをトップグループに押し上げるための次世代パワーユニットを開発している。2026シーズンのレッドブル・レーシング&レーシング・ブルズは、シャシーコンストラクターから出発して内製パワーユニット開発をも手掛けるようになった史上初のF1チームとなる。 レッドブル・フォード・パワートレインズ製パワーユニットの産声は、1月15日の米国デトロイトでのニューマシンRB22&VCARB 03 公開時に耳にできるはずだ。
スペインGPの開催サーキットがF1専用に建設されたマドリンクに移ることで、F1カレンダーに新展開が起こる。高速セクション、テクニカルなコーナー、そして広大なファンゾーンを擁する特設エリアと市街地一般道を組み合わせてF1屈指のファンフレンドリーでアクセスしやすいイベントを目指しているユニークなサーキットと共に、F1が45年ぶりにマドリードへ戻ってくる。
開催契約の長期延長に合意したオーストリアGPは少なくとも2041年までF1カレンダーに残り、カナダGPも少なくとも2035年まで開催が継続される見込みだ。しかし、ザントフォールトで開催されるオランダGPは2026年が最後になる。 レッドブル・リンクは少なくとも2041年までF1カレンダーに残ることが決定している
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マシン側に多くの変更が加えられることから、F1 2026シーズンの開催スケジュールの大半は現状維持となる。バルセロナとバーレーンでのプレシーズンテストを経て、シーズン開幕戦は例年通りオーストラリアGPが担い、夕刻から夜にかけて行われるアブダビGPが華々しいフィナーレの舞台を提供する。
カナダGPはマイアミGPの次戦に組み込まれ、そのあとは6月のモナコを皮切りに9月のスペインまで夏のヨーロッパを転戦する。そこから再びアジアに戻ってアゼルバイジャンGPとシンガポールGPが行われたあと、北中米・南米での3連戦を経てカタールとアブダビでシーズンを締め括る。
2026シーズンは全6戦のスプリントウィークエンドが設定されており、序盤は上海とマイアミでスプリントが開催される。シルバーストンは、2021シーズンの史上初のスプリント以来久々のカレンダー復帰となる。また、モントリオール、ザントフォールト、シンガポールはスプリント初開催となる。
シーズン最終戦の舞台としてお馴染みのアブダビGP
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