2020年にリリースされた『Ghost of Tsushima / ゴースト オブ ツシマ』(以下、『Ghost of Tsushima』)はPS4用オープンワールド・アクションアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは13世紀の元朝による日本侵攻から故郷を守ることを誓う侍 “境井仁” として対馬を巡ることになる。
『Ghost of Tsushima』はメディアから絶賛され、日本の対馬を非常に美しく描写したことが特に高く評価されて数多くの賞を受賞した。このゲームをプレイして、馬の背に乗って延々と続く森を抜け、桜の花びらが舞う中で敵と対決すれば、すぐにこの緑豊かな島に心を奪われることになる。狐をなでるのも忘れてはいけない。今作をプレイした多くのプレイヤーがこの狐に恋をしている。
『Ghost of Tsushima』の狐は、この作品のためにSucker PunchのアートディレクターJason Connellと彼のチームが作り出した奥深いインタラクティブワールドのほんの一部に過ぎない。
Connellは、アートチームは開発初日から『Ghost of Tsushima』を「心底美しく目を見張る世界」にするためのプランニングを進めていったとし、黒澤明が監督した時代劇映画作品群に大きな影響を受けたと明かしている。そして、Connellたちの仕事は『Ghost of Tsushima』の枠を飛び越える大きな影響を与えることになり、2021年3月には彼とクリエイティブディレクターNate Foxが対馬永久アンバサダーに任命された。
境井仁の任務は一刻を争うものだが、『Ghost of Tsushima』は、道を外れて彷徨い、美しい色鮮やかな木々と植物に囲まれながら寄り道をすることをプレイヤーに勧めてくる。立ち止まってそのような美しい風景を写真に収めたいと思うのはごく自然な成り行きなのだ。
Connellは、『Ghost of Tsushima』のビジュアルは、プレイヤーが美しい見ず知らずの地(実在するが)を訪れたような感覚を得られるようにデザインしたと語っている。普通の村の生活と普通の風景が豊かな色彩で描かれており、このコンビネーションはインゲームフォトグラフィにパーフェクトだ。以下にJason Connellのインタビューを紹介する。
− 『Ghost of Tsushima』の対馬を移動していると、小さな農場や村、建物に遭遇しますが、これらの存在が世界に命を吹き込んでいます。必ずしもストーリーとは関係なく、ただこの作品の世界とゲーミングエクスペリエンスの没入感を高めるためだけに存在しています。このようにデザインした理由を教えてもらえますか? 開発チームは何を目指していたのでしょうか?
Sucker Punchの直近2作品(『inFamous Second Son』と『Ghost of Tsushima』)の《フォトモード》は楽しみながら開発できました。開発を進めていく中で数万枚を撮影したのですが、「最高だ!」と思える写真や少し手を加えてさらに美しくできる写真が何枚も手に入ったのが楽しめた理由でした。
『Ghost of Tsushima』のビジュアルをユニークにしている理由は2つほどあると思いますが、個人的に誇りに思っているのは、「リアリズムの徹底追求」をしなかったことです。私たちはディテールをそこまで意識していませんでした。色、生物、植物の種類をどれだけ用意するか、岩影に何を置くかなどには拘りませんでした。そのようなリアリズムの追求から一歩下がりながら、彼岸花畑をどのように表現すべきなのかについて考えていきました。彼岸花畑は滅多に見られるものではありませんが、実在します。ですので、フォトモードで撮影をしようとしたプレイヤーが「こんな場所が本当にあるなんて! すごく綺麗だ!」と思えるようにしました。ゲームを通じてこのようなフィーリングを得てもらいたいと思っていました。
風の使い方もユニークですね。『Ghost of Tsushima』では風がいつも吹いています。島を旅するためのナビゲーションとして活用したり、ショットをドラマティックに演出するための小道具として使用したりすることもできます。風は今作のビジュアルに大きな影響を与えましたね。すべてのシーンにも動きを加えることができました。