YouTubeゲーム実況動画90万PVを記録したフリーゲームの作者になって見えた世界
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YouTubeゲーム実況動画90万PVを記録したフリーゲームの作者になって見えた世界

筆者が制作したフリーゲーム『お父さんのPCクエスト』が人気YouTuberに取り上げられて気が付いたこと。
Written by 戸塚伎一
読み終わるまで:8分Published on
ここ数年来の筆者の趣味は、ゲームの自主制作だ。
といっても本格的なプログラマーの道は、すでに元号が平成になる前に諦めている。

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制作手段はもっぱら、子ども向けの簡易プログラミング言語や、ジャンル限定のゲームコンストラクションツール
限られた環境・才能・リソースの中で最善を尽くした作品を、気づいた人にだけ届けばいいというつもりでネット上にそっと公開するのが、常だった。
筆者が制作したフリーゲーム、『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。

筆者が制作したフリーゲーム、『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。

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ところが2018年10月下旬。故あってゲーム実況動画をYouTubeで検索していると、見覚えのあるサムネイル画像が目に飛び込んできた。
2017年3月に某フリーゲーム投稿サイトで公開した自作ノベルゲーム『お父さんのPCクエスト』の1シーンだった。
ゲーム内容は、家の押し入れの中で発見した古いPCを触っていくうちにさまざまな物語が展開する短編ノベルゲーム。選んだ選択肢によって結末がささやかに分岐する、システム的にも地味な作品だ。
動画投稿日は発見した日の1日前にもかかわらず、PV(視聴回数)はすでに15万超え。大手YouTuberプロダクションに所属する人気ゲーム実況主の"新作動画"(下の動画)だったことが、驚異的なPVの理由だった。
同年12月上旬には、歴10年の人気ベテランゲーム実況者にも取り上げられ(下の動画)、この原稿を書いている時点で、『お父さんのPCクエスト』関連の実況動画の合計PVは約90万にまで達している。
作ったゲームが実況動画の題材になることは、個人ゲーム制作者にとっては、ただただ光栄な話だ。
その一方で、本業のゲームライターとしては「この現象はいったいどうしたことだろう」という関心がわいてくる。
「なぜいまになって?」に関しては、自作ゲーム公開とほぼ同時期にローンチしたNintendo Switchのブームが一段落し、当時の埋もれていたフリーゲームにスポットが当たるようになったからかもしれないが、おそらく無関係だ。
人気ゲーム実況者ならではの"時流を読み、適切なタイミングを見抜く眼力"あってこそのいま、なのだろう。
そこで今回は、自身のゲーム制作の過程を振り返りつつ、とくに派手さのないフリーのノベルゲームの実況動画が、なぜ人気実況者のコンテンツに加えられたのか、考えてみたい。

◆『お父さんのPCクエスト』のゲームコンセプト

・(1)短い作品にする
そもそも、そんなに大がかりなゲームを作れる能力もリソースもないため、そうするしかなかったという大前提はさておき。
この作品に関しては、フリーゲーム投稿サイトが当時開催していた「1000文字程度のテキスト量のゲームコンテスト」に応募するため、すでにストックしていたアイデアをより限定的なレギュレーションに押し込んだ……という背景がある。
結果的にプレイ時間10数分という、単発のゲーム実況動画の題材として短くも長くもない、ちょうどいいコンパクトさでまとまった。
『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。メッセージウィンドウと選択肢に表示されるテキストの総数を約1000字に調整。

『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。メッセージウィンドウと選択肢に表示されるテキストの総数を約1000字に調整。

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・(2)過去の有名フリーゲームを題材にする
ニコニコ動画初期(2000年代終盤)の人気コンテンツのひとつだった、Windows PC用フリーゲーム『呪いの館』のプレイ動画の存在が、ずっと心に引っかかっていた。
(下の動画は、前述の人気ベテランゲーム実況者が2年前に公開した『呪いの館』のプレイ動画)。
ゲーム自体は、操作性と難易度調整と演出に難がある、小規模な2Dアクションアドベンチャー。
しかし、制作者のエピソード──
●当時小学校3年生の息子と楽しみながら作ったこと
●予告されていた続編は成長した息子が相手にしてくれなくなったから制作中止になったこと
●息子はすでに立派な社会人になっていること
──と併せて受け止めると、決して上等とは言えないゲーム性に、儚くも美しいドラマが宿っているように感じられるのが不思議だった。
この"スレスレな線の感動"をうまく再現できれば、規模的・クオリティ的にいまひとつな自作ゲームでも、プレイヤーの心を揺さぶれるかもしれない……というニッチな発想から生まれたのが、『お父さんのPCクエスト』のストーリーである。

◆『お父さんのPCクエスト』でこだわったポイント

・(1)"偽のPC画面"の作り込み
作中のイベントCG(一枚絵)として使用している"父親が昔使っていたPCの画面"は、往年のPC用OS"Windows 98"の画面を目コピしながら、画像編集ソフトでいちから作った。
2000年前後のPCに触れたことがある人であれば懐かしさを、そうでない若年世代も「古くさいPCだな」と感じる第一印象にこだわった。
当初は、インターネットの画像検索でヒットしたWindows 98のスクリーンショットをそのまま使っていたが、フリーゲーム投稿サイトに「このままでは当サイトでは公開できない」と通達されたため、渋々の自作だった。
それが結果的に、実況動画等では"アプリケーションアイコンの元ネタ当てクイズの要素がある、往年のPCのパロディ"と受け取られたのだから、何が幸いするかわからないものだ。
『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。トレース・改変を一切行わず、すべて目コピで作成した偽のPC画面。アプリのネーミングは、かなりふざけた。

『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。トレース・改変を一切行わず、すべて目コピで作成した偽のPC画面。アプリのネーミングは、かなりふざけた。

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・(2)エンドロール演出
『お父さんのPCクエスト』は、"ゲーム内ゲーム"のエンドロールが総プレイ時間の約半分を占めている。
エンドロール中はスキップ不可。その間プレイヤーは、"作者"の何とも言いようがない自分語りに、延々と付き合わされる。
こうしたのは、アマチュア製ゲームの、いかにもな細部の詰めの甘さの演出のひとつであるとともに、本作の一番の"見せ場"をもっとも効果的に見せる手段としての選択結果である。
ゲーム内ゲームのクリアー直後から流れるBGM(下の動画)の作者は、ノルウェーの若きアーティスト"October Child"
穏やかなエレクトロニカを専門に紹介するYouTubeチャンネルで知り、彼の抒情に満ちた音楽世界はきっと日本のゲーム・アニメファンに受け入れられる、との確信を持った(後に知ったことだが、彼は『CLANNAD』や『リトルバスターズ!』といった日本のアニメのファンでもあった)。
そしてダメ元で、音声ファイル共有サービスで公開している楽曲を自作ゲームの重要なシーンで使用していいか問い合わせたらOKをもらえた……というわけだ。
エンドロールの速度は、使用曲の長さを基準に調整している。"フリーゲーム作者がやらかしがちなわがままのメタ表現"というと聞こえはいいが、誰もがそういった意図を汲みとって観賞できるわけではない。「長すぎて飽きる」という意見が挙がるのも当然だ。
それでも、「(エンドロールの)BGMが良かった」というユーザーコメントを見つけるたびに「ね! ね! そうだよね!」と、内心大はしゃぎする。
自分が素敵だなと思う表現物新たな角度からスポットを当てる装置として、自作・インディーゲームは多くの可能性を秘めている。
好きな絵や音楽が作中で輝き、またそれらによって作品自体の印象が良くなるのであれば、作者への仁義を通した上で、積極的に採用するべきだ。

◆人気実況者のゲーム実況動画を見て気づいたこと

本作の"父親のPCを覗き見る"というモチーフは、すでに多くのファンを抱えるゲーム実況者にとって"おいしいネタ"であることが、動画タイトルやユーザーコメントからうかがい知れた。
PC本体などのイベントCGに実写を使用していたり、前述の通り、PCの画面を本物っぽく作り込んでいたことから、実況者があたかも「自分の本当のお父さんのPCの中身を公開する動画」であるかのような動画タイトル、サムネイル画像を作成。
それに釣られたファンが興味本位で観てしまう……という流れによって、地味なゲーム内容にもかかわらずPVが伸びたと思われる。
ゲームで使用したPC本体の画像。実際には設定の年代より新しいもので、多くのツッコミが入った。

ゲームで使用したPC本体の画像。実際には設定の年代より新しいもので、多くのツッコミが入った。

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また、本作の"スキップできないエンドロール時間"は、期せずしてゲーム実況者の実力が発揮されるひとときになっていた。
やや自分に酔っている感のある、ゲーム内ゲームの作者のメッセージは、人気実況者のイケボ(イケメンが発しているかのようなカッコよく聴き心地よいボイス)で朗読されることで説得力を得、より多くの人の心に響くものになったことは、間違いない。

◆総評とゲーム制作のこれから

『お父さんのPCクエスト』は、人気ゲーム実況者をおいしくするいくつかの要素を偶然備えていたノベルゲームだったと思う。
じゃあそれが、実況動画の外の世界への広がりにつながったのかというと、フリーゲーム投稿サイトのプレイ人数推移を見る限り、とてもそんな感じはしない(動画公開の翌日に10人前後を記録し、以降は1日につき0~5人程度)。
もしもゲームを作る目標が"憧れの実況者に自作ゲームを実況されたい"というものであれば、今回の記事で書かれている内容を意識的に盛り込むことで、達成できるかもしれない。
しかしビデオゲームは、もっと多くのことを詰め込めるエンターテインメントだ。
大手企業が"最新技術""豪華さ"を惜しみなく投入する一方で、個人や少人数チームだからこそ目が届き、詰め込めるものがまだまだある。
それをゲーム制作という実践形式で探し続けることもまた、ゲームの楽しみ方だ。
『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。

『お父さんのPCクエスト』のゲーム画面。

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