WRCカレンダー屈指の高速ステージを擁するラリー・フィンランドはドライバーたちが披露するフルスロットル・ジャンプが有名で、マシンがジェットコースターのごとく連続するクレストを豪快に飛び越えていく姿が確認できる。
フィンランド語でジャンプは “ヒッピー(hyppy)” だが、極度の緊張を伴うトランポリンの連続に「ラブ&ピース」は感じない。
WRCマシンを正しくジャンプさせれば、パーフェクトな空中バレエが披露できる。しかし、ひとつ間違ってしまえば、運が味方をしてもマシンはひっくり返ってバラバラになってしまう。運が味方をしなければ深刻な怪我を負ってしまうだろう。
幸いなことに、我々には正しいジャンプを伝授してくれるエキスパートがついている。
“ラリー界のモーツァルト” の異名を持つカッレ・ロバンペラを紹介しよう。現在18歳のロバンパラは、モーツァルトが交響曲を初めて作曲した歳と同じ8歳でラリーマシンを初ドライブした。
18歳を迎えたロバンペラは、WRCファクトリーチームとの契約も目前とされているが、経験はもはやベテランの域で、地元のラリー・フィンランドの参戦経験は特に豊富だ。
というわけで、正しいジャンプのやり方を早速教えてもらおう。
1:クレストの形状と着地後のマシンを明確にイメージする
「クレストはブラインドだから、その先をイメージしなければならない。躊躇すればクラッシュしてしまう。事前にプランを用意しなければならない。どれだけジャンプして、どうやって着地するのかを考えておくんだ」
「プランが決まっていれば自信を持ってジャンプできる。ラリー・フィンランドのようなイベントでは自信がすべてなんだ」
2:クレスト前にブレーキングを完了する
「クレストの前に左足でブレーキペダルを踏むんだけど、マシンの姿勢をコントロールするためのブレーキングだから踏み込みはごくわずかだ」
「ラリーでは、アクセルを踏み続ければマシンのフロント側が浮くし、ブレーキを踏み続ければフロントが沈み込むんだけど、マシンはできるだけ水平にしておきたい」
「だから、ジャンプを飛び出す直前にブレーキを繊細に操作してマシンの姿勢をコントロールするんだ」
3:テイクオフの瞬間にブレーキから足を離す
「これは非常に重要なポイントだ。テイクオフの瞬間にブレーキを踏むと、フロントが極端に沈み込んでしまう。これがマシンが何回も回転するビッグアクシデントが起きる原因だ」
「テイクオフの数メートル手前でブレーキペダルから足を離し、着地と同時にスロットルを踏み込もう」
4:ステアリングは真っ直ぐをキープ
「もうひとつ重要なのは、空中ではステアリングを真っ直ぐな状態に保つことだ。ステアリングがロックしていると横転してしまう。だから、ホイールを真っ直ぐにしてクリーンに着地する必要がある」
「ステアリングを切って良いのは、ホイールが地面に接地している時だけだ」
5:着地に備える
「正しいジャンプができれば、着地の衝撃はそんなに大きくならない。それでも振り回される時があるから、リラックスして深呼吸しておく必要がある。マシンが着地したらフルスロットルにして、なるべく早くグリップを得よう」
「ジャンプはステージの一部に過ぎないけれど、フィンランドのラリーステージには沢山のジャンプスポットがある。そういうステージで大事になるのは、ジャンプを楽しみつつ、次のジャンプに素早く備えることだ。集中を切らすのはNGだよ!」