Madam X takes to the roof for a livestream
© Madam X
ミュージック

【トップDJのやり方】自宅からライブストリーミング配信おすすめ機材&注意点を解説

自宅からDJプレイを配信するにはどのプラットフォームや機材がいい? 何に注意すればいい? 世界のトップDJ3人がヒントとアドバイスを送ってくれた。
Written by Tom Ward
読み終わるまで:10分最終更新日:
近年、DJが自宅のリビングや屋上などから極上のDJ MIXを生配信してくれる機会が増えたことは、ある意味ではうれしい変化かもしれない。
そしてもちろん、自分もそういうパフォーマンスをしたいと思っている人は少なくないだろう。しかし、いきなりストリーミングを始める前に、セットアップについていくつか考えておく価値は十分にある。
片付けていない食器が見切れないようにストリーミングするにはどうしたら良いのだろうか? スマートフォンに直接レコーディングする方法はあるのだろうか? Twitch、Instagram、それとも『フォートナイト』? どれが正しいフォーマットなのだろうか?
このような疑問の回答を得るために、我々はDJ Madam(自宅からBoiler Roomのライブストリーミングを行った)、BBC Radio 1 XtraのDJでライブストリーミングに詳しいJamz Supernovaオンラインフェスティバルを開催しているドラムンベースコレクティブGoat Shed Musicを率いるAdam Slevinの3人に話を聞くことにした。
早速彼らの回答をチェックしていこう。

カメラはiPhoneで大丈夫

最初に言っておきたいことがある。プロ仕様のスタジオセットアップが用意できていなくても気にすることはない。Jamz Supernovaは、手元にあるものを最大限活用すれば良いと、次のように説明している。
「私のセットアップはスーパーDIYなの。まず、カメラはiPhone 8 Plusのカメラよ。最近のスマートフォンなら、レンズが傷んでいない限りクオリティは問題ないわ。あとはAmazonでiPhone用の三脚を手に入れた。それをマイクスタンドに装着して正しいアングルを手に入れている」
カメラアングル、デコレーション、植物、小物を増やせば増やすほどエンゲージメントは高まっていく
Madam X
「自宅ではDJブースの正面にカメラを置けないから、横から撮っているんだけど、オーディエンスが時々顔を見られるようにすることが重要だと思う。アイコンタクトは、オーディエンスが自分と繋がっている感覚を得るためにはとても重要だから、私もカメラから離れた位置に来ると顔が映るようにしているわ」
Madam Xも手元にあるもので十分だと考えている。
エンゲージメントを高めてオーディエンスと繋がっていくことが大事ね。カメラアングル、デコレーション、植物、小物などを増やせば増やすほどエンゲージメントは高まっていく。でも、どれも必要不可欠ではないわ。iPhone、ラップトップ、ウェブカメラ、GoProなど、自分の手元にあるものから始めれば良いと思う」
Adam Slevinは、新たに機材を手に入れたいならLogitech製品をチェックすべきだとしている。
「Logitechはプラグ&プレイのカメラを数多くリリースしているからね。コンピューターに繋ぐだけで使えるんだ。Logitech製品はFacebookと連動させるのも簡単だし、OBS Studioも簡単に認識してくれる。価格帯もエントリーレベルからプロレベルまで揃っているよ」
「カメラアングルは正面が一番好きだね。ワイドに撮って、窓や植物などの背景を少し入るようにしたい。DJセットアップの全体図と、自分がそこで何をしているのかを映しつつ、その周囲も少し紹介してあげるんだ」
Goat Shedのストリーミングフェスティバルはユニークなロケーションで開催されている

Goat Shedのストリーミングフェスティバルはユニークなロケーションで開催されている

© Adam Slevin / Goat Shed

複数のストリーミングプラットフォームを試す

ストリーミングプラットフォームは多種多様で、自分の好みで選べば良い。もちろん、FacebookInstagramはシンプルで使いやすいが、最近は『フォートナイト』『マインクラフト』で配信しているアーティストもいる。常識の外側で考える必要があるのだろうか?
Madam Xは次のように回答している。
「自分が何をどう配信したいのかによって選ぶべきプラットフォームが変わってくると思う。エンゲージメントを最大限まで高めたいなら、当然、多くの人が使っているプラットフォームを選ぶべきね」
「そういう意味ではInstagram Liveが良いのかもしれないけど、音質がそんなに良くないし、約1時間で切れてしまう。Facebookも使い勝手は良いけど、メジャーでコマーシャルなトラックをプレイすると著作権の関係でカットされてしまうことで有名よ」
背景は魅力的に飾り付けるか、シンプルにまとめるかのどちらかね。散らかっている部屋はNGね。インターネットミームになるだけ(笑)
Jamz Supernova
Jamz Supernovaは次のように語る。
IGTVは何回か使ったことがある。最初は問題なかったけど、2回目はWi-Fiの接続が不安定になってしまったの。だから、代わりに4G回線を使ったんだけど、こっちの方が上手くいったわ。IGTVは著作権が引っかかるって言われているけど、私のセットの大半はクラブミュージックだから問題ないわね」
Twitchはかなりスムーズで、Twitchのコミュニティから新しいファンを得られるというアドバンテージもあるわ。ドネーション機能が付いているから投げ銭できるのも魅力ね。今は誰もが大変な時期を送っているはずだけど、Twitchのコミュニティは太っ腹よ(笑)。UKのアーティストではPlasticianがTwitchでかなり好調ね」
「あと、YouTubeには録画済みの動画をライブストリーミングとして配信できるアドベンテージがある。決められた時間にその場にいなくてもOKだし、接続や機材でトラブルを抱えてしまった時にも便利ね」

背景に気をつけよう

Madam Xは次のように説明する。
日光植物はストリーミングに個性を加えてくれるわ。でも、自分が醸し出したいムードによって何を使うかは変わってくる」
「あと、ストリーミングでは構図フレームを考えるべきね。自分を中心に据えるべきよ。表情が見えなくなってしまうほど遠すぎなくて、セットアップや操作が見えないほど近すぎない構図を目指すべきね」
植物が自宅にないという人も心配する必要はない。Jamz Supernovaは次のアドバイスを送っている。
「正直に言わせてもらうと、ストリーミングで映っている植物をみんながどうやって管理しているのか想像もできないの。私は水をあげる必要がない植物でもダメにしてしまうくらいだから、植物を家に置くのは向いていない(笑)」
Madam XのNTS用セットアップ

Madam XのNTS用セットアップ

© Madam X / Twitter

「背景は魅力的に飾り付けるか、シンプルにまとめるかのどちらかね。散らかっている部屋はNGよ。インターネットミームになるだけ(笑)。ストリーミングは自宅に人を呼ぶようなものだから、自分を上手く伝えられるように絵やインテリアを上手く配置しつつ、いくつかの記念品も配置するようにしているの」
ライティングも考えるべきだと思う。ダークなセットをプレイしているならライティングは暗くするべきだと思うし、アップテンポで楽しいなら明るくするべきだと思う。私は自然光が好きだから、いつもカーテンを開けているわ」

サウンドクオリティを調整する

スマートフォンのマイクで音声を拾いつつ不安定な接続状態で配信すれば、音質が酷くなり、タイムラグも生じてしまうだろう。しかし、有り難いことにこの問題を解決するためのシンプルな方法がいくつかある。Madam Xは無料で使用できるOBS Studioを推奨している。
「私は無料のOBS Studioを愛用しているわ。自分のストリーミングをレコーディングして、好みのプラットフォームにアップロードできるソフトなの。理解するまで少し時間がかかるかもしれないけど、YouTubeにチュートリアルが沢山あるし、理解してしまえばあとは簡単よ」
「あとは、DJミキサーのアウトプットをコンピューターのインプットに繋ぐオーディオインターフェイス(サウンドカード)もサウンドクオリティを高めてくれる」
Jamz Supernova は、音質を高めるためのアドバイスを次のように送っている。
EVERMIX / EvermixBox4という名前の小型のオーディオインターフェイスがあるの。DJミキサーのアウトプットを直接スマートフォンに接続できるから、TwitchやIGTVの音質を高めてくれる」
「また、EVERMIXのアプリを使えば、スマートフォン上にミックスをレコーディングできるの。音質はとても良いし、MixCloudやSoundCloudにそのままアップロードできる」
「あとは、DJミキサーのアウトプットをオーディオインターフェイス経由でコンピューターのインプットに入れつつ、OBS Studioでスマートフォンのカメラを認識させて、TwitchやYouTubeでストリーミングしてもOKよ」
セットアップを必ず事前にテストすることが重要だ。ストリーミングを始める前に自分で状態を確認しよう。サウンドチェックをして、問題が見つかったら修正しよう
Adam Slevin(Goat Shed)
Madam XとJamz Supernovaと同じように、Adam Slevinもオーディオインターフェイスを勧めている。
「ストリーミングの音量を良好に保つための便利な方法は、DJミキサーのマスターアウト(master out)ではなくレコードアウト(rec out)をソースに使う方法だ」
「この接続をすれば、自分の手元で音量を変えてもストリーミングの音量には影響しない。ストリーミングのサウンドを割れさせないようにするためにはこのテクニックはとても重要だ。さらにオーディオインターフェイスがあれば音量を丁寧にコントロールできる」
「あとは、マイクで拾わないでDJミキサーのアウトプットを使用することと、セットアップを必ず事前にテストすることも重要だ。ストリーミングを始める前に自分で確認するようにしよう。サウンドチェックをして、問題が見つかったら修正しよう」
ダークなセットなら照明もダークにしたい

ダークなセットなら照明もダークにしたい

© Adam Slevin / Goat Shed

近所の迷惑にならないように

いつもはとてもおおらかな隣人も、3時間連続で激しいダンスミュージックを聴かされたらさすがに文句のひとつも言いたくなるはずだ。Jamz Supernovaは騒音対策について次のようにアドバイスを送っている。
「近所迷惑にならないように、隣の人や下の人にあらかじめ教えておくのがベストね。自分が何をする予定で、何時間続くのかをタイミング良く伝えておくべきだわ。ストリーミングの途中に呼び出されたり、ドアを叩かれたりすれば、バイブスが失われてしまう」
「私がストリーミングをする時は、部屋のドアを閉めて音量をしぼっているし、基本的にはヘッドフォンの中でミックスするようにしている。Adamのアドバイスにもあったけど、DJミキサーのレコードアウト(rec out)からオーディオを送れば、オーディエンス側の音量は問題ないはずよ」
マイクスタンドや三脚を活用しよう

マイクスタンドや三脚を活用しよう

© Adam Slevin / Goat Shed

情報を拡散しよう

どんなパフォーマンスにもオーディエンスが必要だ。ストリーミングではオーディエンスとダイレクトに触れ合うことはできないが、エンゲージメントを高める方法はいくつも存在する。そのひとつは、自分のストリーミングをなるべく多くの人に知ってもらうことだ。
近所迷惑にならないようにするためには、隣の人や下の人にあらかじめ教えておくのがベスト
Jamz Supernova
Jamz Supernovaは次のようにアドバイスを送る。
専用のアートワークを用意したあと、そのアートワークに時間やプラットフォームなどの情報を載せてプロモートできれば最高ね。ストリーミングが終わったあと、ダイジェスト動画を用意して次のストリーミングのプロモーションに使うのもグッドアイディアだと思う」
「告知は1日前でも全然問題ないと思うし、Twitterでツイートを予約したり、友だちに頼んだりして、ストリーミング中にもどんどんプロモーションするべきだと思う。あと、ストリーミング中は手元にマイクがあると便利ね。オーディエンスとコミュニケーションが取れるから」
「そして最後に楽しむこと。自宅は快適だけど、それでもライブストリーミングは緊張する。でも、そんなことは言っていられない。自分のストリーミングが誰かの1日を左右する可能性があるんだから」
一方、Madam Xは告知を重視せずにゲリラ的なライブストリーミングを楽しんでいる。
「最近は今日が何曜日か分からない人もいるくらい籠もっているわけだから、告知なしで驚かせるのが最も効果的だと思ってるの。ライブストリーミングやオンラインコンテンツは飽和状態だから、正直、プロモーションしても意味がないと思っている」
「ちゃんと準備したあと突然ストリーミングを始めてみんなを驚かすのは最高に楽しいわ。でも、何よりも大切なのは、自分のためにやって自分が一番楽しむことね」