すでにプロシーンに影響を与えているソンブラ© jbranscombe
11月頭にニューヒーローのソンブラが実装されたあと、Blizzardは再び『オーバーウォッチ』のメタに変化を加えるべく、待望のシンメトラの大幅なデザイン変更を行った。
シンメトラの変更は、まだプロレベルではインパクトを与えていないが、ソンブラと、彼女の実装に合わせて改良が行われた数人のヒーローは、徐々にハイレベルなプレイヤーの手によって、そのポテンシャルがフルに引き出されつつある。
そこで、シーズン2が無事スタートした今、プロレベルのチーム編成にどのような変化が起きたのかをチェックし、ソンブラの実装と、それと同時に行われた他のヒーローの弱体化と強化がプロレベルのメタにどのような影響を与えているのかを調べてみることにした。
まずは、時の人、ソンブラから見ていこう。彼女はまだ実装されたばかりだが、プロプレイヤーたちはすでに彼女を積極的に使い始めている。現時点では、彼女への評価は割れているが、ライブサーバーに実装された最初の週に開催された韓国のトーナメント、OGN Apexではかなりの対戦でソンブラが使用された。
最初に彼女を使用したのは、Lunatic-HaiのEscAだった。彼はハックで会場を沸かせることはなかったものの、Mighty Storm戦ではアルティメットのEMPを見事に発動させ、ルシオのサウンドバリアを無効化していた。しかし、Lunatic-Haiの編成は、敵の前線の後方に回り込むソンブラをサポートするのに最適な編成とは言えなかった。
しかし、ソンブラのポテンシャルはすでに数多くのプロプレイヤーに認められているため、彼女を活かすチーム編成が生まれるのは時間の問題だろう。実際、Alienware Monthly MeleeでのMisfits対LDLCでは、Misfitsは見事なチーム編成でHollywoodマップでの先制に成功した。Hollywoodはチョークポイントの突破が難しいマップだが、そこさえ突破できれば、敵の裏を取れる選択肢が数多く手に入る。よって、Misfitsも敵の裏を取り、ソンブラを活かすための機動力重視の分かりやすいチーム編成を採用していた。
ウィンストン、ゲンジ、トレーサーがDPSで仕掛け、ルシオが機動力を活かして逃げ回りながら仲間を回復し、後方からアナが支援するという彼らのプレイは、下の映像で確認できる通り、非常に上手く機能していた。映像の26分20秒を見れば、我々が何を言おうとしているのかが理解できるはずだ。しかし、このゲームの戦術は日進月歩で進化しているため、HollywoodやLijiangTowerでただ彼らを手本にしただけの読みやすい戦い方を続けるのであれば、カウンターがすぐに編み出されるだろう。
実装後1ヶ月間のピック率こそ低かったものの、ソンブラほどスピーディにプロレベルのプレイに起用されるようになったヒーローは多くない。たとえば、アナも実装当初はその使いやすさが中々気付かれなかったため、最初はどのチームも使用するのをためらっていたが、パッチで強化されたあとは、急速にプロシーンで最も多用されるヒーローのひとりになった。この結果、再び調整が行われ、ナノ・ブーストが弱体化されて移動速度が向上しなくなると、ピック率が多少下がることになり、更には彼女がブースト対象にしていたヒーローも入れ替わることになった。
現在では、ナノ・ブーストされたゲンジやラインハルトに困るチームはいなくなっている。アナのナノ・ブーストは、スピードアップを必要としないヒーローをブーストさせるために使用される傾向が強くなっているのだ。その、新たなナノ・ブースト対象の代表と言えるのが、射撃精度がやや弱体化されたもののダメージ値が上昇したソルジャー76だ。射撃精度が下がり、弾丸が拡散するようになったソルジャー76だが、タクティカル・バイザーがオートエイムを提供し、ナノ・ブーストがバイザー起動時のマガジン数を増やしてくれるため、彼とアナは『オーバーウォッチ』の新たな “話題のふたり” になりつつある。
一方、そのカウンターとして、D.Vaが強化された。D.Vaはメックのヘルスが100増加し、射撃中の移動速度も増加したが、プロプレイのメタにおける “三すくみ” の維持においてより重要と言えるのが、ナノ・ブーストされたバイザーにカウンターとして確実に機能するディフェンス・マトリックスだろう。このような微々たる変更は、ヒーロー自体の調整が与える影響の外側に位置するメタに波及効果的な形で変化を加えている。
Geoff GoodmanとBlizzardが今後も『オーバーウォッチ』をベストな状態に保っていければ、このゲームのプロシーンも健全に保たれるだろう。