高いスピードで長距離を走るなら1時間ごとに糖質90gを補給したい
© Leo Francis/Red Bull Content Pool
サイクリング

長距離自転車レース用栄養・水分補給プラン:ヒント&アドバイス

ロングライドや耐久系ロードレースでは自分に合った栄養・水分補給プランを用意することが成功のカギになる。英国人栄養士 / パフォーマンスコーチがヒントとアドバイスを教えてくれた。
Written by Charlie Allenby
読み終わるまで:9分公開日:
スポーティブや長距離ロードサイクリングレースに出場しているサイクリストのほとんどは、自分に最適なトレーニングプランを用意し、サドルの上で長時間を過ごしながらフィジカルをレースに向けて仕上げている。
しかし、ヒルクライム、インターバル、ロングライドを繰り返す週末のトレーニングと同じくらい重要なのにレース当日までほとんど考慮されていないことがひとつある。それが栄養・水分補給だ。
栄養士・パフォーマンスコーチのウィル・ガーリングは次のように話を始める。
「長距離を走るならパフォーマンスを維持するために正しい栄養補給プランを用意することが重要です。私たちは糖質(炭水化物)をエナジー源として筋肉と肝臓に保存しています。ですので、長距離でベストパフォーマンスを引き出すためにはその保存量を最大まで増やしておく必要があります。また、ライディング中も糖質を随時補給して血糖値を維持する必要があります」
体内の糖分量が不足すると、身体は体内の他の部分をエナジー源として使おうとする。最初の代替エナジー源になるのが体内の脂肪分タンパク質(プロテイン)だ。これらからもグルコース(ブドウ糖)は得られるが効率が悪く、ハンガーノックに襲われる可能性がある。ハンガーノックとは、目まいを覚え、身体がフラつき、身体を動かせなくなってしまう極度の低血糖状態だ。
しかし、当然ながらハンガーノックは回避できる。スポーティブやRed Bull Timelaps(英国でサマータイム終了日に開催されている4人1チームの25時間耐久チャレンジ。2020年はStravaで開催)のような長距離サイクリングチャレンジに挑もうとしているなら、以下の栄養・水分補給に関するヒントとアドバイスが役立つはずだ。

1:レース用栄養補給アイテムをトレーニングから使用する

ガーリングは、レース直前のカーボローディングから終了後のリカバリー食までのレース用栄養・水分補給プラン全体をトレーニングから採用することが重要だとした上で、次のアドバイスを加えている。
レース前に栄養・水分補給プランを練習しておこう
レース前に栄養・水分補給プランを練習しておこう
「レースに出場するなら、スポンサー企業を確認しておくことも大事ですね。エイドステーションで提供される飲料・食料はそのスポンサーの製品群になる可能性が高いからです。その製品群が自分に合わないなら、自分に合う製品を用意する必要があります」

2:レース前日に糖質を最大限貯蔵する

長距離レース挑戦を考えているなら、本番前の “カーボローディング” について聞いたことがあるはずだ。一部のサイクリストは、食事内容が制限される厳しいトレーニングを重ねたあとに大量のパスタやライスを摂取できるこの瞬間を楽しみにしている。しかし、糖質を体内に貯蔵するこの作業に複数日費やす必要はない。ガーリングが説明する。
パスタはカーボローディングに最適
パスタはカーボローディングに最適
「1日でカーボローディングを終えられることを示している有名な研究があります。基本的には体重1kgあたり糖質10gを摂取するわけですが、これはかなりの量になるので、事前に練習しておくことを推奨します」
「また、血糖インデックス(GI:Glycemic Index)は高くなります。高GI食品の方が糖質が多く含まれているからです。ちなみに、体重75kgのサイクリストならパン、ポテト、白米などから糖質750gを摂取する必要があります」
「私としては、カーボローディングを1日で終わらせるなら、摂取を数回に分けて、大半を飲料から摂取することを推奨します。こうすることで膨満感を避けることができます。また、繊維質赤身の肉を避けて、できるだけ身体が軽く感じられるようにしておくことも重要です」

3:スタート直前に糖質を補充する

前日にカーボローディングをしても、レーススタートの数時間前には糖質を再補充しておきたい。ガーリングが説明する。
レース直前とレース中はジャムサンドウィッチが定番メニュー
レース直前とレース中はジャムサンドウィッチが定番メニュー
「レースの2~4時間前に体重1kgあたり1.2~2.4gの糖質を補充しておくことを推奨します。また、スタート20分前にも何かしらで再補充しておきたいところです。レース当日は糖質が多く含まれていて、消化・変換に優れているアイテムを摂取したいですね。ここまでやれば、カーボローディング的には準備万端と言えるでしょう」
レース前の補充用アイテムは、ジャムを塗ったパン、バナナ、レッドブル・エナジードリンク缶などが適している。

4:スタートから1時間後に栄養・水分補給をする

レース前の準備ができていれば、スタート直後の1時間は快適に経過するはずだ。しかし、1時間が過ぎたあとは栄養・水分補給プランを実行していく必要がある。ガーリングが説明する。
高いスピードで長距離を走るなら1時間ごとに糖質90gを補給したい
高いスピードで長距離を走るなら1時間ごとに糖質90gを補給したい
「スタート直後の1時間は補給する必要がありません。朝食を食べていますし、先ほど説明したようにスタート20分前にも補充しているからです」
「スタートから1時間が過ぎ、FTPゾーン2前後に入っているなら、男性なら1時間ごとに約60g、女性なら約40g(増減10gはOK)の糖質を補給することを推奨します。男女差が存在するのは、女性の方が男性よりも効率良く体脂肪を酸化分解してエナジーに変換できるからです」
ガーリングは、英国ではモルトローフ、フラップジャック、ライスケーキなどがサイクリストの補給食として一般的だとした上で、エナジージェルには固形物がもたらす膨満感を防げるメリットがあるとしている。
「Red Bull Timelapsのような高いスピードで長距離を走る耐久系イベントでは、1時間ごとに糖質90gを補給しても問題ないでしょう。FTPがゾーン3、ゾーン4に入れば、体内のグルコースとグリコーゲンへの依存度が高くなりますが、中速域のライディングなら、補給した糖質をエナジーに変換してパフォーマンスに結びつけることができます」
ガーリングは、交代して何回も走るリレー形式の長距離レースでは、自分の順番(スティント)が終わってから補給するのがベストだとしている。ただし、チームの戦術や各メンバーに最適な走行距離・時間を考慮しなければならない。1回の走行距離・時間が短すぎれば十分なリカバリーと消化ができないが、長すぎれば疲労してしまう。

5:ウォーターボトルにタブレットを足して定期的に飲む

秋冬は春夏より水分補給は抑え気味で問題ない
秋冬は春夏より水分補給は抑え気味で問題ない
水は命の源だが、長距離サイクリングレースでは水に少しアレンジを加えることでパフォーマンスが大きく向上する。ガーリングが説明する。
「ウォーターボトルにはハイポトニック飲料を用意することを推奨します。電解質タブレットを水に混ぜて自分専用の飲料を作れば、喉の渇きを癒やせる上に汗で失われた電解質を補給できます」
「また、糖質も補給できます。水に対する糖質は3~4%、つまり、水100mlあたり糖質3~4gを目安にしてください。また、このような飲料はよりスムーズに体内に浸透するので、より効率的に水分補給を行えます。私がアスリートにただの水を与えることは滅多にないですね」
尚、水分補給の頻度については、ガーリングは次のプランを支持している。
「喉の渇きを感じて水分を補給しているなら、すでに軽い脱水症状になっていると思ってください。水分が必要な状態なのです。そのような状態に陥るのを避けるために、天候によって多少違いはありますが、喉が渇いていなくても1時間で水分500mlを補給するようにしてください。秋冬はこれよりも少なくて構いませんが、高温のコンディションでは1時間にボトル1本のペースで補給してください」

6:カフェインでパフォーマンスをブーストする

ガーリングは次のように説明している。
カフェインは効果が広く認知されているサプリメントのひとつで、パフォーマンスをブーストし、疲労感を軽減し、痛みを感じにくくするという調査結果が出ています。ですが、コーヒーを飲むのと、パフォーマンス効果があるカフェイン量の摂取は大きく異なります」
カフェイン摂取にはレッドブル・エナジードリンク缶も選択肢のひとつ
カフェイン摂取にはレッドブル・エナジードリンク缶も選択肢のひとつ
「医学的な効果が認められるカフェイン量は体重1kgあたり3~6mgです。ちなみにエスプレッソ(シングル)のカフェイン量は75mgです。カフェインが血液に浸透するまでは約1時間かかり、効果の持続時間は4~6時間です。ですので、長距離レースなら中盤で75~100mgを再摂取すればレースを通じて高いパフォーマンスが維持できるでしょう」
カフェイン補給もレッドブル・エナジードリンク缶が選択肢のひとつになる。

7:ロングライド後はプロテインと微量栄養素でリカバリーする

ロングライドを終えて疲れ切っている時に自分に合ったリカバリー食を用意するのは面倒かもしれないが、そうするだけの価値は十分にある。交代して何回も走るリレー形式の長距離レースなら、このような食事は特に役立つ。ガーリングが説明する。
レース後はプロテインを補給しよう
レース後はプロテインを補給しよう
「長距離を走ると免疫システムに大きな負荷がかかるので、そのようなレースを終えたあとは体調を崩す確率が高くなります。ですので、最近話題になっているタートチェリージュースをはじめとする免疫力を高めて炎症を抑える効果があるアイテムを用意しつつ、脂分の多い野菜をしっかりと摂取してオメガ3脂肪酸のような微量栄養素も補給することが重要です」
「また、レース終了から3~4時間おきプロテインを摂取するようにしてください。プロテインは細胞を修復しつつ炎症を抑えてくれるので非常に重要ですが、摂取する頻度を高めても効果は高まりません」
「レース終了後、最初に摂取するプロテイン量は体重1kgあたり0.4~0.5gで良いでしょう。何からプロテインを摂取しても特に問題ないですが、飲料ならミルクがベストという信憑性の高い研究結果が出ています」
(了)
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