サーマルタイツはライディングショーツの下に着ても違和感なし
© Michael Tærsbøl Jepsen/Red Bull Content Pool
MTB
寒さに負けるな! MTBライダーのためのレイヤーガイド
真冬のMTBライドを温かく快適に過ごすための実践的なヒントを詳しく解説する。
Written by Ric McLaughlin
読み終わるまで:5分Published on
凍てつくような北半球の冬の寒さの中でライディングを続けようとする時は、正しいレイヤリングの知識がこの上なく役立つ。しかし、どんなに高価で分厚いジャケットを羽織っていたとしても、その下にどんなレイヤーを重ねるかについて気を配らなければ意味がない。
念頭に置いておくべき第一の鉄則は「ライディング前は寒さを感じていろ」だ。気温が氷点下近くまで下がると、どうしてもレイヤーをいくつも重ね着して、さらにその上にジャージを重ねて出かけたくなるものだ。たしかに何枚も着込んでおけば最初は暖かく感じるだろう。しかし、登り坂のひとつもこなして体が温まれば、Goretex製のジャケットを脱ぎ捨ててしまいたい衝動に駆られるはずだ。ライディング時の体の発熱をあらかじめ考慮し、適度なレイヤリングを心がけておけば、ウェア類が正しく機能し、体温が適切に保たれたままライディングを楽しめるようになるのだ。
今回はレイヤーに関する正しい知識を身につけるためのヒントを、ベースレイヤーから順を追って紹介しよう。

1.ベースレイヤー

ベースレイヤー姿のロイク・ブルーニ© Bartek Woliński/Red Bull Content Pool
冬のライディングを温かく楽しむためには、ベースレイヤーを正しく着ることがまず何よりも重要だ。ベースレイヤーは肌の上に着るので、体温を調節する機能の優劣が快適性に直結する。体温を保ちつつも、汗をしっかりと放出してくれる機能性素材が大いに役立つだろう。
寒さが特に厳しい地域に住んでいる場合は、メリノウール製の長袖ベースレイヤーは高価だが買っておいて決して損はないアイテムだ。メリノウールは化繊素材に比べ数段温かく、汗を逃す機能も高い。しかも素材自体が天然の抗菌・防臭機能を備えている。
ただし、ベースレイヤーは使用後毎回洗濯するようにしたい。肌に直接触れるものである以上、常に清潔にしておくことを心がけておこう。

2. ミッドレイヤー

ロードサイクル用長袖ジャージはMTBライダーにもおすすめ
ロードサイクル用長袖ジャージはMTBライダーにもおすすめ© Daniele Molineris/Red Bull Content Pool
ミッドレイヤーとはその名の通り、ベースレイヤーとアウターの間に着る中間着のこと。MTBの場合、通常の長袖のライディングジャージがこれに相当する。
市場には冬季のミッドレイヤーとしての使用を想定したジャージも出回っているが、ロードサイクリスト用ジャージも選択肢に入れておこう。MTBライダーが春や夏に着用しているジャージと比べると、ロードサイクリスト用ジャージはアウターとしての着用も想定したタイトフィットで厚めなデザインになっており、背中にはポケットも複数備えられている。これらのポケット類には予備のサイクルベストやダウンヒル用の薄手のグローブなどを収納できるので便利だ。

3. アウター

余分な汗を逃して保温することが肝心
余分な汗を逃して保温することが肝心© Mattias Fredriksson
アウターに着用するジャケットは他人の目にも触れる部分になるため、ちょっと格好つけてみたくなる気持ちも十分理解できる。ジャケットの見た目の良さやポケットの使いやすさ、カラーなども大事だが、どんなジャケットを選ぶにせよライディングに最適な体温を維持するための機能性を最優先しよう。
袖や首元がアジャスタブル仕様になっているものは、体の熱を逃がさずに余分な汗を蒸散させるのに役立ち、ジッパー部分に大きめのタグが追加されていればグローブを着用した状態での操作も楽になる。防水機能は必須だが、必ずしもダウンなどのインサレーションはマストではない。高価なダウン素材を使ったジャケットに大枚をはたくより、アウターは防水性シェル1枚にしておいて、寒さに応じてミッドレイヤーの追加で対応する方が賢明だ。
しかし、防水性素材を使ったジャケットはコーティングが剥がれてしまうと役立たずになってしまうので、洗濯時の取り扱いについては十分に注意しよう。首元を温かい状態に保ってくれるネックウォーマーは、ジャケットの首元から逃げようとする熱を封じ込めることができる上に着脱も簡単なので、非常に使い勝手の良いレイヤーのひとつだ。

4. 手足などの防寒対策

冬のMTBライドではグローブが欠かせない© Rutger Pauw/Red Bull Content Pool
手と爪先は心臓から最も遠いため、体の中で最も冷えやすく温まりにくい部分だ。オールシーズン用ライディンググローブも悪くないが、手を温めるには不向きなので、なるべく冬用のグローブを身に付けたい。ただし、ハンドルバーを握っているうちに手のひらは非常に温かくなるため、手のひら部分が適度に薄いグローブを選びたい。この部分が厚すぎると、アームパンプ(腕上がり)を誘発する可能性もある。
ビブ・ショーツも体を温かく保つのに役立つが、3/4レングスのものを選べばより温かさを保つことができる。ライディングシューズの上からすっぽりと覆う防寒用オーバーシューズもポピュラーだが、泥だらけのトレイルでこれを使用すると冷たい泥や水がまとわりついた状態のままになることも多く、むしろ寒さを助長する可能性もあるので注意したい。冷たい泥水でびっしょりと濡れたオーバーシューズを冷えきった手で取り外す作業はなんとも惨めな気分になるものだ。
分厚く編まれたヘビーデューティな防寒ソックスも薦めておきたい。予算に余裕がある人は、防水機能を備えたソックスを選ぶのも良いだろう。

5. その他のヒント

完全装備で冬のルルドに挑むアーロン・グウィン© Bartek Woliński/Red Bull Content Pool
ライディング用のアイウェアやゴーグル類は冷たい風から目の周りを防ぎ、泥などの飛散物が目に入ることも防いでくれる。
エナジーバーなどの補給食を常に取り出しやすい場所に入れるようにしておけば、バッグの中身を漁る時間が省略できる。
ランチ休憩の際は、できればヘルメットを被ったままにしておくこと。周囲からは単なる面倒臭がりと思われるかもしれないが、汗を吸ったヘルメット内部のパッドが外気で冷え切って氷の塊のようになるよりは良いだろう。
ライディングの1日を終え帰宅準備をする際、スリッポンタイプのサンダルが一足あると役立つ。さっと履き換えることができる上、帰り仕度の際にわざわざ靴を汚すことなくスムースに作業できる。
MTB