Paddy Graham, shot by Pally Learmond
© Pally Learmond/Red Bull Illume
フリースキー

【プロが教える始め方】フリースタイルスキー初心者用ガイド

フリースタイルスキーに興味を持っている人たちのために、英国人レジェンドスキーヤーが基本を教えてくれた。
Written by Joe Ellison
読み終わるまで:9分公開日:
ひと昔前まで、スキーはスロープを下り終わるまでのタイムやそのスタイルを採点する競技だった。しかし、その後、スノーボード的な要素(スキル、エア、レール、ビッグジャンプ)と両脚を自由に使える伝統的なスキーを組み合わせたフリースタイルスキーが誕生した。
「フリースタイルスキーは非常に人気が高まっており、現在は3種目が正式採用されています」と語る英国人フリースキーヤーのパディ・グラハムに、この新世代スキー競技のすべてを説明してもらった。
豪快なエアをメイクするパディー・グラハム
豪快なエアをメイクするパディー・グラハム
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フリースタイルスキーの種目

  • スロープスタイル:「これはスロープを下る普通のスキーにジャンプやレールなどの障害物を追加した種目です。通常は5〜6種類の障害物が配置されます。高得点を記録するためには、すべての障害物でトリックをメイクしつつ、最後までクリーンなランを披露する必要があります」
  • ハーフパイプ:「ハーフパイプはアイコニックな種目で、フリースタイルスキーとの相性は最高ですね。ハーフパイプ自体の高さは約6.7mあります。雪で作られていますが、実際は氷に近い感触ですね。なぜなら、強度と形状を維持する必要があるからです。競技者はハーフパイプを左右に移動しながらラン1回でトリックを5〜6回メイクします」
  • ビッグエア:「フリースタイルスキーのビッグエアの魅力は、スキー2本を揃え続ける必要がないところです。クロスさせたり、様々なグラブをしたりできるので、姿勢が固定されるスノーボードよりもバラエティに富んだパフォーマンスができます。競技者は約18mのランプからジャンプします。空中での回転数とスキルが優れていれば高得点に繋がります」
ここまで3種目を説明したが、障害物やランプから飛び出せなくても心配はいらない。グラハムは、次のように説明を続ける。
「心配がいらない理由は、フリースタイルスキーは自分の好きなようにパフォーマンスできるスポーツだからです。僕も雪山ではなく、英国・シェフィールドのドライスロープ “Ski Village / スキービレッジ”(編注:人工ブラシを敷き詰めたトレーニング施設)から始めました」
「英国は驚くほどドライスロープの数が多いんです。かつては70施設もあったんですよ。つまり、英国のどこに住んでいても車で1時間ほどの距離にドライスロープかスキー場があるんです。このように、スキーができる施設があれば、わざわざ雪山に行かなくてもフリースタイルスキーを楽しめます」
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正しいスキー板を手に入れる

「一般的なスロープでは、ほとんどの人が、テール(後部)が直線になっているオールラウンドタイプのスキー板を使用しています。しかし、フリースタイルスキーでは “ツインチップ” 、つまり、テール側からでも滑れるようになっていて、どちらの方向にも進めるスキー板が使用されています」
「また、フリースタイルスキーではストックが通常よりも短く、スキー板をグラブしたときに邪魔にならないようになっています」
北海道のパウダーを楽しむパディ・グラハム
北海道のパウダーを楽しむパディ・グラハム
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無理をしない

「スロープでもバックカントリーでも、安全第一です。ヘルメットを必ず着用して、快適にできないことは回避しましょう。 フリースタイルスキーは自由なので、“この競技をやりたい” と強く意識する必要はありません。ですので、余計なプレッシャーを自分にかけないようにしてください」
「フリースタイルスキーは一番簡単に始められる競技です。なぜなら、ルールがないからです。自分を自由に表現しながら、ジャンプをしたり、雪山を巡ったりするだけです。とにかく楽しんでください。楽しむことが究極の目標なのです」
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後ろ向きに滑ってみる

「フリースタイルスキーで最初に学べることのひとつが “後ろ向きで滑る” です。ビッグジャンプはまだ早いと思っているなら、ツインチップで後ろ向きに滑ってみましょう。スキー板をコントロールして平行(パラレル)に保ち、両肩越しに進行方向をチェックしながら滑ってみましょう。自分の周囲に何があるのかを常にチェックするようにしてください」
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トランポリンで練習する

空間認識能力は、優れたフリースキーヤーになるための重要な条件のひとつです。子供の頃、母親に地元のスポーツクラブへ連れて行かれて2ヶ月ほど学んだのですが、授業のひとつがトランポリンでしたので、自分の身体をコントロールする方法を学ぶことができました。この頃は、スロープで滑るのは週1回だけで、あとは庭先に置いたトランポリンを使ってテレビで見たトリックを再現しようとしていました」
「というわけで、スロープを使わないフリースタイルスキーの最良の練習方法は、トランポリンでジャンプすることです。滞空時の身体感覚を学びながら、両脚を掴むなど様々な姿勢を取ってみましょう」
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焦らない

「ひとつずつスキルを積み重ねていきましょう。フリースタイルの大半は小さなジャンプからの派生です。180や360が難なくメイクできる、または後ろ向きのままテーブルトップのような安全で小さなジャンプから飛び出せるようになれば、すべてがスムーズに行えるようになっていきます」
「半年取り組めば、ジャンプからの半回転や1回転、つまり180や360がメイクできるようになっているはずです。これらはドライスロープでも練習できます」
レールに挑むパディ・グラハム
レールに挑むパディ・グラハム
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目標を設定する

「フリースタイルを始めて半年ほど経ったら、グラブをいくつかマスターすることを目標に設定しましょう。最も簡単なグラブは “セーフティグラブ” で、これは両膝を曲げてスキー板の横を両手で掴むトリックです。もうひとつの簡単なグラブは “ジャパングラブ” です。これは、背中側から片手で逆側のスキー板をグラブします(例:左手で右板の内側をグラブする)」
「他にも、スキー板をクロスさせてから前方をグラブする “ミュートグラブ” や、テールをグラブする “テールグラブ” などがあります。これらはいずれも楽しく、自信と滞空時間が十分なら比較的簡単にメイクできます」
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前方確認を怠らない

「ビギナーが最も注意しなければならないことのひとつが、着地点の確認です。目の前にジャンプがあるのは分かっていても、その先がどうなっているのか分かっていなければ意味がありません。仲間や他人と同じジャンプをしようしているときは、着地点を事前に確認して備えておくことが特に重要です」
「その他にも、このようなジャンプでは、下に小さな子供が立っていたり、木のような障害物があったりするときもあるので、前方を必ず確認してください」
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ジャンプでは姿勢を維持する

「ジャンプ初挑戦のスキーヤーの多くは、姿勢を低くして、ジャンプの端から飛び出そうとします。ですが、基本的にはジャンプに身を任せて、自然な姿勢を維持したまま飛び出すようにしてください」
「言うまでもなく、膝は曲げておく必要がありますが、深く曲げすぎてしまえば、Gフォースが加わるジャンプ出口で身体が下に押さえつけられてしまい、飛び出したタイミングで元の姿勢に戻れなくなってしまいます。こうなってしまうと、後方に重心が移動してしまうか、バランスを崩してしまいます」
豪快なエアをメイクするパディ・グラハム
豪快なエアをメイクするパディ・グラハム
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着地で後傾にならない

バランス身体強度が重要です。スロープターンで発生するGフォースを扱いながらバランスを取ることの難しさがすでに理解できている人なら、後傾姿勢での着地を避けたいはずです。膝を曲げて椅子に座っているような姿勢で着地してしまえば、自分をコントロールすることはほとんど不可能になります」
「重心を身体の中心またはやや前に置き、スクワットをしているときと同じような負荷を脚の筋肉にかけながら着地したあと、膝を伸ばして元の姿勢に戻りましょう。このような姿勢が取れなければ、転倒してしまう可能性があります」
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頭を上げる

「ジャンプをマスターして、完全にコントロールできるようになるためには、頭の位置が重要になります。常に頭を上げて前を見るようにしましょう。ジャンプ中に地面を見てしまえば、全身が下を向いてしまいます。ですので、頭を上げて全身のバランスを保つようにしてください。頭を動かしすぎてしまえば、姿勢が大きく崩れてしまいます」
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チャンスを逃さない

「ドライスロープやスキー場ではフリースタイル用のイベントが企画されるときがあります。このようなイベントでは普段はトライできないタイプのレールなどで練習できるので、ビギナーにはパーフェクトなチャンスです」
「レールが長くて大型だと気後れしてしまう人もいるかもしれませんが、小さなボックスなら簡単にトライできるでしょう。そのようなボックスの上に乗れるようになったら、身体を横向きにする練習やジャンプの練習に繋げてみましょう。そして地面と平行に置かれているボックスに乗れるようになったら、そこからレールに飛び移ってみましょう。次にレールからジャンプする練習に移行します」
「バランスがカギです。僕が自宅で良く使っているギアのひとつが、バランスボードです。スケートボードのような形状ですが、ウィールの代わりにローラーが付いているので、バランス能力を鍛えられます」
フリースタイルスキーはバランスがすべて
フリースタイルスキーはバランスがすべて
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海外でレベルアップを目指す

「スイスのスキーリゾートで世界的に有名なラークス(Laax)は、雪山の半分がパークですし、スケートパークやトランポリンも用意されています。また、オフシーズンでも練習できるフリースタイル専用アカデミーもあります。米国にも、ユタ州パークシティにウッドワード(Woodward)と呼ばれるトランポリンやフォームピットも用意されている施設があります」
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スロープ以外でも練習する

「フリースタイルスキーシーンには、フリーライドやバックカントリーも存在します。つまり、スロープから離れたオフピステでのライディングです。オフピステで安全にライディングできるスキルとギアを手に入れ、雪崩の危険性を理解できているなら、世界各地でフリーライドやバックカントリースキーを楽しむのもグッドアイディアです。雪山を巡る素晴らしい方法と言えます」
「このような雪深いエリアへ向かうときは、長さを調節できるテレスコピックタイプのストックを用意するのが良いでしょう。現地のルールを厳守し、安全第一で楽しんでください」
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