Martin Söderström spreading his wings over the small mulch jump
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MTB

【マウンテンバイク・スロープスタイル】"トップライダーになる" 為に必要なモノ

MTBスロープスタイルライダーのエミール・ヨハンソンとマルティン・ソーダーストロムがアマチュア時代のジャンプ練習を振り返り、優れたライダーになるための必要条件を教えてくれた。
Written by Hanna Jonsson
読み終わるまで:7分公開日:
人工、ダートを問わず、ハイクオリティで巨大なジャンプ台を用意しなければMTBやBMXのジャンプを極められないわけではない。実は、本当に必要なのはただのジャンプ台だ。巨大でなくても構わない。
世界最高のスロープスタイルライダーに数えられるエミール・ヨハンソンとマルティン・ソーダーストロムにとっても、そのようなジャンプ台がすべての始まりだった。アマチュア時代、この2人は正式なジャンプ台とは程遠い多種多様なフィーチャーでジャンプやトリックを学んでいった。
エミール・ヨハンソン&マルティン・ソーダーストロム
エミール・ヨハンソン&マルティン・ソーダーストロム
私たちは「ジャンプを学ぶにはエアバッグやフォームピット、大規模なジャンプパークなどが必要」というアイディアに拘泥しがちだが、実際に必要なのは「たったひとつの小さなジャンプ台」「数多くの反復練習」「莫大なモチベーション」だけなのだ。
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トリックの習得に立派なジャンプ台はいらない

スウェーデンのイェブレにあるThe Dome Adrenaline ZoneやスペインのバルセロナにあるLa Poma、カナダのWhistler Bike ParkにあるA-lineなどを見ても分かる通り、現代はジャンプ用の素晴らしい施設が数多くある。ジャンプを好むライダーにとって、これらすべてが夢のスポットだが、長期休暇で訪問できるとはいえ、この類いが自宅周辺にあるラッキーなライダーは多くない。
繰り返し練習に取り組めるスポットを見つけよう
繰り返し練習に取り組めるスポットを見つけよう
自宅から少し離れた場所にダートジャンプやローカルスケートパークが少しあるだけという人の方が多いはずだ。あるいはヨハンソンのように、自宅付近の側溝から飛び出してサイクリングロードに着地していくことでトリックを習得しているライダーもいるかもしれない。
「近所のサイクリングロードの脇に側溝があって、そこからジャンプで飛び出してサイクリングロードに着地できるように誰かが小さなテイクオフを作っていたんだ。数え切れないくらいそこでジャンプしたよ」とヨハンソンは振り返る。
「ジャンプ台と呼べるものでさえなかったけれど、僕はそこでノーハンダーと360を習得したんだ」
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小さなジャンプ台から世界へ飛び出す

今では、スウェーデンにあるヨハンソンの自宅付近にはもっと大きなジャンプ台があり、数時間ドライブすればDome Adrenaline Zoneもあるが、そのようなスポットは昔から身近だったわけではない。彼のメインスポットは、地元のインドアBMXパークに置かれていた小さなダートジャンプだった。
ヨハンソンは地元のインドアBMXパークで何時間も練習に明け暮れた
ヨハンソンは地元のインドアBMXパークで何時間も練習に明け暮れた
このダートジャンプは、ある意味で彼のキャリアのバックボーンと呼べるものだった。彼は高校時代3年間のほとんどをこのジャンプ台でのトリック練習に費やし、ここで習得したトリックをCrankworxスロープスタイルのコースへ持ち込んだ。
「高校時代は車も持っていなかったし、地元のインドアBMXパークが練習できる唯一のジャンプ台だった。ほとんど毎日のように通って、繰り返し練習していた」
超絶トリックをいとも簡単にメイクするヨハンソン
超絶トリックをいとも簡単にメイクするヨハンソン
毎日のように地元のインドアBMXパークへ通って練習していた
キャリアが軌道に乗り始め、より優れた施設がオープンしても、ヨハンソンは依然としてこの小さなジャンプ台で練習を繰り返していた。
「2019年のCrankworxのためにニュージーランドへ発つときも、直前まであのジャンプ台で練習していたんだ」
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基礎を学ぶことの重要性

ファールンにあるこの小さなダートジャンプは、マルティン・ソーダーストロムにとっても非常に馴染み深い存在だ。ここは彼が地元の高校生たちの指導に使っているスポットであると同時に、冬の間にライディングできる最も身近なインドアスポットでもある。
しかし、彼はジャンプ台が小さくてもまったく気にしない。彼もヨハンソンと同じく、ひとつのジャンプ台で繰り返し練習することがスキル上達の近道だと固く信じているからだ。
バイクコントロールのスキルを学ぶことでジャンプも上達する
バイクコントロールのスキルを学ぶことでジャンプも上達する
最近は魅力的なライディングスポットが沢山あるからか、多くの人がライディングの基礎を省略している
マルティン・ソーダーストロム
「最近は魅力的なライディングスポットが沢山あるからか、多くの人がライディングの基礎を省略している。バニーホップやマニュアル、正しいコーナリングなどの基礎を丁寧に学んでいない」とソーダーストロムは語る。
「これらは全体的なバイクコントロールにおいてとても重要で、トレイルでも応用できる優秀なスキルだ。駐車場やグラベルエリアのような平坦なスペースを用意するだけで学べるところも最高だ。誰でもいつでも練習できるんだ」
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もっとクリエイティブに

ソーダーストロムの言葉には説得力がある。彼はライディングや練習向きのスポットに恵まれていない環境で育った。実は、当時はまだスロープスタイルも存在していなかった。当時のMTBシーンではダートジャンプとストリートライディングが主役だった。
「だから、イマジネーションを駆使して、クリエイティブにならなければならなかった。森へ向かって、天然のリップやジャンプオフできる岩を探したものだ」とソーダーストロムは回想する。
「街中の階段を何時間も繰り返しジャンプで越えたこともあるし、近所に土砂が捨ててあると聞けば、すぐさま駆けつけてジャンプ台のような形にしようとした」
ウォールライドをメイクするマルティン・ソーダーストロム
ウォールライドをメイクするマルティン・ソーダーストロム
長年キャリアを重ねてMTBシーンのアイコンとして世界中で知られるようになったソーダーストロムは、森の中の小さなランプでのジャンプ練習から大きく成長したのだ。
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反復練習の重要性

ソーダーストロムとヨハンソンは、ビッグなジャンプラインやパークは最高に楽しいが、スキル上達にはひとつのジャンプ台にこだわった方がベターだという意見で一致している。
イェルブシェーでライディングするヨハンソン&ソーダーストロム
イェルブシェーでライディングするヨハンソン&ソーダーストロム
たったひとつのジャンプ台から得られるものの大きさを、多くの人が過小評価している」とヨハンソンは語る。
「手っ取り早い方法や秘訣なんて存在しない。重要なのは一貫性反復練習、そして時間をかけることだ。基礎を身につけるまでは時間がかかる。まっすぐジャンプできるようになる前にバックフリップを学びたがる人があまりにも多すぎる。僕は、『今日はこのトリックを習得しよう』といった具合に、いつも自分の中で目標を設定している。そしてその通りに1日中それを練習するんだ」
とにかく、ヨハンソンとソーダーストロムが示しているのは、トップライダーになるために最高の施設は必要ではないということだ。より重要なのは、「手元にあるものをどう活かすか」なのだ。

2分

第18話: エミール・ヨハンソン&マルティン・ソーダーストロム

第18話あらすじ: スウェーデンのイェルブシェーを舞台に繰り広げられる、マルティン・ソーダーストロムとエミール・ヨハンソンの躍動感あふれるライディング。雄大な景色と豪快なジャンプの魅力をすべて映像化した、奇跡の作品だ。【MTBの魅力たっぷり珠玉の作品集(シーズン2/全18話/日本語字幕)】

日本語 +2

「スウェーデンを見てごらんよ。新しくオープンしたいくつかの施設を別にすれば、特別高い山や素晴らしい山があるわけではないし、大規模なライディングスポットもない。それでも、この国には素晴らしいMTBシーンがあるし、才能豊かなライダーもいる」とヨハンソンは語る。
「豪華な施設さえあればと考えてしまうのは簡単だし、隣の芝生はいつだって青く見えるものだ。でも、本当に大切なのは、自分にどれだけのモチベーションがあるのかどれだけの時間を練習に費やしてきたのかだよ」
まずは家の外へ出て、小さなジャンプ台や縁石を見つけて練習を始めてみよう。平坦な道路でも構わない。次にトレイルを攻めるときに自分に感謝したくなるはずだ。
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