全世界で6500万本も売れているのに日本人が知らないゲーム、 『The Oregon Trail』で遊んでみた!© Porno Suzuki
ゲーム
全世界で6500万本も売れているのに日本人が知らないゲーム、『The Oregon Trail』で遊んでみた!
"ビデオゲームの殿堂"にも選出されたシミュレーションゲーム『The Oregon Trail』携帯機版のプレイレポート!
Written by ポルノ鈴木
公開日:

●なぜ日本人ゲーマーは『The Oregon Trail』を知らないのか?

ニューヨーク州・ロチェスターにある博物館、"ストロング・ナショナル・ミュージアム・プレイ"が発表した、"ビデオゲームの殿堂"というものがある。
『ポン』、『スペースインベーダー』、『パックマン』、『スーパーマリオブラザーズ』、『テトリス』、『ストリートファイターII』と、誰もが知っている超有名ゲーム20本が選出され、栄えある"殿堂入り"とされているのだが、このラインアップの中に、どうにも見慣れないタイトルがある。
それが『The Oregon Trail』だ。
PC版『The Oregon Trail』のパッケージ。
PC版『The Oregon Trail』のパッケージ。
実はこの『The Oregon Trail』、あのアタリの『ポン』よりも歴史が古く、1971年にその原形が登場。
その後もPC版を中心に約40年間移植され続け、累計売上は約6500万本という堂々たる数字を記録している。
では何故、我々はこのゲームのことを知らないのか?
それはこれが、アメリカ初の教育用ゲームであり、アメリカ人の為にのみ作られたものだからだ。

●『The Oregon Trail』の歴史とは?

"オレゴン・トレイル"は19世紀の西部開拓時代に、アメリカ中部から西海岸北部のオレゴン州を目指す開拓者達が通った街道のひとつで、『The Oregon Trail』は半年近くをかけて幌馬車でこの3500kmにも及ぶ道程に挑んだ開拓者達のことを学ぶ、"教材"としてゲーム化したものなのだ。
1971年、『The Oregon Trail』はまだ誕生間もないコンピューターを使ったテキストオンリーのシミュレーションゲームとして登場した。
当時"計算をするもの"でしかなかったコンピュータでゲームが遊べたことで、多くの生徒が熱狂。
1979年にはApple IIに移植され、'90年代に入るとMac版やMS-DOS版も登場。1995年には『Oregon Trail II』も発売された。
PC版『The Oregon Trail II』のパッケージ。
PC版『The Oregon Trail II』のパッケージ。
『The Oregon Trail』は、確かに教材ではあったが、多くの生徒たちにとっては"初めて触れるコンピュータゲーム"であり、「学校でゲームが遊べるなんて!」という大きなインパクトも残した。
そしてアメリカ人の子供たちの大半が"一度は遊んでいる"という事実が、"ビデオゲームの殿堂"入りという結果も生んだわけだ。
言わば『The Oregon Trail』は群馬県民にとっての上毛かるたの様な存在で、これらは教育という体裁の中にあるゲームであり、反復することによる強烈な刷り込みも生まれるので、生涯記憶から消えないのだろう。
ちなみに上毛エリアには"上毛三山パノラマ街道"というものがあるので、『The Joumou Trail』というパロディ作が作れるな、と一瞬だけ妄想した。

●アメリカはやはりどうかしている!

さておき、アメリカで『The Oregon Trail』がそれだけスタンダードな存在というバックボーンを踏まえたにせよ、こんな物(写真)が2018年に発売されるのだからアメリカはやはりどうかしている(褒め言葉)。
『The Oregon Trail』の携帯機版(ハンドヘルドバージョン)。
『The Oregon Trail』の携帯機版(ハンドヘルドバージョン)。
アメリカの玩具メーカー"BASIC FUN"が、大手スーパーチェーン"TARGET"限定でこの『The Oregon Trail』のハンドヘルドバージョンを今春突如リリース
ゲーム内容は往年のMS-DOS版を再現している為、ゲーム本体もクラシックPC風でデザインされており、入力インターフェースもキーボードを再現しているという変態っぷりだ。
内蔵の液晶画面は2.5インチほどだが、移植元となっているのがMS-DOS版なのでこのサイズでも当時の解像度を保ったままグラフィックをしっかりと再現。
スピーカーもフロントに内蔵しており、PSGチックな音を楽しめる。
イヤホンジャックは付いていないが音量調節は可能なので、電車で長距離通勤している人などは、オレゴンまでの西部開拓の道のりを、自身の長距離通勤に重ねて遊ぶなんていうオツなこともできる。

●それでは遊んでみる!

では早速、『The Oregon Trail』がどんなゲームなのかをプレイしながら説明していこう。
まずは自分の職業をチョイス。選べる職業は以下の3つだ。
  • Banker(銀行家)-所持金$1600
  • Carpenter(大工)-所持金$800 ※クリア後のスコア2倍
  • Farmer(農夫)-所持金$400 ※クリア後のスコア3倍
職業選択画面。
職業選択画面。
この3人の違いは、所持金の額とクリア後のスコアボーナスのみ。つまりこれは難易度が上からイージー、ノーマル、ハードとなっているという解釈でいい。
筆者は初めてのプレイだったが、とりあえず迷ったら無難な物を選ぶという家訓にしたがい、Carpenter(大工)を選択。
「♪職業選択の自由~アハハ~ン」を行使したら、今度はネームエントリーだ。
牛が引く幌馬車に乗り、家族でGO WESTする世界感がここで垣間見える。家族たちが心なしか寂しい表情に見えるので、元気が出る名前を付けてやることにする。
続いて旅の出発時期を選択。
西海岸への旅は、1848年、ミズーリ州インディペンデンスの街から始まる。
この出発時期もゲーム展開に影響するようなのだが、正直わからないので"Ask for advice"を選択するも、要約すると「早すぎても遅すぎてもいけない」みたいなことしか言わないので、なんとなく日本の新生活スタートのイメージで4月に決定。
実際これは妥当な選択だったようで、出発時期が遅いと雪に進路を阻まれたりするようだ。
出発時期を選択。
出発時期を選択。
出発直前には、Mattさんのよろず屋旅の支度を調える。ここで買えるのは
  • Oxen-幌馬車を牽く牛
  • Food-食料
  • Clothing-衣料
  • Ammunition-猟銃の弾薬
  • Spare parts-幌馬車の補修部品
の5項目。以下にそれぞれ詳しく説明する。

⇒Oxen-幌馬車を牽く牛

牛は2匹で1セットで売られており、Mattさんは3セット買うことをリコメンド。
このOxen(幌馬車を牽く牛)が移動の鍵を握る存在で、牛が多いほど移動のスピードが上がるし、頭数が多いほど、牛に何か起きても移動に影響が出にくいというわけだ。
Oxen(幌馬車を牽く牛)が移動の鍵を握る。
Oxen(幌馬車を牽く牛)が移動の鍵を握る。

⇒Food-食料

食料は家族達のライフ値だ。
多ければ多いほど長旅のリスクが減るが、幌馬車に積める量にも限界がある。
食料は旅路の途中で狩りをすれば補給できるので、最初にどれだけ積んでいくかの判断が求められる。
ちなみにその内容は小麦粉、砂糖、ベーコン、コーヒーとなっているが、これも史実に基づいた学習要素となっているのだろう。
そして現代のアメリカでも、"IHOP"(アメリカのレストランチェーン)なんかで出てくる朝飯はパンケーキにベーコンがのった物で、それをおかわり自由のコーヒーで流し込んだりするので、アメリカ飯の源流というのは19世紀から変わっていないのかも、という一方的な発見もあった。
食料を購入。
食料を購入。

⇒Clothing-衣料

そして衣料は、RPGで言う所の防具に近い存在だ。
旅の途中では山越えもするので、防寒衣料を持っていないと家族達の体調が悪化してしまう。
ちなみにこの旅は1848年にスタートという設定だが、この年は西海岸でゴールドラッシュが始まった年でもある。
東部や中部に住んでいたアメリカ人達が、命を危険に晒してまで西海岸を目指したのは、黄金と温暖な気候を目指してのことであり、そうした彼らに向けて衣料品を販売していた会社のひとつが、リーバイ・ストラウス社だったりする。
リーバイスの創業は1853年なのでMattさんの店には並んでいないはずだが、とにかく『The Oregon Trail』を遊ぶことで、様々な面でアメリカの歴史に思いを馳せることができるのがわかるだろう。
山越えするので衣料は大事。
山越えするので衣料は大事。

⇒Ammunition-猟銃の弾薬

弾薬は、長い道のりの中で狩りをして、食料調達する為に必要になる。
そしてこの狩りが本作唯一のアクションゲームパートとなるので、ドンパチを積極的に楽しみたい人は余分に弾薬を用意しておくといい。
アメリカの歴史に銃は欠かせない。
アメリカの歴史に銃は欠かせない。

⇒Spare parts-幌馬車の補修部品

幌馬車の部品は、意外と重要な要素だ。
総行程約3500kmという長旅なので、幌馬車はよく壊れる。なので部品をストックしておくのはリスク管理として大事なのだ。
部品は車輪、車軸、牛と馬車を繋ぐくびきと、3要素もあるのが細かい。
旅の総行程約3500km。部品は重要。
旅の総行程約3500km。部品は重要。

●いよいよ長旅へ出発!

旅の準備をしつつ、どれだけ予算を残せばいいのかも最初はわからないが、少しだけ現金を余らせて買い物を終了。
いよいよ出発を決断すると遂にフルカラーグラフィックがBGM付きで現れ、なかなか感動した。
ついに旅が始まる。
ついに旅が始まる。
出発すると、こんな画面(下の写真)に変わって様々なインフォメーションと牛さんと幌馬車が表示される。
移動スピードと食事の量は常に変更可能で、スピードが速いと移動距離を稼げるが馬車の故障率が上がり、食事もたくさん食べていれば健康を維持できるがそのぶん消費量も早いという、メリットとデメリットのせめぎ合いのバランスを上手く取るのが本作の醍醐味だ。
初回プレイなのでとりあえず真ん中の選択をしてしのぐつもりだが、果たしてどうなるか……。
まずはカンザス川を目指す。
まずはカンザス川を目指す。
最初に到達するポイントは、カンザス川。
まだ開拓されきっていないエリアへの旅なので、橋なども整備されておらず、オレゴン街道の旅はちょいちょい"川越え"がヤマ場となる。
見えた! カンザス川だ。
見えた! カンザス川だ。
川の深さや幅などが表示されるなか、浅瀬を探して渡るのか、幌馬車をコーキングして防水性を高め浮かせて渡るか、フェリーを待つか(有料)などの選択肢が出現
とりあえず幌馬車密封ボート化作戦で行くと、見事に渡河に成功した。
幌馬車密封ボート化作戦で川を渡る。
幌馬車密封ボート化作戦で川を渡る。
移動ターンの時に選択すれば、狩りも楽しめる
ここで斜め移動をわざわざ備えたキーボードが本領を発揮
狩猟ゲーム自体はどシンプルな内容だが、ちゃんとシューティングゲームになっており、これが授業中に遊べたのだから、当時のアメリカンキッズ達は相当はしゃいだに違いない。
そして"移動"や"食事"といった根源的な要素と並ぶ形で、銃を使った"狩猟"が入ってくるのも、またアメリカなのだ。
移動中は、様々なトラブルに見舞われる。
幌馬車が壊れたり。幌馬車が燃えたり。
火災ではアイテムを失ってしまうので、余分に物を用意していく必要性を実感。
しかし唐突に道端で放棄された幌馬車の部品を拾えたりもする。
しかし唐突に道端で放棄された幌馬車の部品を拾えたりもする。
どうでもいいが、背景の山々がパタゴニアのロゴに似ている気がする。
仲間が怪我をしたり。
仲間が怪我をしたり。
牛さんが怪我をしたりしつつも、旅は続く。
牛さんが怪我をしたりしつつも、旅は続く。
仲間のひとりがフィーバー? ちなみに英語でFeverとは発熱のこと。
仲間のひとりがフィーバー? ちなみに英語でFeverとは発熱のこと。
『The Oregon Trail』では、怪我や病気との闘いも重要だ。
食事環境が悪くなると、メンバー達は次々と病気になっていく。
なかでも赤痢は厄介で、唐突に表示される"○○は赤痢(dysentery)になった"のメッセージは、『The Oregon Trail』を遊んだ世代にとって定番フレーズになってよくギャグにもされているらしい。
このハンドヘルド版も、パッケージにわざわざそのメッセージをプリントしている。
仲間のひとりが赤痢になった。
仲間のひとりが赤痢になった。
そうこうしているうちに、メンバーのひとりが倒れた。食料が底をつき、状況は悪くなっている。旅に暗雲が立ちこめてきた
仲間のひとりが倒れてしまった。
仲間のひとりが倒れてしまった。
今度は違う仲間がTyphoid(腸チフス)に! 英語の病名にどんどん詳しくなっていく!
次々と病におかされていく仲間たち。
次々と病におかされていく仲間たち。
バタバタとメンバーが倒れていき、最後に残念ながらついにリーダーまで!
ついにリーダーまでもが力尽きた。
ついにリーダーまでもが力尽きた。
唐突に墓標が出てきてゲームオーバーとなった。
ここでゲームオーバー。
ここでゲームオーバー。
『The Oregon Trail』は、じつは死にゲーでもあり、何度も何度も繰り返しプレイするのが前提だ。
アメリカの学校では班を組んでチームでプレイしていたので、班ごとに様々な方法で旅を成功させる為の検討をしていたという。
つまり『The Oregon Trail』は、歴史を学ぶというストーリー面だけでなく、リソースの活用とリスクコントロールという、その部分を攻略していく面白さが凝縮しているゲームでもあったのだ。
クリアすればスコアも出ることから、授業教材という存在を超えて攻略が進み、インターネット以前の時代に攻略情報が人づてに口コミで伝播。
この動きは実は西部開拓時代にも実際にあったそうで、見事に西海岸に辿り着いた人達が、その知恵や危険情報を伝え歩き、その情報は蓄積、共有され後続の人達の役に立ち、この長旅の成功率が上がっていったそうだ。
『The Oregon Trail』はアメリカ史を学ぶためのものとして、長期的計画を達成するためのタスクを学ぶためのものとして、侮れないスペックを秘めた作品であることを、このハンドヘルド版で偶然にも教えられてしまった。
このハンドヘルド版は手に入れづらいが、『The Oregon Trail』自体は今でも様々な方法でプレイ可能なので、是非一度プレイしてほしい。
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