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最高にひねくれている任天堂担当の批評家でさえも、Nintendo Switchのデビューイヤーはセールスだけではなくソフトの面でも素晴らしかったと認めざるを得ないだろう。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、『ARMS』、『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』(日本版は2018年1月18日リリース)、そして数々の素晴らしいインディーヒットなど、Nintendo Switchユーザーの手元には魅力的なゲームが数多く揃っている。しかし、不思議なことにこの最新ゲーム機にひとつだけ欠けているジャンルがある。それはシリアスでリアルなレーシングゲームだ。もちろん、素晴らしい『FAST RMX』や最高に楽しい『マリオカート8 デラックス』がリリースされているが、Nintendo Switchには『Forza』や『グランツーリスモ』シリーズに挑めるレーシングゲームが存在しない。しかし、この現状にまもなく変化が起きそうだ。
フランスのデベロッパー、Eden Gamesが『ギア・クラブ』シリーズをNintendo Switchでリリースする。そして、この『ギア・クラブ アンリミテッド』は、SonyとMicrosoftのミリオンセラーシリーズに最も近い存在になることが予想されている。『ギア・クラブ』(『Gear.Club』)はスマートフォン用の無料ゲームアプリとして産声を上げたシリーズだが、「なんだ。ゲームアプリか」と無視する前に知っておくべきことがある。それは、このデベロッパーは20年以上の歴史を誇っており、その長い時間の中で、『V-Rally』シリーズや『ニード・フォー・スピード ポルシェ・アンリーシュド』、『テストドライブ アンリミテッド 2』、そして2008年のリブート版『Alone in the Dark』を手掛けてきたということだ。
「私たちの自社開発ツールとゲームエンジンは20年をかけて磨かれてきたものです」 - Eden GamesのCMOを務めるPascal Clarysseはこのように切り出し、次のように続ける。「システムとテクノロジーは定期的にアップデートされていますが、その中には変更が加えられていないものもあります。たとえば、物理法則がそうです。また、ビギナー用のエイドやアシストも10年以上かけて洗練してきました。Eden Gamesは立ち上げ当初からレーシングゲームを得意としてきたこと、そしてリリースを重ねることでテクニックに磨きをかけてきたということを忘れないで欲しいですね」
つまり、Eden Gamesは未熟な新参デベロッパーではないということだ。彼らは複数のプラットフォームにおけるゲーム開発を数十年続けてきたベテランデベロッパーであり、彼らのDNAにはレーシングゲームが組み込まれている。この点を説明したClarysseは、『ギア・クラブ アンリミテッド』が元々ゲームアプリだったという点に疑問を感じている人たちを納得させるべく、次の説明に移行する。
『ギア・クラブ アンリミテッド』はプレミアムタイトルですので購入時に全てを楽しめます。課金制ではありません
「まず説明しておきたいのは、『Gear.Club』と『ギア・クラブ アンリミテッド』は経済面で大きく異なるという点です。『ギア・クラブ アンリミテッド』はプレミアムタイトルですので購入時に全てを楽しめます。課金制ではありません。また、Nintendo Switchの性能を最大限引き出して、高解像度のグラフィックスとヴィジュアルエフェクトを用意していますし、さらにはゲームプレイも異なります。『ギア・クラブ アンリミテッド』ではJoy-Conを使って、最大4人までの画面分割ローカルマルチプレイヤーが楽しめます」
『ギア・クラブ アンリミテッド』の画面分割ローカルマルチプレイをスクリーンショットでチェック!
ここまでの彼の話はかなり好感触だ。しかし、熱心なレーシングゲームファンなら、『ギア・クラブ アンリミテッド』のようなシミュレーションタイプのレーシングゲームは再現度が全てを左右すると警告するだろう。美しいヴィジュアルと正確な物理エンジンが用意されていなければ、ハードコアなレーシングゲームファンを惹きつけることはできない。しかし、Clarysseは、『ギア・クラブ アンリミテッド』はこのようなファンの期待にも応えられると自信を見せる。「全てのマニュファクチャラー(自動車メーカー)と密接な関係を築き、彼らのモデルが正確に再現されるように努力しています。また、予想している人も多いと思いますが、彼らは再現精度についてかなり厳しい目を持っています。私たちが長い時間をかけて関係を築き上げ、複数のタイトルに参加してもらっているマニュファクチャラーは、過去作との差を生み出すべく常に小さなディテールに拘り、ひとつ上のレベルを求めてきます」
『ギア・クラブ アンリミテッド』には、太陽がまぶしい地中海、乾ききった砂漠、緑濃い森という完全に異なる3種類の環境にまたがる200種類のレーストラックが用意されるが、レーストラック上のリアルで没入感の高いドライビングエクスペエンスだけがこのゲームの魅力ではない。Eden Gamesは長い時間をかけて、ガレージでも色々な作業が楽しめるように努力している。
「この『ギア・クラブ アンリミテッド』はクイックレースを楽しむだけのゲームではありません。リアルな車の世界が楽しめます」とClarysseは強調し、次のように続ける。「チューニングとカスタマイズはこのゲームのメインパートのひとつです。自分のワークショップで気が済むまでチューニングを行うことができます。スタッフを雇ったり、パーツをアップグレードしたり、ペイントを施したりと、様々な作業が楽しめますし、その全てが3Dで表現されます。また、全てが視覚的に素早く行えます。冗長なテキストメニューは存在しません」
Nintendo Switch本体について話を移すと、Clarysseは任天堂が生み出したこのハイブリッドゲーム機を心の底から尊敬していることを明かす。「私たちは子供時代から任天堂の大ファンでしたし、Nintendo Switchは任天堂のクラシックになると信じています。Nintendo Switchはゲームデベロッパーがゲームプレイを念頭に置いて丁寧に開発したゲーム機です。とても良く練られていますし、万能なシステムです。私たちもゲーマーとして楽しんでいますよ。『スプラトゥーン2』と『ぷよぷよテトリスS』、そして、当然ですが『マリオカート8 デラックス』が、社内の人気タイトルですね」
また、Clarysseは、素晴らしいヴィジュアルが既に用意されているにも関わらず、それらが滑らかに表現されることにも注力する予定だとしている。Clarysseは「TVモードでは1080p、携帯モードでは720pを目指しています。また、全モードで最低30fpsを実現します」としているが、Nintendo Switch本体にアナログトリガーが備わっていないことだけはどうすることもできなかったとしている。これは『Forza』シリーズや『グランツーリスモ』シリーズのファンなら「絶対に必要」と言う部分だ。しかし、Clarysseはすでにソリューションを用意しているとし、「先進的な計測ソフトで圧力を変換することで、デジタルトリガー上でアナログトリガーをシミュレートしています」と明かすと、DLCも準備中で、詳細については後日発表することを付け加えている。
少なくとも説明上は、『ギア・クラブ アンリミテッド』は素晴らしいレーシングゲームになりそうだ。このゲームには、プレイヤーに好印象を与える力強いヴィジュアルと、最も口うるさいレーシングゲームファンでさえも楽しめるリアルで魅力的なゲームエクスペリエンスが備わっているように思える。しかし、『ギア・クラブ アンリミテッド』は『グランツーリスモ』シリーズや『Forza』シリーズのような、高額の予算と1年を通じて働き続ける大量のスタッフに支えられているタイトルと互角の存在になれるのだろうか?
「私たちは『Forza』シリーズや『グランツーリスモ』シリーズのファンです。これらは間違いなくジャンル最強の存在ですし、私たちのロールモデルです」とClarysseは認め、次のように続ける。「正直に言えば、私たちは毎日ランチタイムにこの2シリーズをプレイしています。私たちのゲームは、この2シリーズのようにゲーム機メーカーのバックアップを受けていないということを理解し、謙虚に構える必要があります。ですが、私たちはNintendo Switchに欠けているジャンルを埋めようと全力を尽くしていますし、Nintendo Switchユーザーがハッピーになれるリアルなドライビングエクスペリエンスを実現したいと考えています。私たちの細部までの拘りが違いを生み出し、没入感を高めるはずです。20年間レーシングゲームを開発してきた私たちにとって、レーシングゲームはただの仕事ではなく、情熱でもあります。私たちの車への愛は、作品の中に表現されています」
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