A screenshot of Grid, the rebooted racing video game by Codemasters.
© Codemasters
ゲーム
『GRID』:リブート版が狙うアーケードとシミュレーターのバランス
カルトヒットレーシングゲーム『GRID』シリーズが長い冬眠期間を経てリブートされる。他のライバルタイトルとどう差別化するつもりなのだろうか? ディレクターに話を聞いた。
Written by Steven T. Wright
読み終わるまで:5分Published on
前世代の家庭用ゲーム機までは、レーシングゲームは最も人気のあるジャンルのひとつで、カジュアルにドリフトが楽しめる『リッジレーサー』シリーズやシミュレーションに近いゲーミングエクスペリエンスが得られる『グランツーリスモ』シリーズまで、様々なスタイルが存在していた。
しかし、近年はビデオゲーム開発が高コストになったこともあり、レーシングゲームの開発数が減り、黄金時代を支えていた人気シリーズ作品が復活するチャンスを得られなくなっている。
そのようなチャンスを与えようとしているのが、レーシングゲームのベテランデベロッパーCodemastersだ。彼らは2000年代中頃にピークを迎えていた『TOCA Touring Car Championship』シリーズのリブート版『GRID』の開発を進めている。
今作のゲームディレクターを務めているChris Smithは、今作は正統派モータースポーツタイトルというこのシリーズのルーツに戻るチャンスだと考える。そして、新規プレイヤーたちを遠ざけてしまっているリアリズム重視のレーシングゲームの特徴のひとつ「高難度」を取り除いている。
Smithは、今作のCodemastersはリブート前の『Race Driver: GRID』の奥深さフィーリングの再現を狙っていると説明している。『Race Driver: GRID』は誰もがコースアウトすることなく簡単にプレイできるが、マスターするためには慎重かつ丁寧にプレイする必要があった。
また、この作品はシリーズのシグネチャーだった「フラッシュバック」機能を追加して、プレイヤーがレースを台無しにしてしまうミスを犯す前まで時間を遡って再チャレンジできるようにしていたことも話題となった。
このように書くとリブート版『GRID』も簡単なゲームに思えるかもしれないが、E3のプレイアブルデモは、2回目の挑戦でもコーナーを無事に抜けられる保証がない歯応えのある内容だった。Smithが説明する。
「『GRID』はアクセシビリティの高いモータースポーツ・レーシングゲームとして捉えています」
「100%アーケードではありませんが、アシスト/ エイド系をオフにできるオプションを備えているので、シミュレーションゲームに近いレベルまで難度を高められます。カジュアルプレイヤーが気楽に楽しめる一方、シミュレーションファンも楽しめる作品と言えますね」
モータースポーツらしい予想外の展開が楽しめる
モータースポーツらしい予想外の展開が楽しめる© Codemasters
『GRID』シリーズは常にその両者のバランスを求めてきたが、Smithは人によって過去作品群の評価は異なるとしている。Smithが続ける。
「私は『Race Drive GRID 2』は素晴らしいゲームだったと思います。ですが、オリジナルのファンは “楽しめる部分もあるが、全体的にハンドリングに奥深さが足りず、アーケード過ぎる” と評価していました」
「これを受けて『GRID』シリーズの3作目、『GRID Autosport』はシミュレーション寄りに戻したので、モータースポーツファンやオリジナルのファンには喜んでもらえました。今回開発している『GRID』はリブート作品ですので、オリジナルの再現を狙っています」
「モータースポーツの魅力を表現することを強く意識しながら、本格的で深みのあるハンドリングモデルを実装しています。同時にシミュレーターファンだけではなくカジュアルプレイヤーにも楽しんでもらえるゲームを生み出そうとしています」
Smithは、派手なクラッシュよりも品があり美を追求したレーシングゲームはモータースポーツファンにある程度アピールできるが、カジュアルプレイヤーはダイナミックなゲームエクスペリエンスを求めていると考えている。
よって、Codemastersは「数々のレーシングマシンがパレードしながら、ゆっくりとオーバーテイクを重ねてトップを狙っていく」(Smith)ゲームではなく、レーストラック上での実際のレースやチャンピオンシップの進行につれて自然に生み出されていくナラティブ、Smithが言うところの《レーシングストーリー》にフォーカスすることで、展開が読みにくいゲームにしようとしている。
スピード感は健在
スピード感は健在© Codemasters
たとえば、AI操作のドライバーはそれぞれ個性ドライビングスタイルを有しており、プレイヤーが何回もオーバーテイクをすれば敵意を持つようになるように設定されている。
Smithは、Codemastersは現実世界のモータースポーツが備えているカオスな要素を強調して『GRID』を「何が起きるか分からない」ゲームにしようとしていると説明している。
この目標を達成するために、『GRID』にはタイヤが接触したドライバー2人が吹き飛ぶなど、ドライバーが現実世界で起こしそうなミスや、派手なクラッシュやコースアウトに繋がりそうなミスをシミュレートする “コリオグラファー” 機能が実装されている。
またシリーズ過去作品と同じように、『GRID』にもシングルプレイヤーを飽きさせない十分な数のイベントが用意されている。さらにSmithは、リリース後に画面分割のマルチプレイヤーモードの実装も予定していると続けている。
熱心なレーシングファンがダイナミックなチャレンジを提供しつつ、カジュアルプレイヤーにモータースポーツの魅力を教えることになるリブート版『GRID』は、2019年を代表する1本になりそうだ。無事完成までこぎ着けてもらいたい。Smithは最後にこうまとめている。
「僕たちのゴールは、『GRID』をプレイした全員に楽しいと思ってもらうことです。それだけなんですよ」
『GRID』は2019年9月13日にPC・PS4・Xbox Oneで海外版がリリース予定(日本版は2019年7月22日現在未定)。
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