Topson on stage at TI9.
© Valve
ゲーム

【eスポーツの頂点へ】専門家が教えるトップゲーマーになるためのヒント&アドバイス

ビデオゲームはただ長時間プレイすれば上達するわけではない。科学とeスポーツの専門家たちがスキルを効率良く最大限まで高める方法を教えてくれた。
Written by Joe Ellison
読み終わるまで:10分公開日:
ビデオゲームをプレイする時間が突然増えた今の生活リズムを最大限活用したいなら、マシュー・バー博士の話を聞くべきだろう。
グラスゴー大学コンピューティング・サイエンス・センター(University of Glasgow’s Centre of Computing Science)の教員で、英国デジタルゲーム研究協会(British Digital Games Research Association)の副会長を務めるバー博士は、ビデオゲームがスキル適応能力批判的思考能力の発達にどれだけ活用できるのかについて研究を重ねている。
今回は、バー博士のアドバイスに2016年から『リーグ・オブ・レジェンド』のトッププロチームG2のヘッドアナリストを担当しているChristopher “Duffman” Duffの意見を交えながら、脳をゲームプレイの上達に活用する方法を探っていく。
彼らのヒント&アドバイスを参考にして、トッププレイヤーへの道を切り拓こう!

1:休憩を取る

OGも休憩を取りながらトレーニングをしている

OGも休憩を取りながらトレーニングをしている

© Jonanthan Oon

フレンドたちと丸1日途切れなくオンライン対戦を楽しむのは大いに結構だが、その間ずっと自分の才能を発揮し続けることは可能なのだろうか? それは不可能だと考えているバー博士は次のように説明している。
「1日6時間プレイする場合、できるだけ多くの休憩を挟む方がより優れたプレイヤーになれます。認知機能を使うアクティビティに取り組んでいる時に休憩を定期的に挟むのは、より多くの情報を脳に貯め込みつつ、脳をリチャージするのに非常に効果的です」
認知機能を使うアクティビティに取り組んでいる時に休憩を定期的に挟むのは、より多くの情報を脳に貯め込みつつ、脳をリチャージするのに非常に効果的です
マシュー・バー博士(グラスゴー大学)
Duffmanもこの意見に同意する。
バーンアウト(燃え尽き)は避けたいビッグリスクだ。『リーグ・オブ・レジェンド』のようなゲームのトレーニングでは絶対に避けたい。チームプレイと個人プレイのトレーニングをひたすら続けていけば、すぐにオーバートレーニングに陥ってしまう」
「これを避けるために、今シーズンのG2は、LEC Spring Spritの前半にこれまでよりも緩いトレーニングスケジュールを組んだ。また、チームがトップフォームへ仕上がるまでは2~3週間かかるから、プレイオフやビッグトーナメントの前には余裕を持ったスケジュールを組んでいるよ」

2:他人に教える

『リーグ・オブ・レジェンド』

『リーグ・オブ・レジェンド』

© Riot Games

ヨーダにとってのルーク、つまり、自分の弟子を探そう。バー博士は、誰かにプレイを教えることは自分のプレイの成長に繋がるとしている。
「メンタリングの専門用語のひとつに “プロテジェ効果” があります。プロテジェ(protégé)は英語で徒弟、弟子という意味ですが、誰かに教えることで情報を整理し、その情報をより効果的に適用できるようになるのです。これは、研究中の学生たちの間でよく見られる現象です」
誰かに教えることで情報を整理し、その情報をより効果的に適用できるようになります
マシュー・バー博士(グラスゴー大学)
また、バー博士は「他人のフレッシュな視点が加わることで自分の方法論の欠点が見つかる場合もあります。『リーグ・オブ・レジェンド』のような戦術が非常に重要なゲームではこのような視点は特に重要です」と加えている。

3:外気や日光を取り入れる

日光や自然に触れる時間を増やそう

日光や自然に触れる時間を増やそう

© Marcelo Maragni/Red Bull Content Pool

バー博士は次のように解説している。
「自然には人間の注意力・認知力を修復できる力があります。外出できない状況でも、窓を開けて換気したり、自然光を取り入れたりするだけでフィジカルとメンタルに大きな効果があります」
「たとえば、日光に当たるとビタミンDを体内で生成できますが、日光に当たらなければ睡眠のクオリティが下がり、認識力に悪影響が出るようになります。トッププレイを安定して発揮できるようになりたいなら、このような状況は避ける必要があります」
日光に当たらなければ睡眠のクオリティが下がり、認識力に悪影響が出るようになります
マシュー・バー博士(グラスゴー大学)
また、Duffmanも、定期的に自然の中で過ごすことがプレイヤーの能力をリフレッシュし、彼らを成功に導く助けになっているとしている。
「LEC Spring Split 2020シーズンでは、外を15~30m歩いてジムへ向かうようにしていたんだけど、これだけでも効果があった。少し身体を動かして日光を浴びるだけで、いつも立ち上がりが悪かったプレイヤーがゲーム1から活気に満ちたプレイをするようになったんだ」

4:自分のプレイを見直す

トップストリーマーのひとり、David “GrandPOOBear” Hunt

トップストリーマーのひとり、David “GrandPOOBear” Hunt

© Aaron Rogosin/Red Bull Content Pool

家庭用ゲーム機やPCで視聴できるストリーミングサービスや各種ゲーム動画が増えている今、自分のプレイの確認はこれまで以上に簡単になっているが、自分のプレイの見直しと分析はできるだけ早い段階で済ませておくのがベターだ。バー博士は次のように説明している。
「私たちが経験から直接学ぶことはありません。私たちは経験を振り返ることで学んでいくのです。自分のプレイの見直しはプレイの向上に大いに役立ちます」
「見直すまでの時間が空いてしまえば、その分だけ脳の処理スピードと精度が下がってしまうので、できるだけ早い段階で見直して分析するようにしてください」
「また、Twitchのようなストリーミングサービスを活用すれば、他のプレイヤーからほぼリアルタイムでアドバイスやフィードバックを得ることができます」
スピーディな分析の効果について誰よりも理解しているのが、データ分析を仕事にしているDuffmanだ。Duffmanはリラックスした環境でオープンマインドで振り返っていくのがベストだと考えている。
自分たちのミスを振り返るだけで多くを学べる。どこで攻撃のチャンスを逃していたのか、どこで反撃のチャンスを与えてしまったのかなどを感情に影響されることなく冷静に確認できる
Duffman(G2ヘッドアナリスト)
「実際『リーグ・オブ・レジェンド』のアナリストチームはゲーム終了直後に作業を始めるんだ。ゲーム後はプレイヤーたちが身体を動かしたり、ドリンクを飲んだり、リラックスしたりする時間が2~3分ある。そのあとでゲームをなるべく冷静な状態で振り返っていく」
「その週のトレーニング目標によって内容は変わるけれど、チームとしてできていた部分とできていなかった部分を確認していく」
「自分たちのミスを振り返るだけで多くを学べる。どこで攻撃のチャンスを逃していたのか、どこで反撃のチャンスを与えてしまったのかなどを感情に影響されることなく冷静に確認できる」

5:他人とプレイする

『レインボーシックスシージ』ではチームのコミュニケーションが不可欠

『レインボーシックスシージ』ではチームのコミュニケーションが不可欠

© Rainbow Six: Siege

どのタイミングで指示を出したり、ポジションを報告したりすれば良いのかを知っておくことは、『レインボーシックスシージ』のようなゲームで200m先の敵をスナイプしてチームに勝利をもたらすためには重要だ。
しかし、バー博士は、多種多様な性格や能力を持つプレイヤーをチームに加えることが何よりも重要だと考えている。そのような環境は全プレイヤーに良い緊張を与えるからだ。
「学生のコミュニケーションスキルに向上が見られた状況例のひとつは、異なる能力を持つ他人と一緒にプレイさせて、自分たちのコミュニケーション方法を考えさせた時でした」
「良く知っている仲間や友人とプレイする時はコミュニケーションが簡略化されます。以心伝心になるわけです。ですが、そのような慣れ親しんだ環境を離れる、つまりコンフォートゾーンの外側に出れば、コミュニケーションスキルをさらに高められます」
他のプレイヤーよりも焚きつける必要があるプレイヤーがいれば、激しく批判すると落ち込んでしまうプレイヤーもいる。ひとつのコミュニケーションアプローチだけでチームを機能させるのはまず不可能だ
Duffman(G2ヘッドアナリスト)
Duffmanは、どういう性格のプレイヤーと一緒にプレイしているのかを把握しておくことも重要だとしている。
「全員に同じアプローチでコミュニケーションを取ろうとしても意味がない。プレイヤーごとに性格が異なるから上手く伝わらない時がある。他のプレイヤーより激しく焚きつける必要があるプレイヤーがいれば、批判されると落ち込んでしまうプレイヤーもいる」
「プレイヤーによって性格が異なるから、ひとつのコミュニケーションアプローチだけで自分の意図を伝えてチームを機能させるのはまず不可能だ」
他人とのプレイからはボーナスも得られる。彼らのプレイを見て、良い部分を自分のプレイに取り入れることができるのだ。Duffmanが続ける。
「ひとりでできることは限られているから、他人のアプローチや経験を活かすことが重要だ。プレイスタイルをコピーするのもありだし、チームとしてのプレイを自分のチームのプレイに当てはめるのもありだね」

6:ゲーム環境を整える

『リーグ・オブ・レジェンド』のトップチームG2

『リーグ・オブ・レジェンド』のトップチームG2

© Lol Esports

猫背はNGだ。バー博士は、背もたれやソファに寄りかかるよりも背中を伸ばして座る方がゲームに集中できるとしており、しっかりとした作りのゲーミングチェアを購入して背中をサポートすることを推奨している。
一方、オハイオ州立大学(Ohio State University)の論文は、正しい姿勢を取ればそれだけ自分の考えに自信が持てるようになるという結果を出しており、この論文の共同執筆者リチャード・ペリーは「姿勢は他人から見た自分のイメージに影響を与えるだけではなく、自分の思考にも影響を与えることが分かりました」と語っている。
ペリーがビデオゲームを意識してこの研究を行ったわけではないが、姿勢を良くすれば自分が使うキャラクターへの理解も深まるというのは、まさにウィン=ウィンと言える。
姿勢は他人から見た自分のイメージに影響を与えるだけではなく、自分の思考にも影響を与えます
リチャード・ペリー教授(オハイオ州立大学)
また、バー博士はテレビや音楽などの “他の音” をゲーミング環境からできるだけ遠ざけることも推奨している。
「音楽を聴きながら勉強をしている学生はさほど優秀な成績を収められないというエビデンスが存在します。意識が削がれてしまうのです」
「人間の脳は何が重要で何がそうでないのかを振り分ける能力を備えていますが、人間工学に基づいてデザインされていて、ノイズキャンセリング機能もついているようなヘッドフォンを用意すればゲームプレイがさらに向上するでしょう」

7:水分を補給する

トライアスリートのルーシー・チャールズ=バークレーも水分補給の重要性を知っている

トライアスリートのルーシー・チャールズ=バークレーも水分補給の重要性を知っている

© James Mitchell / Red Bull Content Pool

親の小言のように聞こえるかもしれないが、水分補給をしておくことが『FIFA』シリーズのトッププレイヤーとノーマルプレイヤーの差に繋がる。バー博士は次のように説明している。
「ほんの少し水分が不足しているだけで集中力が失われ、認識力が下がり、運動機能に悪影響が出るという有力なエビデンスが存在します。集中力、認識力、運動機能はどれもゲーマーには欠かせない能力です」
ほんの少し水分が不足しているだけで集中力が失われ、認識力が下がり、運動機能に悪影響が出るという有力なエビデンスが存在します
マシュー・バー博士(グラスゴー大学)
世界最大のeスポーツトーナメントでも水分不足で調子を崩してしまうチームがいるとしているDuffmanは次のように語っている。
「水分補給を失敗すれば大きな問題を抱えることになる。プレイヤーのフィジカルメンタルレベルが下がってしまうんだ。水分補給を怠ってしまうと、プレイヤーたちから精気が失われ、チームのムードが下がるのが手に取るように分かる」
トップパフォーマンスを維持するためには、エナジーレベルの維持も重要になる。G2もレッドブル・エナジードリンクに幾度となく救われてきたと振り返るDuffmanは、飲むタイミングが何よりも重要だとしている。
ゲーム開始直前にレッドブル・エナジードリンクを飲むのがベストだということが分かったんだ。このタイミングで飲んでおけばゲーム開始時にエナジー満タンになるのさ」
「ゲームから次のゲームまでの時間は短いけれど、ここでもちゃんと飲んでエナジーレベルを維持することが重要だ。補給をミスするとパフォーマンスが下がってしまう」
Twitterアカウント@RedBullGamingJPFacebookページをフォローして、ビデオゲームやeスポーツの最新情報をゲットしよう!