モトクロスの歴史は、20世紀初頭に市販バイクに乗ってダートで速さを競いはじめたライダーたちに端緒を発する。当時の彼らの頭の中に安全性という概念は存在しなかった。
時代を現代まで早送りしてみると、依然として少なからぬ危険が潜んではいるが、今のモトクロスは、刺激的なスペクタクルをもたらすひとつのスポーツへと進化している。
しかし、"コフィン" と "クリフハンガー" の違いを知っている人はどれだけいるだろうか? FIMモトクロス世界選手権(MXGP)とAMAスーパークロス選手権の違いはどうだろう?
今回紹介する基礎知識ガイドを読めば、周囲に自慢できるモトクロス知識が身に付くはずだ!
モトクロスの起源は?
1906年、Auto-Cycle Clubによってバイクを用いた世界初のタイムトライアルイベントが開催され、バイカーたちがダートトラックで個人タイムを競い合った。
やがて、このイベントは毎週開催のヘア・スクランブル(hare scrambles)へ発展し、1924年には英国サリー州キャンバリーで初の公式イベントが開催された。
その後、このスポーツはフランス語でバイクを意味する "モトシクレット(motocyclette)" と英語の "クロスカントリー(cross-country)" を掛け合わせた混成語「モトクロス」として知られるようになった。
懸架機構を持たないリジッドフレームのバイクは、1930年代になるとサスペンションを備えたものへ進化し、1950年代初頭までには、スイングアームを備えたリアフォークサスペンションなどの革新的な技術が登場。1950年代後半にはFIMモトクロス世界選手権が発足(1957年)して、モトクロスは爆発的に普及する。
今年で66シーズン目を迎えるFIMモトクロス世界選手権は、史上最高の才能として称賛されたベルギーのジョエル・ロベール、1980年代に史上初の世界選手権3クラス完全制覇を成し遂げたエリック・ゲボス、強靭な身体能力と卓越したコントロール能力で勝利を重ね、通算5回のチャンピオン獲得を達成した "ザ・マン(The Man)" ことロジャー・デコスタなど、偉大なライダーたちを数多く輩出してきた。
主要選手権は?
モトクロス界には2大選手権が存在する。
まずひとつはAMA(American Motorcyclist Association:米国モーターサイクリスト協会)が主催し、米国を中心とした世界各国の精巧に作られたダートトラックで開催されるAMAモトクロス選手権で、もうひとつがFIM(Fédération Internationale de Motocyclisme:国際モーターサイクリズム連盟)がヨーロッパを中心に開催するFIMモトクロス世界選手権だ。
AMAモトクロス選手権は1972年に発足したが、FIMモトクロス世界選手権は1952年にヨーロッパ選手権として発足した歴史を持つ。現在は、両選手権ともに2クラス(MXGP:450cc / MX2:250cc)が設定されている。
スーパークロス、フリースタイル、ビッグエア、スーパーモトなどもモトクロスから派生した競技だが、開催地・路面条件はそれぞれ異なる。
スーパークロスは急角度のジャンプや障害物など、人工的に造成されたダートトラックでオフロードバイクを走らせる競技で、主にスタジアム内の特設コースで行われる。
AMAスーパークロス選手権は、1970年代にロサンゼルス・メモリアル・コロシアム(「モトクロス版スーパーボウル」と呼ばれている)でのレースをきっかけに米国内で人気が爆発して以来、大観衆を集め続けている。
また、Red Bull Straight Rhythmをはじめとする年1回のスーパークロススペシャルイベントも数多く存在し、2大選手権のオフシーズンにファンを熱狂させている。
FMXとして知られるフリースタイルモトクロスは最高のトリックを追い求めるカテゴリーで、各ライダーのパフォーマンスはジャッジによって審査される。
フリースタイルの分野で最も広く知られているシリーズ / イベントには、FIMフリースタイルモトクロス世界選手権やRed Bull X-Fighters、そして、FMXやスノーボードなど多種多様なエクストリームスポーツを組み合わせた複合型イベントのX Gamesなどが存在する。
代表的なライダーは?
モトクロスシーンを席巻した殿堂入りライダーとしては、ステファン・エバーツ(チャンピオン通算獲得回数10回)、先述したジョエル・ロベールやロジャー・デコスタ、11年で12回のAMAタイトルを獲得したリッキー・カーマイケルなどが挙げられるが、昨今のモトクロスファンの間では、彼らの存在は現代のスターたちに取って代わられている。
FIMモトクロス世界選手権現チャンピオン、アントニオ・カイローリのアグレッシブなライディングスタイルと持ち前のクールさは、彼をモトクロス界で圧倒的な人気を誇るライダーにしている。
同世代ライダーの中で最強と言われているカイローリは、2005シーズンと2007シーズンにMX2クラスを制覇し、2009シーズンには最高峰MXGPクラスデビューシーズンでタイトル獲得という快挙を成し遂げ、その後も続けて7回のチャンピオンを獲得した。
計9回のワールドチャンピオン獲得を誇るカイローリは、2018シーズンで10回目のタイトルを狙っている。
米国のモトクロスレジェンド、ライアン・ダンジーの体の中にはレースの血が流れている。
レース一家に生まれたダンジーは、AMAモトクロス / スーパークロスの両選手権でタイトルを獲得し、450ccクラスに初参戦した2010シーズンには史上初のルーキーチャンピオンに輝き、歴史にその名を刻んだ。
彼の連覇記録は、2017シーズンに27歳で引退を発表するまで途切れなく続いた。引退シーズンにもAMAスーパークロスのタイトルを制覇した彼は、頂点に君臨したままシーンを去った。
数え切れないほどのAMAスーパークロスタイトルを獲得したライアン・ダンジー。その驚異的なスピードの才能をチェック!

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Supercross and motorcross star Ryan Dungey reveals how to ride Whoops in super slow motion.
ジェームズ・スチュワートは、最近行われたRed Bullとのインタビューで「僕はレースを愛しているし、とにかく楽しみたいんだ」と語っていた。
多くの人々によって最も才能に恵まれたライダーと評され、モトクロス界最速の男と呼ばれているスチュワートは、新記録更新となる計11回のAMAアマチュアナショナル選手権タイトルを獲得しており、2008シーズンには開幕直前に膝の手術を受けたにも関わらず、AMAモトクロス選手権24戦全勝という大記録を打ち立てた史上2人目のライダーとなった。
現在、AMAモトクロス選手権チャンピオンの称号は、エリ・トマック(450ccクラス)とザック・オズボーン(250cc)の2人が保持しており、ここ数シーズンでトマックが披露している驚異的な速さは、彼がキャリア全盛期を迎えていることを示している。
しかし、元MX2ワールドチャンピオン&AMAモトクロス選手権チャンピオンとして知られるケン・ロクスンをはじめとするライバルライダーたちが、トマックの独走を易々と見逃すことはないだろう。
各カテゴリーのルールは?
FIMモトクロス選手権では年間18イベント、AMAモトクロス選手権では年間12イベントが組まれており、クラスごとに30分+2周のレースを2回行う。これらの熾烈なレースを通して獲得したポイントの合計によってチャンピオンが決定する。
一方、AMAスーパークロス選手権では毎年1月から5月にかけて17イベントが開催される。各イベントが2ヒート制で行われ、予選を通過した22名のトップライダーがポイント対象となるメインイベントに進出する。
最高峰450ccクラスのメインイベントは、20分+1周のレース形式で行われる。250ccクラスにエントリーするライダーは東地域と西地域の2ディビジョンに分けられ、各地域で8イベントずつ開催されたあと、シーズンフィナーレとしてラスベガスで開催されるオールスターファイナルでチャンピオンが決定する。
FMXには2種類のフリースタイルイベントが存在する。ビッグエアとより長い歴史を持つフリースタイルモトクロスだ。ビッグエアでは審査員が個々のスタイル・トリック・難易度・オリジナリティなどを総合して100点満点で採点する。
フリースタイルモトクロスでは、ビッグエアと同じく、審査員が100点満点で採点を行うが、審査対象となるのはトリックの難易度と各ライダーが2回のルーティンでメイクするジャンプパフォーマンスの多様性だ。
トリックの種類
コフィン、レイジーボーイ、スーパーマン、クリフハンガー、バックフリップ、ヘリコプター、ロックソリッド、ハートアタック... これらは全てFMXファンなら覚えておくべきトリック名だが、ライダーたちがさらなるバリエーションを編み出すことで進化を続けているトリックが、バックフリップだ。
昨年、ドイツのリュック・アッカーマンは20歳の誕生日を迎えた直後にダブルバックフリップの史上最年少メイクに成功しており、合計32回もの外科手術を受けた鉄人トラビス・パストラーナは、ロンドンのテムズ川で360°バックフリップをメイクしながら2艘(そう)のはしけの間をジャンプするという離れ業をやってのけた。パストラーナは以前にも同様のチャレンジに挑んだものの、クラッシュを喫して複数の椎骨を骨折している。
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