世界各地で夏の気温が上昇を続けており、数百年・数十年ぶりに最高気温を更新している場所が毎年確認されるようになっている。青空と太陽は適度である限り多くの人の恵みになるが、度を超えてしまえば害になる。アスリートにとって暑すぎる夏は特に厄介だ。
では、アスリートにとって夏のトレーニングは危険なのだろうか?
今回はスウェーデン代表トライアスリートとして活躍した経歴を持つアニー・トーレンに夏のトレーニングでやるべきこと・やってはいけないことについて語ってもらった。
高温下でのトレーニングは危険なのか?
「一般的なイメージの真逆になるかもしれませんが、高温下でのトレーニングは危険ではありません。問題になるのは “高温への対処方法” です。栄養補給と準備が重要になります」
「たとえば、アイアンマン世界選手権で調子を崩してしまう理由はトレーニング不足ではありません。間違った栄養補給プランを用意してしまうからです。彼らは身体を正しく機能させ続けるために必要な量のジェルや塩、水を摂取していないのです」
「ですので、トレーニングプランを正しく準備すれば、夏の高温下でも楽しくトレーニングできます」
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真夏のトレーニングアドバイス 11選
1:正しい時間帯を選択する
最も簡単だが最も重要なアドバイスは、正しい時間帯を選ぶことだ。最高気温が20度台後半から30度台前半、さらには30度台後半になる日は、気温が上がりきっていない早朝か気温が下がる夜にトレーニングして日光を避けよう。
2:正しい場所を選択する
直射日光を避けて日陰を走るようにしよう。たとえば、森の中を走るトレイルランニングは木陰が多いため、夏のトレーニングに向いている。
「都市部は熱が籠もりやすいので気温がさらに上がる可能性があります。ですので、舗装路や都市部の代わりに森の中を走ることをおすすめします」
3:頭部を冷やす
最優先で冷やさなければならない部位は頭だ。頭を冷やさなければ簡単に疲労してしまう。
「キャップに定期的に水をかけて頭を冷やし続けることが効果的です」
4:水分補給の種類とタイミングを考える
長距離ランでは特にだが、夏は何をどのタイミングで飲むのかを決めておくことが重要だ。長距離ランの代わりにジムに行くときもドリンクは携行したい。
夏はいつもより発汗量が多くなるので、電解質タブレット、スポーツドリンク、経口補水パウダーを多めに用意して体内の塩分量を補充するようにしよう。
「飲料メーカーが様々なタイプのスポーツドリンクを販売しているので選択肢は豊富ですね。ドラッグストアで売られている経口補水パウダーや電解質タブレットもトレーニングには非常に効果的です」
5:食事と飲み物に塩分を追加する
通常の食事では「塩分控えめ」が基本だ。しかし、暑い日が続く夏は(定期的に運動している人は特に!)塩分を少し増やすのがグッドアイディアだ。飲料水に少し塩を足すだけでも効果がある。
「塩分は非常に重要です。塩に含まれているナトリウムが体内の水分と結合し、体内のバランスを整えてくれます。体内の塩分量が低すぎると結合できなくなり、体内のバランスが崩れて疲労に襲われますし、身体が膨張してしまいます」
「男性よりも女性の方がこのトラブルに悩まされる機会が多いですね。汗を沢山かく人は、塩分を補充して体調を維持するようにしてください」
6:1時間に750ml飲む
「通常のロングライドではボトル1本を飲料水、もう1本をスポーツドリンクにしていますが、非常に高温になることが予想される日は、1本をスポーツドリンク、もう1本をタブレットを追加したスポーツドリンクにして、体内の塩分量を正しく保つようにしています」
7:寝ている間に汗をかいたら水分を多めに摂る
多くの人が忘れがちだが、熱帯夜などで寝ている間に汗をかいた場合は、体内水分レベルがマイナスの状態から1日がスタートする。そのような朝を迎えたときは、すぐにしっかり水分を補給するようにしよう。電解質タブレットなどを足すのはグッドアイディアだ。
「夕食で十分な量の栄養と水分を補給し、汗をかかずに朝までぐっすり眠れれば、体内水分レベルがプラスの状態で1日がスタートするので、朝食前に走っても問題ありません」
「ですが、マイナスの状態から1日がスタートするときは、電解質タブレットなどを足した水を飲んでから走るようにしてください」
8:トレーニング中はカフェインを避ける
真夏の暑い日のトレーニングの合間にカフェインを摂取するのはNGだ。なぜなら、用を足す回数が増えてしまうからだ。暑い日はなるべく体内に水分を維持する必要がある。
「たとえば、アイアンマン世界選手権のアスリートたちは、カフェインをスタート直後ではなくラストスパート直前に摂取しています」
9:ロングランの代わりにショートランで周回する
ランニングは夏季で最もキツい運動なので、ノンストップのロングランに挑むのはグッドアイディアではない。走る前に補給プランを用意しておこう。たとえば、21kmを走るつもりなら7km・3周にして、1周ごとに水分を補給できるようにしよう。
「自宅前にエイドステーションを自作して、自宅前を通過するたびに水分補給ができるようにしたことがあります。自宅前を通過するルートを用意して、自宅前で少し多めに水分を摂取してまた走るのです。ルートを問わず、5km以上走るときは必ず水を飲むようにしてください」
10:テクニックに支障が出るようならボトルは携行しない
エイドステーションを自作するくらいなら、ボトルを携行した方が良いのではないだろうか? しかし、ボトルやフラスク、バックパックと一緒に走るとランニングエクスペリエンスが悪化する可能性だけではなく、ランニングテクニックが悪化する可能性も出てくる。
「ハイドレーションパックを背負ったり、ボトルを手に持ったりして走っている人を見たことがありますが、私には理解できません。邪魔になりますし、バランスが崩れるので身体にも良くありません」
「片手にボトルを持っていると、身体が不安定になります。また、バックパックは背中のポジショニングに影響を与えます。結果、ランニングテクニックに影響が出て、怪我をしやすくなります」
「屋外を1時間半以上走る予定で水分補給を自分で用意するときは、非常に優秀なエルゴノミクスデザインのバックパックをおすすめします。これが手に入らない場合は、1周ごとに水分補給できる周回コースを設定してください」
11:スイム中も汗をかくことを意識する
高温が予想される日は、ランニングやライディングよりスイミングをしようと思いがちだ。しかし、ひとつ意識しておくことがある。それは泳いでも汗をかくということだ。つまり、スイミングでも水分補給が重要になる。
「スイミングでは水温が高ければその分だけ発汗量も多くなります。ですので、夏のスイミングでは通常よりも水分補給を強く意識する必要があります」
「オープンウォーターでは水分補給が難しいかもしれませんが、スイミングプールの場合は、ボトルを携行してセッションの合間に飲むようにしましょう」
以上のアドバイスを活用して夏のトレーニングを存分に楽しもう!
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