アレックス・ダウセット

プロサイクリストが教える自転車通勤時短テクニック!

© Tim de Waele

非凡な才能を持つタイムトライアリストが自転車通勤のスピードアップ法をアドバイスする。

この夏は、これまで以上に健康になることを目指して、公共交通機関での通勤の代わりにラン / サイクリング(あるいはスイム)を取り入れたいものだ。
手前味噌になるが、Red Bull UKでは、このアイディアを促すために、7月の1カ月間でStravaの総走行距離1万マイル(約16,043km)を目指す参加型プロジェクト『Million Mile Commute』が毎年行われている。
ところで、無理なく快適に自転車通勤を続けるには、まず優れた効率性が求められる。そして、サイクリングの世界で最も効率を追求している競技がタイムトライアルだ。
そこで、UCIワールドツアーに参戦するTeam Katusha–Alpecin所属ライダー、アレックス・ダウセットに話を聞き、我々がタイムトライアル的な正確さで自転車通勤に取り組むべき理由を尋ねてみることにした。
タイムトライアルのスペシャリストで、2015年にアワーレコード(1時間にどれだけ長距離を走れるかを競う自転車競技)の世界記録を446mも上回る新世界記録(52.937km)を樹立したダウセットは、サイクリングの効率性アップについて熟知している。
通勤時間の短縮は素晴らしいことだが、何よりもまず肝に銘じておかなければならないのは、通勤はレースではなく、ライダーと周囲の安全が第一だということだ常に注意を怠らず、一般常識の範囲内で行動してもらいたい
これを大前提として踏まえつつ、アレックス直伝の通勤時短テクニックを紹介しよう。

1. バーにぶら下がって身体を伸ばす

「これはオフィスの中でやるには適していないかもしれないけど、僕は頻繁にバーにぶら下がって身体を伸ばしている。これによって肩の周囲がストレッチされ、ライディングポジションの向上に役立つんだ」
「僕は自宅にバーを備えていて、1セット20秒を3回こなしている。実際、このストレッチをしてから風洞でセッションを行うと、タイムが向上しているんだ」
「とはいえ、懸垂はほとんどできないけれどね。頭を下にしてストレッチするのもOKさ。ライディング時やデスクに座っている時の姿勢が前かがみ気味になっていると、膝やかかとに負担がかかる。だから、ぶら下がって緊張をほぐすのは効果的なんだ」

2. スリップストリームを活用する

日常のサイクリングでもレース的なアプローチを取り入れ、ライディングの効率を意識してみよう。他の人のスリップストリームを利用して、安全を確認したあとで横に並び、そのまま勢いを利用(スリングショット効果)してスピードを得よう」
ただし、前を走る人を驚かせないように注意してほしい。あとはもちろん、周囲の車にも常に気を配ろう

3. 朝食は早めに済ませておく

「僕の場合、しっかりとした食事はタイムトライアルの3時間前までに済ませるようにしている。それ以降に食事を摂ってしまうと、レース中に吐いてしまう可能性がある」
「オフィスへ向かう3時間前に朝食を済ませるのは無理だけど、仕事を終えた夕方なら、ランチに食べたものは十分消化できているはずだよね」
「ライディング前にカレーを食べるのはオススメしない。また、僕の場合は1本か2本エナジードリンクを飲んで、事前に炭水化物を補っているよ」
サドル位置を低くすればスピードアップするというのは、よくある誤解だ。スピードアップの秘訣は、前面投影面積を限りなく減らすことなんだアレックス・ダウセット

4. 追い越しのタイミングは確実に

「誰かを追い越す機会があると思うけど、安全に前へ出る必要がある。あまりにスピードが高すぎると、落車の可能性があるし、スポークに負荷がかかって折れてしまうこともある
「誰かを追い越したあと3秒数えるようにすれば、自分が怪我をしたり、バイクに異常が生じたりするリスクがなくなるはずだ」

5. 筋肉をストレッチする

「サイクリストたちは股関節屈筋や腰が硬くなる症状を頻繁に訴える。その結果、サイクリストの大半は今にも転びそうな姿勢で歩くようになってしまっている」
「以前は一切ストレッチをしなかったんだけど、今では良い習慣になっている。ITバンド、つまり腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)を股関節屈筋と共にいつもストレッチするように心がけよう。腰のストレッチにもある程度時間をかけるべきだ」

6. ライディング時の前面投影面積を減らす

アレックス・ダウセット
アレックス・ダウセット
「常にエアロダイナミクスを意識したポジションを念頭に置こう。サドル位置を低くすればスピードアップするというのは、よくある誤解だ。スピードアップの秘訣は、前面投影面積を限りなく減らすことなんだ」
両脇を締めて肩幅を狭くし、頭を下げるようにすれば、より空気抵抗の少ない姿勢になる

7. クールダウン

「タイムトライアルを走ったあとは、ワークアウトなんて絶対にやりたくない気分になる。レースの翌日の予定によっては、ウォームダウンをすべきかどうか悩むこともあるね。別のレース予定がある場合は、ターボトレーナーを使って脚を動かすよ」
「30秒間、脚を爆発的に動かしたあと30秒間休むルーティンを2・3回繰り返すゾーン3(心拍トレーニングのレベル)は、身体に無理のない快適なペースだ。でも、週5日自宅と職場を自転車で往復するなら、クールダウンの習慣化には意味がある

8. バイクの整備は確実に

「毎日使うツールは良好な状態に保っておくべきだ。質が高く構造がシンプルなバイクを手に入れ、確実に整備しておこう。タイヤの空気圧も常に適正値を保とう。そうすれば日々の通勤がより楽しめるようになる」
「定期的にバイクショップで整備してもらい、チェーンも一定期間で交換するようにしたい。良質なサドルを備えておけば、ライディング全体がより楽しくなるはずだ。職場への行き帰りで1日2回乗るなら、怪我を未然に防ぐためにも質の高いバイクが必要だね

9. 毎日のペース配分を変化させて楽しむ

「自転車で通勤する人のスピードは、トライアリストたちよりも高くないけれど、僕が全力を出すのと、一般の通勤者が全力を出すのは同じだ。僕が週に5日、毎日片道30分を自転車通勤に費やすとしたら、毎日全力でペダリングしようとは思わない」
「僕なら、全力を出すのは火曜日と木曜日だけに限定する。月曜日は一部のセクションを全力でペダリングしつつ、別のセクションでは20%のペダリングに落とす。インターバルトレーニング的に異なるペースをミックスするんだ
「水曜日は全体的にクルージングペースでゆっくりペダリングして、サイクリングを純粋に楽しむ。金曜日は普段よりも走行距離を延ばす。帰宅時のコースを長く設定して走行距離を稼ぐんだ。トレーニングは、自分の基準値を引き上げることが何より肝心なんだ」