Red Bull athlete Catie Munnings training in the gym
© Olaf Pignataro / Red Bull Content Pool
フィットネス

【HIIT】高負荷インターバルトレーニング初心者用ガイド

HIIT(高負荷インターバルトレーニング)に週数回取り組むだけでフィットネスと筋力がアップする。HIITの概要・注意点・メニューを解説しよう。
Written by Suzanne Elliott
読み終わるまで:11分公開日:
数年前から文明社会と無関係な生活を送っている、あるいはInstagramフィードのチェックをサボっている人でもない限り、HIIT(High-Intensity Interval Training:高負荷インターバルトレーニング)という単語を聞いたことがあるはずだ。
HIITとは、フィットネスにコンシャスな人たちがソーシャルメディアに投稿されているフィットネス系インフルエンサーたちのワークアウトを参考にして自宅や公園で取り組んでいるトレーニングの一種だ。
では、HIITのどこが優れているのだろう? どのようなエクササイズで構成され、どのような効果があるのだろう? 遅まきながらHIITのトレンドに乗るなら、どこから始めれば良いのだろうか?

HIITとは?

HIITHigh-Intensity Interval Training:高負荷インターバルトレーニング)とは、短時間・高強度のエクササイズ短時間の休息(または低中強度のエクササイズ)を交互に繰り返すトレーニングメソッドだ。

HIITのメリット

HIITによりVO2maxが15%向上することが研究によって示されている

HIITによりVO2maxが15%向上することが研究によって示されている

© Julian Sarracino / Red Bull Content Pool

まず、HIITの大きな利点はその取り組みやすさにある。ジムの会員になったり、特別な器具を揃えたりする必要はなく、少しの時間(初心者なら20分が妥当)と正式なスポーツシューズがあればすぐに始められる。
また、HIITは心肺系を鍛える素晴らしいトレーニングメソッドだということも同じくらい大きなメリットと言える。
Tailor Made FitnessのCEOを務めるパーソナルトレーナー、クリス・アントーニは、スクワットやプレスアップ、ランジなどのエクササイズで全身の筋力アップと平行してHIITセッションを定期的に取り入れれば酸素消費量が向上するため、低中強度のエクササイズを長期間続けるよりも大きなフィットネス効果が得られるとしている。
HIITの効果を検証した初期研究のひとつは、4分間の高強度サイクリングを週5回行った人のVO2max(最大酸素摂取量:エクササイズのエナジーに利用できる最大酸素量)が6週間で15%アップしたのに対し、低中強度のエクササイズを週5回行った人の上昇率は10%に留まったという結果を出している。
また、HIITは健康に問題を抱えている人にも効果があるという結果を出している研究もある。
トゥルク大学(フィンランド)で2017年に行われた研究は、2週間のHIITによるグルコース代謝の上昇率と2型糖尿病・前糖尿病患者のインスリン感受性の上昇率は、同期間の低中強度のエクササイズの上昇率より高かったとしている。
同じく2017年にフロンテラ大学(スペイン)で行われた別の研究は、HIITに2ヶ月取り組んだ高血圧症者の血圧が安定したという結果を示している。
さらに、HIITは驚くほど効率的にカロリーを燃焼させる。『Journal of Strength and Conditioning Research』誌上で発表された研究論文は、HIITは同じ時間のレジスタンストレーニングやサイクリング、トレッドミルランより25%〜30%も多くのカロリーを燃焼するとしている。
また、HIITの効果はエクササイズ後も持続する。高強度エクササイズは低中強度のエクササイズ(あるいは休息状態)より多くの酸素を必要とするため、代謝がより高くなる。
代謝が高い状態はより多くのカロリーが燃焼されることを意味する。身体はいち早く通常の休息状態に戻ろうとするのだ。
『Sports Medicine Open』誌で2015年に発表された研究論文は、HIIT後のアフターバーン効果(エクササイズ後のカロリー燃焼)はジョギングやレジスタンストレーニングよりもはるかに高いとしている。

初心者がHIITを始めるには

HIITを始めるにはジムのクラス受講が最適

HIITを始めるにはジムのクラス受講が最適

© Alessandro Dealberto/Red Bull Content Pool

The Fit Mum Formulaのディレクターを務めるポリー・ヘイル“高強度” には個人差があるとしている。初心者なら慎重に始めることが重要となる。いきなりバーピーを30分続けるような無謀な行為はNGだ。
ヘイルは次のように切り出す。
「20秒の早歩きと30秒の静止を数セット繰り返すのが高強度だと感じるようなら、そこがスタートポイントになります。そこからより高難度のエクササイズに取り組んでいきましょう」
強度を上げるタイミングが早すぎるとモチベーションの喪失に繋がる。フィットネスは定期的・集中的なセッションを通じて高まっていく。時間と共にハードで長時間のセッションがこなせるようになるので焦る必要はない。また、一度結果が見えれば、結果に刺激されて継続できるようになる。
アントーニは、初心者はYouTubeをチェックして基本を正しく把握することを推奨している。怪我を予防するためには、フォームやテクニックを正しく押さえておくことが重要となる。
初心者向けのクラス受講もモチベーションを高めるのに効果的だ。ここで基礎を学び、自分で取り組んでいこう。また、パーソナルトレーナーとセッションを数回こなすのも良いスタートポイントになるだろう。

実現可能なプランを立てる

目標を設定することで苦しいトレーニングも乗り越えられる

目標を設定することで苦しいトレーニングも乗り越えられる

© Jürgen Skarwan / Red Bull Content Pool

目標を明確にすればモチベーションが生まれるが、大きな目標を掲げる必要はない。「バス停まで走れるようになる」といったシンプルなものでOKだ。実際、目標の実現可能性が高いほど、モチベーションと集中を保ちやすくなる。
なりたい自分をイメージできたら、今度はそこに到達するためのプランを立てよう。プランを用意すれば集中を保てる上に進捗の確認もしやすくなる。進捗の確認もモチベーションアップに効果的だ。

ワークアウトの強度設定

HIITの強度設定について、アントーニは次のように説明する。
「ワークアウトの強度は、個人のフィットネスレベルによって変わってきます。怪我を避けつつ、できる限りプッシュしてください。ワークアウトの効果は正しいテクニックでのみ得られるということを覚えておいてください。間違ったテクニックでは効果は得られません」

最大効果を得るための頻度

HIITの効果を最大限に得るには週合計150分間のセッションが推奨される

HIITの効果を最大限に得るには週合計150分間のセッションが推奨される

© Lin Cheng-De / Red Bull Content Pool

HIITの効果を最大限に高めるには、自分のフィットネスレベルに応じて週5回・各30分の集中的エクササイズを行うべきだとアントーニは推奨する。しかし、ハードかつ定期的に取り組めば週3〜4回でも十分な結果が得られる。
アントーニは次のように説明する。
「10分のワークアウトから始め、スタミナと筋力の向上に合わせて15分、20分、30分と時間を少しずつ延ばすのがベストだと思います。ある程度フィットしている人なら20分〜40分に延ばせます。十分にフィットしている人なら40分〜60分でも問題ないでしょう」
また、本当に時間に余裕がなくても、たった1分でも何もないよりはまし」になる。ポリーが次のように補足する。
「ワークアウトに1分しか割けないなら、その1分を正しく使いましょう。1日1分でも驚くほど効果がありますよ」

ウォームアップは必須

どのようなメニューであれ、HIITセッション前には必ずウォームアップを行うこと

どのようなメニューであれ、HIITセッション前には必ずウォームアップを行うこと

© Alessandro Dealberto/Red Bull Content Pool

必ずウォームアップを済ませてからHIITに取り組もう。その理由についてアントーニは次のように説明する。
「ウォームアップを行えば、心拍数が上がって血液循環が良くなり、ハードなワークアウトへの準備が整います。ですので、私はウォームアップは必須だと指導しています。ウォームアップを正しく行えば、関節が柔らかくなり、筋肉へ向かう血流量が増加します」
また、肉離れや怪我のリスクを抑えるために、ワークアウト後はダイナミックストレッチを必ず行いたい。

モチベーション維持の方法

HIITはハードなので、継続するにはモチベーションの維持が重要になる。アントーニは次のように語る。
「モチベーションの維持に関するベストアドバイスは『一貫性を保つ』です。正しいトレーニングを続ければ、必ず結果が見えてきます。HIITはハードですが、自分を信じてポジティブに取り組み続けましょう」
自分を他人と比較するのもNGだ。他人との比較がモチベーションを瞬時に奪う可能性がある。アントーニが続ける。
「トレーニングは個人的なプロセスです。自分のフィットネスを高められるのは自分だけです。モチベーションを高め、トレーニングを継続したいと思わせてくれる人たちがいる環境に身を置きましょう」

クリス・アントーニが提案する《初心者用20分HIITワークアウト》

《ウォームアップ》
  • 足踏み(ダッシュ):20秒
  • ジャンピングジャック:20秒
  • ヒールフリック:20秒
上記3種目1セット x 5回
《メインワークアウト》
各エクササイズは30秒。ひとつ終わるたびに30秒の休息を入れる。エクササイズ1〜9を1セットとし、2セットからスタートして徐々にセット数を増やしていく。
エクササイズ1:膝を高く上げて足踏み(ダッシュ)
効果:体幹の強化、脚の筋力アップ、心拍数向上。身体の協調性と柔軟性も向上する。
方法:ダッシュで足踏みをする。胸に引きつけるようなイメージで膝をできるだけ高く上げる。肘は90°に保ち、後ろへ引くように腕を振る。
エクササイズ2:スクワット
効果:大腿四頭筋・ハムストリング・ふくらはぎ・脊柱起立筋(背筋群)を強化する。
方法:顔を前に向けて立ち、胸を張る。両足は肩幅またはそれよりも少し広いスタンスにする。バランスをキープするために両腕をまっすぐ前へ伸ばす。そのまま椅子に座る時のようなイメージで腰から落としていく。
上半身が前に傾き始めるのを顔を正面に向けて防ぐ。背中は丸めず、腰を落としながら少し反らすイメージ。大腿部を床と平行になるまで沈ませて、膝はくるぶしより少し前で止める。
ここからかかとに体重をかけて身体を元の位置に戻していくが、膝がつま先より前に出ないように注意する。全身に力を入れ、かかとから上を同時に立ち上げるイメージで最初のポジションへ戻る。
エクササイズ3:ボックスプレスアップ / フルプレスアップ
効果:上半身・前腕部・手首の筋力アップ。
方法:両手を肩幅に合わせて床につき、両足は揃える。身体を伸ばしたまま床に近づけ、腕の力で元の位置へ戻る。身体を支えるのが難しい場合は、足裏の母指球の代わりに膝を床につけて行う。
エクササイズ4:マウンテンクライマー
効果:心肺持久力・体幹・敏捷性を高める優秀な全身エクササイズ。
方法:フルプレスアップのポジションを取り、体幹に刺激を入れながら肩・尻・足を一直線にする。片方の膝を胸に引き寄せたあと元の位置に戻す。これをなるべく速いテンポで左右交互繰り返す。
エクササイズ5:ランジ
効果:脚の主要筋群を集中的に鍛え、大臀筋・ハムストリング・ふくらはぎを強化。バランスの向上にも最適。
方法:右足を前に向けて踏み出し、尻と膝を使って左膝を床につく直前まで垂直に下げていく。右脚の筋肉を使って元のポジションへ戻っていく。足を入れ替えて同じ動作を繰り返す。
エクササイズ6:ディップス
効果:三頭筋に働きかけつつ、胸・肩の筋力を鍛える。
方法:ベンチに座り、両サイドに手を置く。両手はベンチの縁(へり)に置いたまま、床へ向かって身体を下げていく。腕が90°の角度になるまで身体を下げたら1〜2秒キープして元のポジションに戻る。
エクササイズ7:プランク
効果:体幹・腹横筋(腹部の奥にある筋肉)・多裂筋(脊柱の奥にある筋肉)・横隔膜・骨盤底を強化する。
方法:床にうつ伏せになり、肩の位置に肘を置く。腕の幅は肩幅と同じで、肘は90°の角度に保つ。そのまま身体を浮かすが、かかとから頭までが一直線になるようにする。腹筋に刺激が入っていることを確認しながら、姿勢を維持する。
エクササイズ8:サイドプランク
効果:主に斜筋に働きかけるが、肩・体幹・腰を含む全身側面部に効果がある。
方法:脇腹を下に向けて横になり、両足は揃えて重ねる。下側の前腕部を肩の真下に置く。体幹に刺激が入っているのを確認しながら、頭からつま先までが一直線になるように腰を持ち上げる。
肩の力を抜き、肩を耳に近づけないようにする。この姿勢を維持する。腰が下がらないように注意する。
エクササイズ9:アブクランチ
効果:腹直筋(脊柱を支える腹筋内部の層)に働きかける。体幹を強化するため姿勢の向上にも役立つ。
方法:床へ仰向けになり、膝を曲げ、足裏は尻の幅で床につける。両腕は太ももや胸の上、耳の後側など、自分がやりやすい位置に置く。
体幹に刺激を入れながら、上半身を膝に向けてゆっくりと引きつけていき、両肩が床から7.5cmほど浮いた状態まで持ち上げる。数秒間ホールドしたあと、元のポジションに戻す。