砂漠での長時間ライディングは孤独との戦いだ。高い集中力と一瞬の途切れも許されない持久力が必ず要求される。
サム・サンダーランドは、ダカール・ラリーのようなイベントで1日最大12時間もライディングを続けるときもある。では、どのようにしてエナジーと集中力を保っているのだろうか? その取り組みはレース開催地に到着する遥か前から始まり、過酷なコンディションのレース中も続く。
サンダーランドが自身の食事管理・栄養補給ストラテジーについて詳しく話してくれた。
— 普段の日の朝食・昼食・夕食・軽食を教えてください。
僕の体重は76kgしかないのですが、実はかなり沢山食べています! 朝食は卵、アボガドを乗せたトースト、目覚めるためのコーヒーです。午前中を通してナッツやフルーツ、少量のチーズなどの軽食を多く摂りますね。僕は素材そのままのリアルフードや自然食品を好んでいて、エナジーバーやパウダー類はなるべく避けています。
朝・昼・夕の3回だけでは食事前にお腹が空きすぎてしまい、たとえ身体に悪いものでも手当たり次第に食べてしまうので、1回の量を少なくしつつ、回数を増やすようにしています。
朝食を終えたあとは、いつもならサイクリングやランニングなどのトレーニングセッションをこなしてから自宅で昼食を摂ります。昼食では、パスタやニョッキなどで炭水化物をしっかり摂ります。炭水化物が好きだからというのもありますが、これらを補給しておく必要も感じているからです。
午後にハードなトレーニングセッションが控えている場合、昼食がサラダだけだと、エナジーが不足して、十分な力が出せないような気がします。ですので、昼食にはプロテインを含んだ鶏の胸肉などを加えたパスタを食べ、そこにサラダも合わせています。
午後のトレーニングセッションは、通常はモトクロスやトライアルバイクですが、出かける前にレッドブル・エナジードリンク缶を1本飲み、少量の軽食も摂っています。
夕食に関しては、寿司を沢山食べるときが多いですね。寿司はいつも食べられるわけではなく高価なのですが、食べられるときは食べていますね。
ドバイに住んでいた頃、血中のナトリウム濃度が低下してしまう低ナトリウム血症に悩んでいて、その結果、寿司を沢山食べるようになりました。醤油にはナトリウムが含まれていますし、さらには米で炭水化物、魚でプロテインも摂取できますから、僕にとってはすべての必要条件を満たしているのです。
— 普段の1日のカロリー摂取量はどれくらいですか?
1日にトレーニングセッションを数回こなすとすると、4,000から6,000kcalのカロリーを消費しています。摂取カロリーを記録したことはありません。空腹を感じたときやトレーニング後などのタイミングで食べています。
以前はかなり厳格に管理された栄養プランにこだわっていたのですが、結局は疲労感や体重増などの理由でいつも行き詰まっていました。どれだけ食べれば良いのかについては、長い時間をかけて自分に合う栄養補給方法を見つけ出せています。ですので、摂取カロリーは記録していません。
— ダカール・ラリー参戦中の食事や水分補給はどのような内容ですか?
毎朝、午前3時半ごろに目覚ましのアラームが鳴ります。身支度をしていくつかビタミン剤を摂り、通常はそのあと大量のポリッジを食べます。たまに冷ましたパスタを食べるときもありますね。カフェインは一切摂りません。なぜなら、まだ夜も明けていませんし、スタート地点までに長いリエゾン区間がありますから、あまり早い時間に “ピーク” を持ってきたくないのです。
背中のポケットにレッドブル・エナジードリンク缶を1本入れています。またナッツやエナジーバー、ジェリーベイビーズ(グミ)やドライバナナなど、1日分の軽食をジャケットに入れておきます。
起床から3時間ほどを経てスタート地点に到着すると、ジャケットを脱ぎ、ゴーグルを拭いて、レッドブル・エナジードリンク缶を飲んで集中力と注意力を高めます。
ダカールでは、ラリーで競っているだけではなく、食事と睡眠でも競っているのです
いつもならこの時間帯には空も明るくなってきていますし、起床してから数時間バイクに乗ってスタート地点に到着しているので、レースのスタートに向けてあらためてスイッチを入れる必要があります。また、オーツバーを食べて炭水化物をいくらか補給しておきます。
最初の給油まで、スペシャルステージでは約200kmを走行します。給油時間は15分しかないので、あっという間です。この間に34ℓの給油を済ませ、バイクのダメージ箇所をチェックし、ゴーグルを拭き、栄養補給をしなければなりません。ですので、大急ぎで軽食を食べ、カフェイン入りのジェルも飲みます。それから走行を再開して、また数百kmに渡り全開で走るのです。
ライディングしながら食事を摂ることはできないので、水分補給が重要になります。僕の場合はキャメルバック(ハイドレーションパック)からドリンクを飲んでいます。十分な量の水分補給をしつつ、水分を摂り過ぎないよういつも気をつけています。なぜなら、低ナトリウム血症で、体内の水分量が過剰になってしまいますからね。通常は容量2.5〜3ℓのキャメルバックで丸1日持ちます。また、給油ストップではボトル入りの水も飲みます。
— そのような長い1日を終えたあとは、どのような食事を摂るのですか?
フィニッシュに到着した直後にプロテインを摂るように心がけています。このときはプロテインパウダーに頼っていますね。というのも、フィニッシュに到着しても、ビバークまでのリエゾン区間が残っていますし、最長で300kmもありますからね。ダカールの1日は長いのです。
ビバークに着いたら、すぐにフルーツと炭水化物を補給します。そしてメカニックたちとのデブリーフィングを終えたあと、夕食へ向かいます。普段はパスタが多いですね。そして、午後9時にはベッドに入るようにしています。僕たちはラリーで競っているだけではなく、食事と睡眠でも競っているのです。
— 一番の好物は何ですか?
寿司でしょうね。食事療法のために食べるようになりましたが、今は大好物になりました。かなりの量を平らげられますよ!
— ゲストを夕食に招くときはどんな食事でもてなしますか?
料理の腕は絶望的なんです! 出来合いのカルボナーラソースをかけたラビオリのような簡単なイタリア料理で誤魔化したいですね(笑)。
▶︎世界中から発信される記事を毎週更新中! 『新着』記事はこちら>>