僕らの時代は日本語の音楽を聴くのはダサイと思っていた
藤原 のんさんが音楽活動を始めたことは知っていましたが、音楽には前から興味があったんですよね?
のん 中学生の時から友だちとバンドを組んでいました。地元にマサヤンという子供たちに楽器を教えてくれる優しいおじさんがいて、ギターを教えてもらって、夢中になっちゃって。
藤原 バンドでやっていこうとは思わなかったんですか?
のん バンドは続けたかったんですけど、事務所に入ってお仕事を始めたし、高校からは東京に来たので、バンドは自然消滅して。
藤原 のんさんが中学の時は何が流行っていたのかな?
のん 女の子のバンドだとチャットモンチーさんやWhiteberryさんが人気があって、私はGO!GO!7188が好きでコピーをしてました。
藤原 僕も中学の時は誘われてバンドでギター・ヴォーカルをやってましたけど、あんまり乗り気ではなかったな。パンクっぽいのをやってました。
小学校の時に無理矢理エレクトーンを習わされて、そのおかげでコードだけは理解できたのは良かったんですけどね。
洋楽は聴いていなかったの?
のん 洋楽はあまり知らないです。高校生の時とかは、レディオヘッドとかを聴いてました。
藤原 僕らの時代はみんなビートルズは通っていたけど、そういうスタンダードがないんですね。僕らは日本語の音楽を聴くのはダサイと思っていたから。
のん 育った環境もあると思いますけど、洋楽は身近ではなかったですね。
藤原 モーニング娘。に入りたいとか、アイドルになろうとは思わなかった?
のん モーニング娘。さんは好きでしたけど、最初はティーン雑誌のモデルになりたかったんです。
藤原 その夢はあっという間に叶ったんですね。
のん そうですね。ラッキーでした。
藤原 そこから女優さんになって注目されて。でも、こういう音楽をやっていると誤解されたりしませんか?
のん 女優としての仕事しか見たくないみたいな人はいますよね。だとしたら女優としての仕事だけ見てくださればそれで良いですけど、今はのん自身がもっと面白くなってのんが表現するものを楽しんでもらえるようになりたいと思っています。
矢野顕子経由で知った忌野清志郎の魅力
藤原 最近、好きなミュージシャンはいますか?
のん 忌野清志郎さんが好きなんです。去年、RCサクセションの「I LIKE YOU」をカヴァーさせていただいて、CHABO(仲井戸麗市)さんにギターを弾いてもらったんです。
藤原 僕はRCなら初期、CHABOさんは古井戸が好きなんですよ。僕にとってのCHABOさんは、好きだから近くに寄れない遠い存在ですね。
のん 「I LIKE YOU」のレコーディングの時も、CHABOさんとはソファーの隅と隅でお話しました。
藤原 のんさんも人を寄せ付けないタイプ?
のん そんなことないですよ(笑)。言葉でコミュニケーションをとるのはあまり得意ではないんですけど。
藤原 清志郎さんとは会えなかったんだよね。
のん 残念ながら。わたしは矢野顕子さん経由で清志郎さんを知って、好きになったんです。この前の「のん、KAIWAフェス」では、堀込泰行さんと「デイ・ドリーム・ビリーバー」を歌わせてもらいました。
藤原 ライブは楽しい?
のん 楽しいです。藤原さんはライブは?
藤原 最近はちょこちょこ。この前のツアーはCHAIという女の子バンドのドラムとベースにお願いしたんですけど、僕はツアーによってバンドのメンバーが違うので、色んな人を一緒にプレイするのが面白い。
のん わたしは初めてのライブが『WORLD HAPPINESS 2017』だったので、高橋幸宏さんのバンドでステージに立ったんです。いきなり大御所の方ばかりで、今思い出しても緊張してくるくらい。
藤原 僕はずっとそういう大御所とは縁がなくてインディペンデントで来たから。昔、竹中直人さんと高井戸というフォークデュオを組んでライブしたことはあったけど。
のん 色んな方と組んで音楽をするのって、どんな感じなんですか?
藤原 音楽って音を鳴らすと上下関係とかなくなるじゃないですか? それにプロの上手なミュージシャンとやると楽でしょ?
のん 楽ですね、確かに。
藤原 一人とか二人だと自分がさぼれないからね(笑)。
24歳の頃は、カリスマDJでした(笑)
藤原 クラブとか行かないんですか?
のん 行ったことないです。女優とかやってると、そういう場所に行くと周りがザワザワするし。DJの現場とか観てみたいんですけど。
藤原 僕は13歳の時に初めて連れて行ってもらった(笑)。いま、京都の大学で授業を持っているんだけど、そこの学生もクラブに行ったことがない人がほとんどなんですよ。
のん 大学ではどんな授業をしているんですか?
藤原 授業といっても、生徒とお茶飲んで話しているだけで、僕の若い頃の話をしたり、この前はチケットキャンプ問題について否定派と肯定派に分かれてディスカッションしたり。
のん ディベートは白熱しましたか?
藤原 そうでもない(笑)。大学でも生徒から先生と呼ばれたことがなくて、ヒロシさんと呼ばれているし。
のん ポピュラー・カルチャー学部ってなんか面白そうですね。
藤原 生徒にいつも言っているのは、クリエイターになりたくて大学に来ている時点ですでに落ちこぼれていると。僕は大学行ってないし、ポピュラー・カルチャー学部で教えている人たちも大学行ってない人が多い。
それよりクラブに行ったり、色んな場所で友だちや人脈つくった方がいいと思うんだけど。
のん わたしも一時期美大に通ってみたくて、オープンキャンパスに行ったりしたんですけど。
藤原 僕は大人になってから大学で心理学を聴講していたんですよ。のんさんは、今いくつ?
のん 24歳です。藤原さんが24歳の頃は?
藤原 カリスマDJでした(笑)。
のん わたしは学校の勉強は苦手だったんですけど、今から勉強しても遅くないですか?
藤原 遅くないですよ。僕も今の方が勉強好きかもしれない。本や新聞を読んで世の中の動きを知ったり、今だから分かる歴史を学んだり。
インディペンデントで生きるコツ
のん 「のん」名義になってから、興味が湧いたら色んなことに挑戦していこうと思っているんです。
藤原 僕もそうでしたよ。若い頃から色んなことに興味があって様々な活動をしてきたんだけど、音楽だけやってる人や役者一筋の人から見ると片手間でやっていると思われがちじゃないですか?
僕は若い頃からそういう偏見と闘ってきたというか、葛藤があったんだけど。
のん 「私はこれでいいんだろうか?」と思うことが時々ありますけど、冷静になってみると、やりたいことをやっているからいいやって。その葛藤をどうやって乗り越えられたんですか?
藤原 僕は常に誰からも相手にされてないなと思って生きてきた気がする。DJを始めた頃もそうだったし、音楽も、ファッションにしても、上の人にはほとんど相手にされなかった。今は時代も変わって、随分良くなったと思うけど。
「のん」になって環境は変わった? いまはインディーズですよね。
のん はい。インディーズでやっていくコツとかありますか?
藤原 インディペンデントに生きるコツか。確かにあるかもしれない。先ずはあまのじゃくになりきること。人と違うことをやって、立ち止まることもあるけれど前に進む。
のん 不安になったことは?
藤原 いっぱいありましたよ。でも、不安な時の方が能天気な時より深い歌詞が書けたり、クリエイティブになるかもしれない。時間が解決することもあるしね。
のん なるほど。
藤原 僕は残された時間が少なくなってきたから、悩むことに時間をかけるより、今のうちにやるべきことやりたいと思うようにはなってきたかな。のんさんはまだこの先に楽しいことがいっぱいあるでしょ?
のん 今年はアルバムをリリースして、ツアーをやってみたいですね。あと絵を描いたり、少しずつ自分の世界を広げていきたいです。
藤原 面白そうなこと、やっているじゃないですか。やりたいことがある人は、どんどん自分が前に出て行けばいいし、後ろ盾がなくても自由に発信できるようになってきた時代だから。
続けていくことが重要だと思う。特に人に認められたいと思うなら。僕は何かの目標に向かって進んできたのではなく、その時、面白いと思ったことを現在進行形で続けてきた。「やりたいことは何ですか」と聞かれた時点でもうすでにやってるんですよ。
のん 素敵です。励みになります。
藤原 あとは自分から外に出て行ったり、ぜひクラブ・デビューしてください(笑)。
のん はい。今日は面白い話が聞けて刺激になりました。
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スタイリスト:山口絵梨沙
ヘアメイク:菅野史絵
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hiroshi fujiwara / slumbers live 2018 Powered by Farfetch
2018年2月11日(日)ROOMS(福岡)
2018年2月28日(水)darwin (仙台)
2018年3月1日(木)青山CAY
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のん 2ndシングル『RUN!!!』
2018年1月1日発売/KAIWA(RE)CORD
のん ファースト・アルバム『スーパーヒーローズ』発売決定!
本人のオリジナル楽曲に加え、矢野顕子、尾崎亜美、高橋幸宏らが楽曲を提供。
5月上旬発売