いかにも街に馴染むことのない、異様なまでの佇まい。
© Maruo Kono
Motoring

HF × G

東京の街にたたずむ、6つものタイヤを連ねるGクラス。ある平日の夕方、そんな特別な一台に乗って藤原ヒロシさんとふと都心クルーズに出かけた。
Written by 遠山宜秀
読み終わるまで:7分公開日:
HF x G
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ヘリコプターからパラシュート付きで落下させ、着地してそのまま砂煙を撒き散らしながら荒野を走り抜ける。そもそも軍用車として誕生したメルセデス・ベンツGクラス、本来の使い方はそれこそが正しい。
けれども今、世界でもっとも多くのGクラスが走る場所といえば、荒れ果てた大地ではなく、ここ東京だろう。曲線美の欠片も持たない真四角なフォルム。ドアハンドルやサイドステップなど、そのディテールはどこまでも無骨で鈍重だ。けれど、そんな一台が東京の街を走ると、たまらなくカッコいい。高層ビルが立ち並ぶ東京ストリートを、Gクラスというクルマは、翼を得た鳥のように生き生きと駆ける。
こんなことを書くと本人が嫌がるのは百も承知だけれど、“東京でGに乗る”というスタイルを加速させたのは藤原ヒロシさんだと筆者は勝手に思っている。ホイールなどすべてをブラックアウトするスタイルを採り入れ原宿・青山近辺を中心に一大ブームを生み出し、ボディをホワイト&フェンダー類をブラックで塗り分けるツートンを採り入れれば、数年後、瓜二つの限定車がメルセデス・ベンツから発売された(果たしてそれはただの偶然か?)。
だから、とある日の夕刻。特別なGクラスに乗って藤原ヒロシさんを迎えに行った。『メルセデス・ベンツG63AMG 6x6』。全長5.9m、車両重量3.9t、車両価格8000万円、そして車輪の数は6個。まさに狂気の沙汰としか思えない一台に乗り込んで、藤原ヒロシさんは何事もなかったかのように自身でステアリングを握り、アクセルを踏み込んだ。
「ちょうどスニーカーが見たくて。原宿までドライブしてもいい?」
そうして、一風変わった東京ドライブがはじまった。
HF x G
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━━公共バスのように巨大なクルマですが、まったく普通に運転されますね。
藤原ヒロシ(HF) 普段からGクラスに乗っているのでまったく違和感がないですね。さすがに普通のGクラスとは比べ物にならないほどに大きいですが、こうして都内を走っている分には違和感がありません。そこらのコンビニにちょっと寄っていきたいくらいに普通(笑)。内輪差が気になるわけでもないし、6輪だからって運転している感覚が異なるっていう感じもないのですね。拍子抜けするくらいに快適です。
━━突然6輪のGクラスに乗って迎えにいきました。このクルマを見たときに最初どう思われましたか?
HF 「僕が乗るクルマじゃないな」って思いました。とても派手だし、何より6個もタイヤがついていても邪魔ですし(笑)。車内で運転しながらタイヤ空気圧を調整できるスイッチがあるのに驚いたんですが(※オフロード走行時、どんな路面状況にも対応できるよう常に最適な空気圧に設定可能)、そんなことはいいから3列目のタイヤを“ガチャン”と瞬時に格納して全長が短くなるスイッチが欲しい(苦笑)。
HF x G
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━━そもそもヒロシさんとGクラスの最初の出会いとはどんなものだったのでしょうか?
HF ずっと昔からカタチが好きでした。当時、まだ東京でも滅多に見ることがなくて、免許を取ったあとにすぐにディーラーに行ったんです。そうしたら「あんなトラックみたいなクルマ、絶対にやめといた方がいい」とみんなに止められて。だからそのときは他のメルセデスを買いましたね。でも、G300というグレードを買って乗るようになり、結局それから今まで、もう6台ものGクラスを乗り継いでいます。
━━Gクラスの魅力ってどんなところにあるのでしょうか?
HF 運転していてとても楽しいですよね。今のクルマってどれも大きくなってきてしまっていますが、Gクラスはちょうど良いサイズで本当に扱いやすい。どこでもスイスイすり抜けられる感じ。その意味では、この巨大なG63AMG 6x6は、本来のGクラスの良さをスポイルしていますね(笑)。
━━ヒロシさんはここ何年かレンジローバーにハマッていました。でも、また最近Gクラスに戻ってきましたね。どんな心境の変化があったのでしょうか?
HF 久々にGクラスに乗ってやっぱり運転が楽しかったですね。Gクラスって“モビルスーツ”みたいなクルマ。身体に着ている感じと言うか。Gクラスがぴったりと身体にフィットして動きやすい服だとしたら、レンジローバーは少し大きめで着心地の良いスーツという印象。
HF x G
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━━万が一、ヒロシさんがG63AMG 6x6を買うことになったとします。どんな仕様にしますか? それに乗ってどこに出かけますか?
HF ボディ色はブリティッシュグリーンとかネイビーとか選んでみたいですね。こんな馬鹿げた一台だからこそ敢えてイギリス高級車的に仕上げてみると面白そうです。意外に乗り心地がよくて長距離運転が楽だから、ライブツアーにも良いのかもしれません。ギターをトラックの荷台に載せて、日本全国を走り回ったら楽しそうです。
━━確かに普段の全国ツアーも、御自身のGクラスで、自身の運転でよく移動されていますね。
HF 長距離運転が苦にならないんです。好きな友達を乗せて、好きな道を走って、好きなときに休んで、好きな音楽を聴いて。そんなクルマの中で過ごす時間が好きですね。あと、ボクはどんなクルマでも買ったらしっかりと乗りたい。たとえ希少なスポーツカーであっても普通にコンビニに行くのに乗るし、買った初日に故郷の伊勢まで長距離ドライブしたりします。
━━個人的な感想ですが、改めてGクラスって凄いクルマだと改めて感じました。3ドアのショート、5ドアのロング、それぞれにカブリオレがあって、XXLというリムジンタイプもあります。そして究極の存在とも言える6輪までついに登場しました。その誕生から40年弱過ぎている訳ですが、基本骨格を変えることなく、ここまで進化を遂げているクルマなんて他に一台も存在しません。
HF 確かに。そして、今回はじめて乗らせていただきましたが、やっぱり6輪は強烈な存在ですね。別に車両価格が8000万円するクルマって他にもありますが、そのどれもがレーシングカーのように速かったり、ファーストクラスのように快適で贅沢だったり、投資するだけの価値を備えています。でも、G63AMG 6x6を東京で乗ってみても、そこには苦労しかない。かといって所詮トラックだから、対外的にまさかそんな高級車に見えるわけでもない。まさに“究極の無駄”。この一台をチョイスするなんて、オトコの中のオトコにしか出来ない決断だと思います。
原宿でスニーカーをチェックし、銀座で藤原ヒロシさんがプロデュースする新ショップ「THE PARK・ING GINZA」に立ち寄り、最終的には青山のコンセプトストア「THE POOL Aoyama」(期間限定のため2016年3月にクローズ)にまで足を運んだ今回の東京クルージング。最初は軽く一周の予定が、気がつけばかなりのロングドライブになっていた。
「結構速いね、コレ。G 65 AMGほどじゃないけれど」
そういって軽くアクセルを煽り、東京を走り回るヒロシさんの悪戯な笑顔が印象的だった。
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Profile
藤原ヒロシ
音楽プロデューサー。ファッションデザイナー。ストリートカルチャーのカリスマとして世界で活躍する。スポーツカーやSUVを複数台所有するほどのクルマ好きの一面も持つ。上写真はドイツのAMGがオフィシャルで発行する写真集の様子。各ラインナップごとに世界から選ばれた1名のイメージリーダーの写真があわせて掲載されるが、Gクラスに関してはご覧の通り藤原ヒロシ氏が登場する。
※車両協力:Car Guy 木村武史