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Meet the newest WRC winner, Esapekka Lappi
それにしても、なぜフィンランド人はこれほどまでにラリーに強いのだろう? ラリー界においては「トップでフィニッシュ(Finish:ゴール)するためには、フィニッシュ(Finnish:フィンランド人)でなければならない」という昔からの言い回しがある。
しかし、これは単なる言葉遊びではないように思える。そこで、我々は閉ざされたサウナの奥深くまで入り込み、フィンランド人ドライバーたちの速さに潜む5つの秘密を探ってみることにした… 。
フィンランドのグラベルは月の面積以上!?
フィンランド国内を走る道路の総距離を合計すると約45万4千kmになるが、そのうち、実に約35万kmが未舗装路もしくは林道で占められている。フィンランドでは舗装路よりもグラベルが圧倒的に多く、その比率の高さは西ヨーロッパ諸国ナンバーワンと言われている。それを考えればフィンランド人がグラベルラリーに強いのも納得できる。
フィンランド出身の歴代ラリードライバーの多くは生家が農場や畜産を営んでいる。つまり、個人差はあるにせよ彼らはラリーのSSで使用されるようなグラベルを走り慣れているというわけだ。仮に実家の敷地内にグラベルがなかったとしても、思う存分にドリフトして遊べる場所は周囲にいくらでもある。現在はフィンランド国民の84.4%が都市部に居住しているそうだが、今も次世代のフィンランド人ドライバーたちは都市を離れた田舎道で着々と腕を磨き続けている。
才能ある若手を育てる土地柄
フィンランドから国際的なラリーに進出するためには相応の資金が必要だが、フィンランドには才能ある若手ラリードライバーをキャリア初期から資金面で援助し、そのドライバーが活躍したあとで投資を回収するという優れたマネージメント構造が以前から存在している。おそらく、最も有名な “スーパーマネージャー” が実業家ティモ・ヨキだろう。彼はユハ・カンクネンやトミ・マキネン、ヤリ=マティ・ラトバラなどの歴代フィンランド人ラリードライバーを発掘し、資金面の支援を行なってきた人物だ。
そして、彼は今も若手フィンランド人ドライバーの発掘と支援を続けている。「これは決してリッチマンになれるビジネスではない。支援したドライバーが成功すればそれなりの見返りはあるが、思わぬアクシデントの代償を支払わねばならないこともあるからね!」とヨキは語る。このように、フィンランド人ラリーマネージャーたちはリスクを承知で投資する心意気を持っている。これはフィンランド以外ではなかなか見られない土地柄だ。
チャイルドシートが取れたら運転席!?
ティモ・ヨキが現在支援しているドライバーのひとり、カッレ・ロバンペラは弱冠16歳ながらすでにラトビア選手権のチャンピオンに輝き、さらにはフィンランド選手権でも2勝を挙げている逸材だ。彼は2017年10月に17歳の誕生日を迎えるが、その暁にはウェールズ・ラリーGBでWRCデビューを飾る可能性がある。カッレはわずか8歳で初めてラリーマシンをドライブしているが、実は6歳の頃から一般車を自在に操っていた。
今やToyotaのエース格に成長したヤリ=マティ・ラトバラは17歳の時に母国フィンランドからウェールズに移住している。なぜなら、英国では17歳で自動車運転免許の取得とラリー公式戦の参加が可能だからだ。フィンランド人ラリードライバーたちの早熟ぶりを示すひとつの事実を記しておこう。WRC歴代最年少優勝記録トップ3は全てフィンランド人ドライバーが独占している(歴代1位:ラトバラ / 2位:ヘンリ・トイボネン / 3位:マルク・アレン)。
揺るぎなきフィンランド魂= “シス” の存在
“シス(Sisu)” というフィンランド語が持つ意味を他言語へ正確に置き換えるのは難しい。しかし、シスの存在こそがフィンランド人ドライバーの偉大さを解き明かす最も重要なヒントだ。シスとは、逆境や困難に直面した際に発揮される不撓不屈(ふとうふくつ)の勇気を意味する。どんなに困難な状況においても自らが持てる最善の力を尽くすという、ストイックな決意を表す典型的な “フィンランド魂” とも言い換えられる。
フィンランド人ドライバーは練習熱心
幼少期からドライビングを始め、資金面のバックアップも充実しているフィンランド人ドライバーたちは非常に若い年齢から数千kmものラリー経験を積み上げている。その熱心な練習ぶりは、彼らの中に息づくシスにも関係しているはずだ。要するに、彼らをラリーマシンから遠ざけておくことはできないのだ。これはフィンランド出身のコ・ドライバーたちについても同じことが言えそうだ。
ヤリ=マティ・ラトバラのコ・ドライバーを務めるミーカ・アンティラは2017シーズンWRC第9戦ラリー・フィンランドで歴代最多出走記録を更新する189戦目のラリーを祝った。彼の相棒であるラトバラもまだ32歳ながら、あのセバスチャン・ローブを超えるWRC178戦出場を誇っている。






