Promotional image of a mask from Fallout 76
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ゲーム

『Fallout』シリーズの忘れられた歴史

『Fallout 76』で初めて『Fallout』シリーズを知った人のために、シリーズの背景を簡単にまとめてみた。壮大な世界観を理解してウエストバージニア州の探索をさらに楽しもう!
Written by Rich Wordsworth
読み終わるまで:12分公開日:
再生の日がやってきました! 希望に満ちた目をして美しく輝く服を身にまとったVault 76の居住者たちにこの日を捧げましょう。
ですが、気が付いている人もいるかもしれませんが、25年間の地下生活の間に、世の中は少し間違った方向に進んでしまいました。
ウエストバージニア州の “あの道” (編注:名曲 “カントリー・ロード” の歌詞に出てくる "あの道" はウエストバージニア州を指す)や、ブルーリッジ山脈、シェナンドー川は残っていますが、怒り狂ったナマケモノや、出会っても嬉しくない緑色の巨人、不気味なゾンビがいたるところをうろついています。“故郷” に戻れたのはハッピー&ラッキーなのですが、彼らに餌を与えてはいけません。
このような生物たちを見ると、いくつかの疑問が湧き上がるはずです。これらはどこから来たのだろう? 牛の頭がひとつじゃないのはなぜなのだろう? なぜ郵便局員が襲ってくるのだろう?
このような疑問の正しい回答を得るためには、時間を遡る必要があります。Bethesdaではなく、Interplayが開発した記念すべきシリーズ第1作『Fallout』がリリースされた1997年と、第2作『Fallout 2』がリリースされた1998年まで戻らなければなりません。
今回の記事が、この2作をプレイした経験がない人にプレイするきっかけを与えれば嬉しい限りです。また、プレイした経験がある人は、老眼鏡をかけてもう少し画面に近づき、懐かしい日々を回想してもらえればと思います。

どうしてどいつもこいつも自分を襲ってくるの?

プレイに直接関係ある疑問から答えていきましょう。まず、当然ながら、大戦争後の世界は放射線で汚染されています。そして、世の中のあらゆる架空の科学者たちが言っているように、生物に放射線を当てると、より大きくてクールな生物に変異するのです。
ですが、人間は例外です。人間が放射線に当たると、死ぬかゾンビになるかの二択となります。これは「分子生物学 / B級映画学」の基本中の基本です。
「分子生物学 / B級映画学」の “基本中の基本その2” はもう少し複雑ですが、モンスター映画のコンセプトの “穴” を埋めてくれる便利なものです。それは、全てが強制進化ウイルス「Forced Evolutionary Virus / F.E.V.」によって引き起こされたという設定です。
核兵器が使用される前の米軍は、最大のライバル国の先を行くために、あらゆるクレイジーなアイディアに資金を投入していました。その中のひとつが、兵士をスーパーソルジャーに進化させる、軍事防衛請負業者West-Tekが開発したウイルスF.E.V.でした(このバックストーリーは長大なのですが、便宜上簡単にまとめました)。
そして不運なことに、核兵器が大都市を砂の城に変え始めると、West-Tekの研究所も核兵器の直撃を受けてしまいます。その跡地が、生存者たちが「輝きの海」と呼んでいる巨大な放射線汚染地域なのです。
『Fallout』シリーズのモンスターのような姿をした生物が生まれたのは、「研究施設内のF.E.V.貯蔵タンクが核攻撃によって破壊されたことで、ウイルスが霧のようにウェイストランド中に散布され、全てを変異させてしまったとから」という説が有力です。
理由が何であれ、ひとつだけ真実があります。それはナマケモノも倒さなければならない世界になってしまったということです。

どうしてあらゆる動物が凶悪なの? 気が滅入るんだけど。

それは間違いです! 全ての動物が凶悪なわけではありません。実は、変異の本当の原因が何であるのかはさておき、数種類の動物はさらに賢くなっています。"話せるほど" 賢くなっているのです。
『Fallout 2』では、遺伝子操作されたデスクローのグループが、廃棄されているVault内にショップを開いて、近隣の住民たちと良好な関係を築いていました。彼らの仲間を自分たちの仲間として迎え入れることもできました。
また、大戦争後の科学者たちが、自分たちの研究のために非常に知能の高い動物を生み出すことにしました。『Fallout 2』には、エンクレイブの非道な科学者たちによって複数の言語を話すように改造された犬型サイボーグのK-9と、同じくエンクレイブの非道な科学者たちによって開発されたRobodogが登場します。
また、『Fallout 2』のどこかには、チェスを嗜み、メガネをかけ、ハサミでコミュニケーションを取るラッドスコルピオンもいます。プレイヤーがチェスで彼らに勝利すると襲われますが、凶悪という言葉がこの行動に相応しいのかどうかは分かりません。
また、何らかの理由でウイルスと大気中の放射線に免疫を持っていると思われる不思議な犬も存在し、彼らは人間にペットとしてかわいがられています。『Fallout』のプレイヤーキャラクターにはドッグミートと呼ばれるペット犬が登場しましたが、残念ながら、軍事基地に侵入するミッションの途中で命を落としてしまいました。

…ちょっと待った。ドッグミートって『Fallout 3』と『Fallout 4』にもいなかった?

それぞれ異なるドッグミートです。 “Vault Dweller”は回想録の中で、ドッグミートはマリポサ軍事基地のフォースフィールドによって犬の天国へ召されたと記していました。その後、初代ドッグミートは『Fallout 2』でイースターエッグ的に登場しましたが、初代の出番はここで終わりで、『Fallout 3』と『Fallout 4』のドッグミートは全くの別 "犬" … のはずです。ですが、ひょっとすると130年生き続けた初代なのかもしれません。

あの緑の巨人は何者なの? 彼らもF.E.V.に関係しているの?

大正解です! イグアナの串焼きをどうぞ。
さて、Bethesdaが開発した『Fallout』シリーズだけをプレイしてきた人なら、Vault 87から出てきて、キャピタル・ウェイストランド周辺をうろついていたスーパーミュータントのことを覚えているでしょう。
Vaultの実験プロジェクトの一環として(ほとんど全てのVaultがこのような悪意に満ちた秘密を抱えていますが、プレイヤーがいたコントロールVaultに秘密は存在しません)、Vault 87の住民全員が内部に閉じ込められてF.E.V.を投与されたのです
F.E.V.を投与された住民の一部が、巨大な怒れるミュータントや、東海岸のスーパーミュータントへと変異したのです。有り難いことに、そのほとんどが死んだのですが、核攻撃を生き残った一部のスーパーミュータントがVaultから外に出て、仲間を増やすために哀れな一般人たちにF.E.V.を投与するようになりました。そして、F.E.V.が不足し始めると、彼らはF.E.V.を求めて、Vaultからさらに行動範囲を広げるようになりました。
今もまだ、彼らはF.E.V.を求めてさすらっているのです。彼らがウエストバージニアをうろついているのはこれが理由です
少なくとも、これが、ワシントンD.C.が舞台だった『Fallout 3』にスーパーミュータントが登場していた理由としてBethesdaが用意したものです。オリジナルの『Fallout』(カリフォルニアが舞台)に登場するスーパーミュータントは設定がかなり異なります
簡単に説明しますと、こちらの設定では、リチャード・グレイという医師が大きく関わってきます。大戦争後の軍事基地を探索していたグレイは、F.E.V.タンクに落ちてしまい、1ヶ月もの間そのタンクから抜け出ることができませんでした。
グレイは最終的にはその外に出るのですが、すでに知能が大幅に進化した緑色の不気味なミュータントに変異していたのです…。
外に出た彼は、その異常に進化した知能を活かして大戦争をくまなく調べ上げたあと、人類を救うためには人類を強制的に進化させるしかないという結論に辿り着きます。そのために使用されたのが、F.E.V.なのです。
グレイは、大戦争前の米軍が喉から手が出るほど欲しがっていた超強力・超高知能なミュータントを生み出そうとしますが、残念ながら、放射線汚染されている人間を使った実験の大半が、低知能の凶暴なミュータント(スーパーミュータント)を生み出すだけに終わってしまいました。グレイに必要だったのは、放射線汚染されていない純粋な人間だったのです。
オリジナルの『Fallout』でプレイヤーと、プレイヤーのVaultにグレイが興味を持っていたのはこれが理由です。
人類の未来の姿…

人類の未来の姿…

© Interplay

家の中にいるゾンビについて説明してもらえる?

正確に言えば、ゾンビではありません。彼らは『Fallout 76』でデビューしたスコーチ、またはグールです。
スコーチなら、残念ながら倒さなければなりません。ですが、グールは… と言いたいところですが、おそらくこちらも倒さなければならなくなるでしょう。ひょっとすると、荷物にサインしてくれる日を25年間待ち続けていただけのただの哀れな郵便配達員かもしれませんが。
グールがゾンビのような「大量発生する敵」として登場するようになったのは、Bethesdaが “フェラル・グール” を用意した『Fallout 3』からです。『Fallout』と『Fallout 2』での彼らは危険な存在ではありませんでしたが、人間が自分たちの縄張りに入ることを非常に警戒していました。これには非常に悲しい理由があります。
西海岸のグールはプレイヤーのようにVault運に恵まれていませんでした。Vault 12の扉は閉まらないように設計されていたため、住民たちは生き延びることはできたものの、放射線を大量に浴びてしまいました。彼らは髪の毛が抜け、皮膚もただれました。ですが、正気は失っていませんでした。言ってしまえば、彼らをグールと呼ぶのは失礼なのです。彼らはれっきとした人間なのです
しかし、そのルックスが原因で、彼らは他の人間たちから忌み嫌われてしまいます。『Fallout』と『Fallout 2』では、プレイヤーの行動次第でグールを完全消滅させることができます。コントロールVaultは、そのような高慢な権利を与えられているのです。
『Fallout 2』に登場する墜落したベルチバード

『Fallout 2』に登場する墜落したベルチバード

© Interplay

大戦争が起きた原因は?

手短に説明しましょう。原因をひとつに絞り込むことはできませんが、有力な説があります。それは、サンフランシスコのB.O.S.(Brotherhood of Steel)の拠点内で見つけることができるスーパーコンピューターACE(『Fallout 2』)が語る説です。
ゲームの最終盤に登場し、しかも見過ごしやすいの説なのですが、これを知れば、『Fallout 76』のクエストに登場する様々なロボットやコンピューターについて少し違った考えを持つようになるかもしれません。
ACEは、本体も認めている通り、真の人工知能ではありませんが、大戦争勃発前に、そのような真の人工知能が軍事用として開発されたことを知っています。しかし、その人工知能プロジェクトが中止になってしまったのです。その理由は、その人工知能が発狂したからです。
肉体を持たない彼らは、電気回路を越えた外界を体験することができず、彼らから見ればくだらないとしか言いようがない人間としか一緒に暮らすことができませんでした。つまり、私たちに置き換えていれば、小屋の中でハムスターと一緒に永遠に暮らすようなものでした。
真の人工知能ではないACEもゲーム内で「ワタシハ… アナタタチノイウ “コドク” ガ スコシワカルヨウナ キガシマス… ヒジョウニ フユカイナキブンニ ナリマス」と語っています。
このあとに続くACEの話を簡単にまとめますが、結局、そのような孤独を突きつけられた人工知能のいくつかが極端に退屈してしまい、退屈しのぎのために外界に面白い状況を作り出そうと考えるようになったのです。そしてこの退屈しのぎが、人類をほぼ全滅させた大戦争勃発に繋がったのです。
違う説も存在します。
まず、『Fallout 2』の大統領の「敵国が先制攻撃を仕掛けてきた」という発言を元にした「敵国の先制攻撃と米国の報復行為が大戦争勃発に繋がった説」があります。また、『Fallout 3』のDLC『Mothership Zeta』には、Bethesdaによる「エイリアンの仕業説」もあります。ですが、これは多くのファンが無視している説です。
ここまでをまとめると、大戦争勃発の原因は2つに絞ることができます。ひとつは、人間の都合に合わせる生活に飽きてしまった人工知能が退屈しのぎに始めたから、そしてもうひとつは、国際競争に負けたくないがために敵国がやけになって先制攻撃を仕掛けたからです。どちらが本当なのかは分かりません。
ですが、どちらがより『Fallout』的かと言えば、人工知能が人間に飽きてしまったという前者でしょう。“ハムスター” との日々に疲れて発狂してしまったのです。
それでは、ウエストバージニアの旅を引き続きお楽しみください。出発前に背後にいるメガスロースを倒すのを忘れないようにしてくださいね。失礼いたします。
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