Gustav Tønnesen – Front Board
© Rich West
スケートボード

プロスケーター:誕生の歴史と実情を学ぶ

スケートボードで生計を立てることに興味を持ったことはないだろうか? プロライダーの誕生の歴史や収入、現状などを簡単に解説する。
Written by Zane Foley
読み終わるまで:5分公開日:
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黎明期

現代と同じように、1960年代前半に登場した黎明期のスケートボードブランド群も自分たちのボードを売ってもらうためにプロスケーターたちを必要としていた。
当時のブランド群は度胸と才能に溢れるティーンエイジャーたちを集め、プロコンテストに送り込んでいた。スケートボードシーン全体が進化しても、依然として彼らにとってはボードを売ることがすべてだったが、やがてマーケティングに目を向けるようになり、スケーターの価値はスキルスタイル、そしてコンテストで勝利できる能力になっていった。
Z-Boys時代を通じて、コンテストはエンドースメント契約の中心に位置し、スケートボードおよびサーフィンの雑誌の写真広告は補助的なマーケティングツールだった。しかし、1980年代までにこの2つの立ち位置が逆転する。
撮影内容をチェックするクルー

撮影内容をチェックするクルー

© Percy Dean

02

価値の変化

雑誌とビデオフッテージでの露出がコンテストよりも重視され始め、スケーターたちはスポンサーのためにコンテストでメダルを獲得する能力ではなく、フルレングスのビデオプロジェクトや『Skateboarder』『Big Brother』『Thrasher Magazine』に掲載される写真やビデオの数で判断されるようになった。
スケーターたちは自分たちのブランドとスケートボードに自分がコミットしていることをフッテージの数(とそのクオリティ)で証明するようになった。
ブランド群は、コンテストに来場したスケートボードファンが自社ブランドを背負ったスケーターたちを見てくれることを期待する代わりに、世界中のティーンエイジャーたちがVHSビデオテープや雑誌で何回も繰り返し見てくれることを期待できるようになった。
多くのプロスケーターにとっては、業界の人物に存在を気付いてもらうことがすべての始まりになっていった。
それは、トニー・ホークに見出されたアンドリュー・レイノルズジェイミー・トーマスに見出されたエリッサ・スティーマーのような望外で偶然の出会いのときがあれば、フロリダで開催されているTampa AMのようなコンテストのときもあった。
Tampa AM は、2007年にレッドブル・アスリートのフェリペ・グスタヴォが優勝して一気に注目を集めたことで知られるコンテストだ。グスタヴォのそのあとの活躍は誰もが知るところだろう。
03

プロまでのルート

ブランドはスケーターを見出すと、そのスケーターにブランドのアイテムを送付するようになる。そして、スケーターはその送られたアイテムを身に着けてフッテージや写真撮影に臨み、それが終わると、ブランドが "最新のアマライダー" としてそのスケーターの写真とプレスリリースを雑誌へ送る。
このあとは、ブランドのアイテム数百ドルがスケーターへ毎月送られるようになり、ブランドが所有するチームに馴染めるだけの才能が備わっている場合は、ツアーへの参加を要請される。
そして、ブランドとの関係を強固にすることができれば、チームへ正式加入し、さらに順調に進めばブランドから “プロライダー” として扱われるようになる。プロライダーになったあとは、自分の名前がボードにプリントされたり、プロコンテストへの出場権が得られたりするようになる。
スケーターがプロスケーターになるまでのルートは時代とともに変わってきたが、スケートボードシーンと仲間たちからの認知と尊敬を得るというゴールは変わっていない。
正直に言わせてもらえば、プロスケーターになるという夢を持ってスケートボードに乗ったことがある人全員が、このゴールこそがスケーターの情熱の中心であり、スケートボードをスポーツとしてだけではなく、業界および経済としても発展させてきた理由だということを理解できるはずだ。
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プロスケーターの収入

プロスケーターたちはスポンサーからの報酬プロコンテストの賞金を主な収入源にしている。このシステムは昔からほとんど変わっていないが、スケートボードシーンは大きく変わった。
テレビ番組、ポッドキャスト、リアリティ番組、ビデオゲーム、映画のような新しいエンターテインメントによって、プロスケーターたちは非常に大きな影響力を持つ存在となった。
とはいえ、プロスケーターの大半はそのようなチャンスを得られていない。一般的に、プロスケーターは平均月収1,000〜3,000ドル(約13万〜40万円)平均年収30,000ドル前後(約400万円)と言われている。トップレベルのプロスケーターなら月収10,000ドル(130万円)も可能だが、このようなスケーターは全体の10%にも満たない。
オリンピックの正式種目になったことで増収を期待しているスケーターは多いが、プロスケーターは情熱が中心に位置している職業であり、昔から “金は二の次” と考えてきたことを踏まえると、何とも言えない。
ひとつ確かなことは、プロスケーターは地球上で最もユニークで特別な人たちだということだ。スケーターひとりひとりがスケートボードシーンという大きなモザイクガラスの1片なのだ。
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