HIROTO
© Kazuki Miyamae
スノーボード

狙うは7回転!? 荻原大翔が見据えるネクストステップ

2022年に6回転(BSクイントコーク2160)、2025年に6回転半(BS2340メロン)を世界で初めて成功させ、スノーボード界に衝撃を走らせた荻原大翔。彼の練習場所である屋外人口施設の東北クエストで、そんな高回転トリックについてや今後の話を訊いた!
Written by Keisuke Honda/ Edited by Hisanori Kato
読み終わるまで:9分Published on
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ビッグエア/スロープスタイル
2005年7月19日生まれ/茨城県牛久市出身
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気持ち的には来年のミラノで成功させたい!
ーーいまのスノーボードの成長速度ってものすごいですよね。あっという間に記録が更新されていく状態というか。
ヒロト そうなんですよ。俺が2022年に決めた6回転もいまでは飛べる人が何人か出てきて。
ーー誰も飛べなかった高回転トリックが次々とクリアされていく理由ってなんなのでしょうか?
ヒロト 人って何かを追いかけているときのほうが成長スピードが早いと思うんです。だから、誰かができたなら自分もできるはずって思うことで意外とやれちゃう、みたいなところはあって。
ーーでも6回転や6回転半となると、いくらプロとはいえ飛べる人は限られますよね。
ヒロト そのぐらいになると辿り着けない人も多くいます。
 

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ーーヒロトは6回転や6回転半を成功させるまでにどんな辛さを味わいましたか?
ヒロト どちらも前例がなかったので「やっぱり無理なのか」と限界を感じやすくなっていて。特に6回転のときは肉体よりも精神のキツさを強く感じました。
ーーそんななかで、次は7回転を目指すそうですが。
ヒロト はい! 誰よりも早く成功させたいと思っています。とりあえずやってみて、できなかったらしょうがないけどやらずに諦めるのは嫌なので。

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ーースノーボードに慣れていない場合、“半回転だけの差”と思う人もいそうですけど、その半回転にはとてつもなく大きな差があるわけですよね?
ヒロト 6回転の成功から6回転半の成功まで3年近くかかりましたし、5回転半から6回転までも同じぐらいかかったので、簡単な話ではないですね。
ーー単純計算だと、7回転を成功するのはまた3年後の2028年ってことに......?
ヒロト 気持ち的には来年あたりに成功できたら最高なんですけど(笑)。そううまくはいかないと思っています。
ーーできる、できないの差はどこにあると思いますか?
ヒロト 決めたいって思いが強くあるかどうかですね。6回転を成功させたとき、初めて世界初の気持ち良さを知って。「次も自分が決めたい」って思いが強かったから6回転半もいけたんだと思います。

やっぱり、世界初のインパクトなら7回転が最強
 

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ーー先ほどの練習では5回転半を飛んでいたとコーチから聞きました。でもあれが何回転のトリックなのか、回転が早すぎてわからなくて。
ヒロト プロのライダーですら正確にわからないときがあるぐらいですからね。
 

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ーーえ!? プロでもわからないケースがあるんですか?
ヒロト 俺が6回転半を決めたX Gamesの時は、ライダーたちの間で「この大会なら大体これぐらいのトリックでくるだろう」って予想がつく舞台でした。だけど、もしそれを動画でいきなり観せられたらわからない人もいると思います。
ーーそうなんですね。でも飛ぶのも観るのも難しいトリックが成功した秘訣って......?
ヒロト 6回転半は回転数が違うだけで、5回転半や4回転半と着地の形が似ているんです。だから俺は「あれよりも何回転多い」ってイメージで飛びました。

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ーー本番で成功させるためになにか特別な練習方法を試したりしましたか?
ヒロト 特になくて、6回転や6回転半の練習自体あまりしないです。リスクが高いし疲れるので(笑)。練習では4回転から5回転半ぐらいまでですね。
ーーほとんどぶっつけ本番じゃないですか! ライダーの感覚ってすごい......。ちなみに体重が軽いほうが有利とかは?
ヒロト うーん。俺は高く飛ぶことよりどうやって早く回るかを考えていて。そのためには飛び出しの瞬間に地面を蹴るパワーが必要だから、体重が軽いから有利っていうことでもないと思います。
ーースノーボードのトリックに横回転と縦回転を組み合わせる“コーク”ってあるじゃないですか。
ヒロト はい。
ーーヒロトが成功した6回転半は横回転で、さらに縦回転が加わるコークとなると難易度は当然高くなりますよね。
ヒロト そうです。コークも回転数が増すほど難しくなります。
ーーということは、6回転半のコークを成功できれば高ポイントがもらえると思うんですけど、そっちはいかずに7回転を目指す理由は?
ヒロト たしかに6回転半のコークを決めればポイントは高いけど、俺がすでに6回転半を飛んでいるから世界初としてのインパクトは7回転より弱くて。それに、出来るライダーはまだいないと思うしリスクも半端じゃないんですよ。
ーーなるほど。コークの難しさが理解できました。
ヒロト ポイントだけを意識するなら6回転半じゃなくて6回転の強いコークを飛べばいい。でも俺はみんなが絶対に驚く7回転に挑みたいんですよ。

金を獲って話題になってこのシーンの間口を広めます!
ーー初歩的な質問ですが、スノーボードのジャンプトリックって飛び出しと着地だとどちらに気を配るものなんですか?
ヒロト 飛び出しも大事ですけど着地ですね。着地でミスって頭を打つと衝撃で脳震盪を起こしてしまう可能性があって危険です。自分も過去に3回ぐらい意識が飛んだことがあります。

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ーータイミングを間違えるとそんなことに......。ジャンプ台の高さも大会によって違いますよね?
ヒロト そうです。X Gamesのときなんてジャンプ台の飛距離が25mぐらいあって、学校のプールのサイズとほぼ同じですよ(笑)。
ーー子どもにも伝わりやすいデカさですね(笑)。大人ですら「これを飛んでいるんだ」って驚いちゃいますよ。
ヒロト 実は回転しているときってライダー本人の視界はほとんど見えていなくて。感覚だけで何周目かをつかんで、着地ギリギリまで踏ん張ってるんです。
ーーなんてスリリングな世界!

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ヒロト スノーボードってトリックがわかりにくいかもしれないけど、ビッグエアなら高さがあって見た目も派手な分、誰が観ても楽しめると思います。
ーーまだ観たことがない人はぜひ観てもらいたいですね! 今後さらにスノーボードの間口を広げていくために、どんなことが必要だと感じますか?
ヒロト スノーボードをやっている子どもが増えていたり、着実に広まっている印象はありますけど、やっぱり大きな大会で日本人が金メダルを獲得してもっと存在を知ってもらうことが大事だと思います。
ーーたしかにスーパーキッズと呼ばれる子たちが大活躍しています。
ヒロト スノーボードはメジャースポーツとまだまだ距離があります。街じゃできないし雪山まで遠かったり。なので活躍する選手の姿やライダーたちが楽しそうに滑っているところを見てもらい、「自分もスノーボードがしたい」って思う人を増やしていきたいです。
ーー今後、ヒロト自身が目指す姿は?
ヒロト 2026年のミラノを除くと、具体的なことは特に考えていなくて。でも、楽しめるうちはずっと続けていきたいし、大きな舞台で活躍してこれからの子たちの憧れになりたい気持ちもあります。

ビッグエアとスロープスタイルで圧倒的な存在になりたい!
ーーヒロトはすでにスノーボード界のヒーローですけどね(笑)。日本国内で力のある次世代が育っていますし、ますます激戦になっていきそうです。
ヒロト そうなんです。でも俺はまだまだ負けませんから!

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ーー負けず嫌いが出ちゃってます(笑)。
ヒロト 負けず嫌いが強すぎるせいでミスを起こしている可能性があるってコーチとも話したばかりでした(笑)。でも、この性格だからビッグトリックに成功した可能性もあって。負けん気と冷静さのバランスが今後の課題です!
ーーここ一番の勝負強さはヒロトらしい部分ですから!
ヒロト 自分もそう思うようにしています。だから開放するときはしっかりと解放して、閉めるときはきっちりと閉める。その使い分けができるようになったら最高です。
ーー今後、私たちがヒロトの活躍をチェックするならどの大会がおすすめでしょうか?
ヒロト 色々とありますが、やっぱり一番は年末から始まるワールドカップですかね。この大会を観れば2026年に向けていま誰の調子が良いかなどもわかるので、ぜひたくさんの人に観てもらえたら嬉しいです!

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ーーそういえば、ビッグエアだけではなくスロープスタイル(※)の大会にも出場していますよね? 今後も両軸で活動している予定ですか?
  • (※)スロープスタイル......スノーボード競技のひとつで、複数設置された人工の障害物(レール、ボックス、ジャンプ台など)を滑り降りながら技を競い合うスリースタイル種目。
ヒロト 目標としてはもっとスロープスタイルを頑張りたい気持ちがあります。
ーーそれはなぜですか?

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ヒロト スロープスタイルはトリックの構成などスノーボードのスキル全般が試される種目だからです。
ーージャンプで魅せるビッグエアとはまた違う能力が必要なんですね! でも、ビッグエアとスロープスタイルの両方で活躍している選手っているんですか?
ヒロト 両方が強い選手は少なくて、どちらかに集中するのが基本だと思います。仮に大会に出場して2種目も1位を獲る選手が現れたらそれは最強の存在と言っていいです。
ーーぜひ最強を目指していただきたいです!
ヒロト ビッグエアでもスロープスタイルでも結果を出して、最強のライダーとして名を残したいと思います! そうすればもっと注目を浴びるだろうし、シーンの間口を広げることにも繋がると思うので。
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