F1

F1:ワンラップ最速ドライバーは?

© Lotus
F1ドライバーの純粋なスピードは、予選アタックのワンラップに集約される。史上最速のワンラップ・ドライバーはやはりあの伝説のブラジル人なのだろうか?
Written by Jamie O'Leary公開日:
やはりセナこそが1ラップ史上最速のドライバーなのか?
やはりセナこそが1ラップ史上最速のドライバーなのか?
当たり前の話だが、レースではスタート位置が前方であればあるほど勝利の可能性が高まる。しかし、予選でポールポジションを手にするためには我々の想像を絶するほどの極めて高い集中力と勇気が必須となる。そして、おそらくその重圧に耐えられるだけの強いハートも。
F1の歴史において、各時代の最速ドライバーと言われた者たちはみな予選アタックのワンラップで純粋なスピードを見せつけてきた。では、その中で史上最速と呼ぶべきドライバーは一体誰だろうか?
今回、我々はこの質問を4人の識者に尋ねてみることにした。各者の興味深い視点に基づく回答を、是非楽しんでもらいたい。

カルン・チャンドック

Murphy Prototypeを駆ってスポーツカー・レースに参戦中/元F1ドライバー/GP2レースウィナー
答えは簡単だね。アイルトン・セナさ。彼はメンタルを保つために、常にタイムシートのトップに自分の名前が書かれる必要があった。彼は全セッションでトップに立ってポールを獲得すれば、レースが始まる前からライバルたちを戦意喪失状態に持ち込めることを知っていたのさ。このアプローチは、彼にとって非常に上手くいったようだ(実際、セナはポール・トゥ・ウィンを合計28回達成している)。彼は予選でのワンラップにすべてを注ぎ込み、全盛期にはその類稀な集中力をそのまま維持することさえできたんだ。
アイルトンは常に自分が最速だってことを証明する必要があった
カルン・チャンドック
セナとアラン・プロストの両方とチームメイトを経験した唯一のドライバーがデイモン・ヒルであることは知っての通りだけど、以前デイモンはチームメイトとしてのセナとプロストの違いを僕に明かしてくれたことがある。デイモン曰く、セナはステアリングを握るときはいつでも自分が最速だってことを証明する必要があった。一方、プロストはまず最適のセットアップを見つけ、選手権ポイントが懸かった決勝までに最速に仕上げるという方程式を確立していた。たとえば1988年のフランスGPのように、プロストが予選でセナを大差で下した場合、レースでのセナの存在感は限りなく薄くなってしまっていたよね。そういう時のセナはメンタルを乱してしまうのさ。
パワフルなターボマシンLotus 97Tを乗りこなすセナ
パワフルなターボマシンLotus 97Tを乗りこなすセナ

マット・ニール

英国ツーリングカー選手権(BTCC)で3度のチャンピオンを獲得/現在はHalfords Yuasa RacingからBTCC参戦中
天の邪鬼の僕でさえ、アイルトン・セナこそワンラップ最速のドライバーだと認めなければいけないね。とにかくセナの速さは文句のつけようもないほど素晴らしかった。レーシングに対する彼のアプローチ、神秘的なまでの個人主義を考えると、どんな時でも先頭に立とうとした彼の戦い方は客観的にも理解できる。
僕としては、純粋なスピードではミハエル・シューマッハやナイジェル・マンセルも決してセナに劣っていたわけではないと思う。マンセルがセナに勝っていた点があったとすれば、その肝っ玉のデカさかな。それでいて、マンセルには1990年代初頭のアクティブ・サスペンションを搭載したハイテクマシンを乗りこなす意外な器用さもあったしね。当時のマンセルなら、たとえセナとチームメイトになっていても、彼に勝っていたかもね。
1993年のドニントン・パークのセナは、たったワンラップでシューマッハ、ヒル、プロストの3人を鮮やかにオーバーテイクしてみせた
マット・ニール
でも、全体的に考えるとやはりセナこそが最速だね。ドライバーのワンラップでの速さについて考察する時、僕たちはついつい予選でのアタックラップのことばかりを思い出しがちだけど、セナの生涯最高のワンラップはレースで記録されたものなんだよ。今でも語り草になっている1993年ドニントン・パークでのヨーロッパGP決勝1周目さ。セナはたったワンラップでシューマッハ、ヒル、プロスト(3人共にワールドチャンピオン経験者/もしくはその後でチャンピオンになるドライバー)を鮮やかにオーバーテイクし、リードを奪ってみせたんだ。
セナが1993年ドニントンで見せた伝説のワンラップ
セナが1993年ドニントンで見せた伝説のワンラップ

ファブリツィオ・ジョヴァナルディ

ヨーロッパ・イタリア・スペイン・英国の各国でツーリングカー・チャンピオンを獲得/F3000での優勝実績あり
僕は過去20年近くに渡ってツーリングカー・レースを主戦場にしてきたので、ツーリングカーにおjけるワンラップを得意とするドライバーたちを何人か見てきた。でも、F1こそがモータースポーツにおける最高峰カテゴリーだから、F1の予選ラップ最速のドライバーが称賛されるべきだろう。そこで僕の頭の中に浮かぶ名前は、やはりアイルトン・セナだね。
ワンラップの速さでセナに唯一対抗できたドライバーは、ナイジェル・マンセルただひとりだ
ファブリツィオ・ジョヴァナルディ
トップレベルのレーシングドライバーは、誰でもパーフェクトなマシンを手にすればパーフェクトなラップを実現できるものだ。でも、レーシングキャリアにおいてそうした完ぺきなマシンを手にできる機会は非常に稀だよね。セナというドライバーは、決して完ぺきではないマシンでもパーフェクトなラップを可能にした極めて稀有な存在だ。でも、ワンラップに本気でコミットできたドライバーはセナ以外にもうひとりいた。そう、ナイジェル・マンセルさ。1989年か1990年だったと思うけど、彼がFerrari在籍時代にシルバーストンで見せた予選アタックは今も鮮明に覚えているよ。当時はまだコース改修前で、超高速セクションの姿を留めていたストウ・コーナーからクラブ・コーナーにかけて、マシンを文字通り振り回しながらクリアしていくマンセルの姿は衝撃的という他なかった。ただ、マンセルはセナほどの一貫性を持ち合わせていなかったというだけの話さ。
セナが見せた集中力はまさしく類稀であった
セナが見せた集中力はまさしく類稀であった

ベルント・シュナイダー

Blancpain GTシリーズにおいてMercedes-Benz AMGから参戦中/DTMドライバータイトルを通算4度獲得
僕は直接戦ったことのないドライバーたちについて個人的な評価をすることは好まない。だけど、僕はちょうどアイルトン・セナがキャリア全盛期にあった1988年から1990年にかけてF1に参戦していたから、セナこそがワンラップの史上最速ドライバーだと断言できる。もしかすると純粋な速さではミハエル・シューマッハの方が上という見方もできるかもしれないけど、セナの予選ラップが放っていた密度の高さには誰も敵わない。たとえばミハエルはポールポジションに対してそれほど固執していないように思えたけれど、セナは違った。セナは自分自身にプレッシャーをかけ、全身全霊をかけて予選のアタックラップに臨んでいた。あんなドライバーにはそれまで出会ったことがなかったし、それ以降も出会っていない。
マシンをドライブする時のセナは途轍もなく攻撃的だが、普段の彼は思慮深い男だった
ベルント・シュナイダー
彼はその人間性も類稀なものを持ち合わせていた。マシンをドライブする時のセナは途轍もなく攻撃的で、オール・オア・ナッシングを地でいく存在だった。「俺に道を空けろ!」って感じでね。だがそれはプロフェッショナルとして彼が自らに課した規律でもあったんだ。また、セナには、非常に思慮深い人間性も備わっていて、それは彼がマシンを降りた時にだけ目にすることができた。ある年、鈴鹿で行われた日本GPで僕はクラッシュして腕を痛めてしまった。骨をやられたと思うほどの痛さだった(実際は骨折していなかったのだけれど)し、パドックでひとり座り込んでいると、なんとそこにセナがやってきたんだ。当時テールエンダーの弱小チームで走っていた僕の名前をまさか彼が知っているはずもないと思い込んでいたが、彼は「ベルント、痛めた腕の具合はどうだ? 決勝には出場できそうかい?」なんて尋ねてきてくれてさ。感情を表現することが素晴らしいラップを叩き出すために効果的なのかどうかは分からないし、向き不向きがあると思う。セナにはそういうドライブが向いていたんだ。

 

アンケート:ワンラップ史上最速F1ドライバーは?

Ayrton Senna(アイルトン・セナ)
Michael Schumacher(ミハエル・シューマッハ)
Nigel Mansell(ナイジェル・マンセル)
Alain Prost(アラン・プロスト)