実は大半の人々が考えるほど輪行は面倒ではない。少なくとも、基本をきちんと押さえれば、実際に厄介なのはバイクを抱えて駅や空港に向かう道のりぐらいのものだ。これを除けば、旅先へのバイク運搬は決して難しいことではない。次に輪行を計画する際は、以下に紹介する簡単なステップを試してみよう。
1. 鉄道や飛行機にバイクを持ち込む際、事前申し込みはどうすれば良い?
飛行機と鉄道のどちらを選ぶにせよ、事前に輪行バッグの持ち込み予約をしておくことは常に有効だ。一部の鉄道会社や航空会社は輪行バッグの持ち込みに追加料金を設定しているが、事前予約をしておけば割引が適用され出費を抑えられる。とはいえ、予約を忘れたとしてもさほど悲観する必要はない。空港スタッフが適切に対応してくれるはずだ。
輪行バッグの持ち込みを事前に申し込む場合は、航空会社・鉄道会社に電話してその旨を伝えるだけでOKだ。持ち込み料金は会社によって異なり、無料の場合もあれば、100ポンド(約1万5,000円)程度になる場合もある。
(編注:JR東日本の旅客営業規則は「列車の状況により、運輸上支障を生ずるおそれがないと認められるときに限り、3辺の最大の和が250cm以内のもので、その重量が30kg以内のもの」かつ「自転車にあっては、解体して専用の袋に収納したものまたは折りたたみ式自転車であって、折りたたんで専用の袋に収納したもの」は無料で車両に持ち込むことができると定めており、他のJR各社もこれに準じている。また、2013年頃からJR旅客各社では規則の解釈・運用が強化され、輪行バッグ以外の袋での輪行禁止を徹底している。私鉄に関してはJR旅客各社の規則に準じているケースが大半だが、一部の私鉄では有料手回り品の対象となる。)
2. 重量制限はダブルチェックを
旅行へ出かける前に、受託手荷物の重量制限をチェックしておくことは重要だ。鉄道で移動する場合は持ち込み重量制限を心配する必要はないが、飛行機の場合は通常23kg~32kgに制限される。我々の経験から言えば、重量制限は低めの場合が多い(編注:日本国内の各航空会社では、受託手荷物は20kgまで無料で、それを超える受託手荷物に関しては重量超過料金の対象となるケースがほとんど。また、1個あたりの最大重量やサイズには航空会社ごとに規定が異なり、規定を超える荷物については貨物便での輸送となる)。輪行バッグ、あるいはボックスのどちらがベターか判断するために、あらかじめバイクの総重量をチェックしておくことが肝心だ。
3. バイクの収納方法は?
航空会社やほとんどの鉄道会社は、バイクが何らかのケースに収納されている状態でなければ持ち込みを認めないので、輪行バッグか輪行ボックスのどちらかを選ばなければならない。この2つには以下の違いがある。
輪行バッグ:輪行バッグでの移動には、バイクのパッキングが早くでき、保護もしっかりとしており、(バッグにキャスターが付属している場合は)持ち運びしやすいというメリットがある。デメリットとしては、バッグはボックスよりも重くなりがちで、購入・レンタルの必要があるという点だ。とはいえ、輪行する機会が多い場合は、購入しておいて損はない。
輪行ボックス:正しくパッキングするのに時間がかかり、また輪行バッグのようなキャスターも付いていないため持ち運びも大変なので、輪行ボックスでの移動にはやや難点がある。しかし、輪行ボックスはバッグに比べてとても安く、重量がかなり抑えられるという利点がある。飛行機の移動で重量制限に頭を悩ませているなら、輪行ボックスを選ぶ価値はある。
(編注:英国の場合、輪行ボックスは大半のバイクショップが無料で提供、あるいは低価格で販売している。日本の場合、段ボール製の輪行ボックスは5,000円前後で入手可能)
4. 輪行バッグのパッキング
輪行バッグを選べば、パッキングに時間を取られることはない。なぜなら、輪行バッグにはフォーク / ボトムブラケット / ディレイラー / ホイールなどのための保護材があらかじめ備わっており、ベルクロファスナーを使ってこれら全てを安全確実に固定できるからだ。初心者でも、何度かパッキングを経験すれば15分前後で完了できるようになるだろう。フォローすべきステップは以下の通りだ:
- ペダルは取り外し、バッグかケースの中に入れる
- ホイールは前後共に取り外し、専用のスペース内に収める。運搬中に誤ってブレーキレバーが押されて破損するリスクを想定して、前後のブレーキパッドの隙間には段ボール片や専用のブレーキブロックを挟んでおこう。万全を期すなら、ブレーキディスクもホイールから取り外しておこう。
- ディレイラーを取り外し、保護のためにジップタイを使ってフレームの後三角に固定する。
- ハンドルバーを取り外し、片側に向けておく。ステムごとハンドルバーを取り外しても良いし、ハンドルバーを固定しているステムのフロントプレートのネジを取り外すだけでも良い。
- バイクをバッグに収納し、確実に固定されるようにストラップを装着する。通常、輪行バッグにはフレームを保護するプロテクターが備わっており、ハンドルバーも固定できるようになっている。
- 輪行バッグを使ったパッキングのヒントについては、以下の記事も参考にしてみよう。
5. 輪行ボックスのパッキング
保護材やストラップなどがあらかじめ用意されていないので、輪行ボックスを使ったパッキングはやや時間がかかりがちだ。覚えておいてほしい有用なヒントは、全てのパーツをしっかりと固定し、運搬中にボックスの中でパーツが動かないようにするということだ。
- 輪行バッグを使ったパッキングと同様、ペダルやディレイラー、ハンドルバーなどのコンポーネント類を取り外す。
- 輪行ボックスは保護力が弱いため、自分で工夫してフレームやパーツを保護する必要がある。気泡緩衝材やそれに近い緩衝材を使って、フォークやハンドルバー、フレーム、ディレイラーなどを包んでおこう。
- ハンドルバーはフォークの片側にジップタイで固定し、ディレイラーはフレームの後三角へ同様にジップタイで固定する。パーツやフレーム同士が擦れ合わないよう、しっかりと固定するよう心がけたい。
- ボックスが十分な大きさなら、リアホイールは取り外さず、フロントホイールだけを取り外せばOKだ。この方が安定性と保護力が高まる。取り外したフロントホイールはフレームの片側に寄せておこう。ブレーキディスクはフレームに面するようにしておく。ホイールとフレームの間には厚みのある段ボールや気泡緩衝材を挟み、動かないようにしっかりと固定する。ホイールはジップタイを使ってフレームに固定しよう(ヒント:バイクの全高に対してボックスが小さい場合、ショックの空気を抜けばフレームの高さを抑えられる)。
- テープでボックスを補強する。輪行バッグに比べると、輪行ボックスは頑丈ではないため、負荷がかかりやすい部分を補強しておく必要がある。ボックスの角の部分はもちろん、底面全体にもテープを貼って補強しておこう。また、ハンドルが収まる部分は破れてしまいやすいので、この周りもしっかりと補強したい。フロントホイールが収まるボックスの内側部分も同様だ。
- バイクをボックス内に収納する。この時点で、バイクは安全に保護され、ボックスはしっかりと補強されているはずだ。あとはバイクを持ち上げてボックス内に収め、テープで蓋を閉じるだけだ。
- 念のため、ボックスの外側には自分の名前とメールアドレスを書いておこう。
6. バイクパッキングの注意点は?
工具類
輪行する際は、バッグに小型のツールケースを1個備えておくと良い。軽量な小型ケースかバッグが最適だ。また、重量を抑えるために必要最低限のツールだけを持ち運ぶようにしたい。
あると便利なツール:
- アーレンキー / トルクスキーを備えたマルチツール
- ペダルスパナ
- ジップタイ / ケーブルカッター
- チェーン潤滑剤 / グリス
- スペアのディレイラーハンガー
- 空気入れ / ショックポンプ
飛行機ではCO2を含む缶などの持ち込みが禁止されていることを忘れないようにしよう。
パーツをしっかり固定する
輪行バッグや輪行ボックス内には余分なスペースがあるため、ライディングシューズやバックパック、工具類も詰め込めるが、その際に、バッグの中で動き回らないようにしておくことが重要だ。全てのアイテムをバイク本体やバッグに結びつけよう。
バイクを収めたバッグやボックスは常に立てかけられた状態で運搬されるわけではない。実際には横向きになったり、上下逆になったりしながら、他の乗客のスーツケースや箱などと一緒に詰め込まれている場合がほとんどだ。バッグの中で固定されていない物があれば、バイクにダメージを与える可能性もあるので、小さなパーツ類などは小型のバッグやバックパックに収納し、しっかりと固定しておこう。
ヘルメットは機内持ち込み荷物の中へ
ヘルメットも輪行バッグの中へ入れておきたくなるが、ヘルメットはデリケートなアイテムだ。バイクの隙間に挟まったまま他の荷物が積み重ねられると割れてしまうこともある。もちろん、運良くダメージを免れることもあるが、不要なリスクなので、ヘルメットは機内持ち込み荷物の中に入れておこう。大半の航空会社は許可してくれるはずだ。
7. 空港や駅までバイクを運搬する際の注意点
車:駅や空港まで車でバイクを運搬しなければならない場合、しっかりと収納できるように、後部座席が折りたたみ可能な車を選びたい。
電車:大きな荷物を置いておくためのラゲッジスペースがあればそこを使おう。ラゲッジスペースは車両の両端に備えられている場合が多い。専用のラゲッジスペースがなければ、非常用出口を塞がない場所にバイクを置くようにしよう。
8. 空港での注意点
空港に到着すれば、きつい仕事の大半を終えたことになる。あとは搭乗手続きを済ませ、手荷物預かりカウンターでバイクを預けるだけだ。事前に重量超過料金の支払いを済ませている人は領収書を手元に用意しておこう。航空会社から提示を求められる場合がある。
バイクを最終到着地の手荷物受取所でピックアップする際に、通常は他の乗客の荷物とは別の場所から出てくることを忘れないようにしよう。「special luggage(特殊手荷物)」と示されたサインを探し、それに従って進もう。
愛車と共に素晴らしい旅を!