マラソン

マラソン:サブスリー達成のヒント

© Virgin Money London Marathon
Written by Charlie Allenby
アマチュアランナーの大いなる壁 “フルマラソン3時間切り” を実現するためのヒントを、英国人ランニングコーチが解説する。
フルマラソン3時間切りを指すサブスリーは、平均的なランナーより実力がある証明となる。世界のトップレベルから1時間しか違わないのだから、確かにそうだ。
では、サブスリー達成には何が必要なのだろうか? アマチュアランナーが実現できる目標なのだろうか?
ロンドンマラソンに参加した1万人以上のアマチュアランナーを対象にStravaが実施した調査は、2018年にサブスリーを達成したランナーたちはサブフォー(パーソナルベスト4時間切り)レベルのランナーの約2倍のトレーニングをこなしたという結果を示している。
サブフォーランナーが平均週4回のセッションに取り組み、合計33.1マイル(約53km)を走っているのに対し、サブスリーランナーたちは平均週8回のセッションに取り組み、走行距離の合計は65.9マイル(約106km)に達している。
しかし、単純にトレーニング量を2倍にすればサブスリーを達成できると考えるのは早計だ。
「何よりもまず、そのランナーの身体的特徴に依る部分が非常に大きいですね」と語るのは、Full Potentialのディレクターを務めるランニングコーチ、リチャード・コーツだ。
「私がこれまで指導してきたランナーの中には、週30マイル(約48km)程度のランニングでサブスリーを達成できたランナーがいました。長距離を走らなければならないというわけではないのです。全員がそれぞれ異なる性質を持っていますから、長距離を走りさえすればサブスリーが達成できるわけではありません」
また、サブスリーは不可能なターゲットではない。コーツはさらに次のように説明する。
「覚えておくべきは、『フルマラソンを3時間以内で走れるランナーの大半は、自分と変わらない一般人』という事実です。彼らはエリートアスリートではなく、普通の人間なのです」
そして驚くことに、経験値はサブスリーの必須条件ではない。
「サブスリー達成ランナーの中には、ランニング経験がほとんどなかった人も含まれています。ランニング経験が少ない彼らは、ずっと前にランニングを始めたランナーよりもフレッシュな脚を持っているわけです」

では、経験豊富なエリートアスリートである必要もなく、1週間に100km以上を走る必要もないなら、我々アマチュアランナーがサブスリーを達成するには何をすれば良いのだろうか?

1:一貫性を持って取り組む

継続的な積み重ねの先に目標達成がある
継続的な積み重ねの先に目標達成がある
コーツは、サブスリーとサブフォーを分ける最大の違いは一貫性にあり、「継続的なトレーニングが絶対必要条件」としている。
「サブフォーを目指すランナーも目標にコミットしているという点では変わりありませんが、1週間のセッション回数などに一貫性が欠けているケースが散見されます」とコーツは語り、さらに続ける。
「不定期にトレーニングするランナーよりも一貫性を持ってトレーニングに取り組んでいるランナーの方が、目標タイムを達成する可能性がはるかに高いのです」

2:スピードの持続力アップに取り組む

2時間台でフルマラソンを完走したいなら、1kmを平均4分16秒以内で走れなければならない。そのためには優れた乳酸性閾値(LT)を身につけ、血中に乳酸を貯めないようにする必要がある。
「速いランナーは、スピードの持続力アップのために、乳酸性閾値を高めるトレーニングを数多く取り入れています。サブフォーレベルのランナーも同様の取り組みを行っていますが、トレーニング量が異なります」
乳酸性閾値を高めるには「快適にハードなペース」、つまり、普段のマラソンペースよりもわずかに速いペースでのトレーニングが求められる。
「サブスリーレベルのランナーはトレーニングを通じて乳酸性閾値の向上に取り組みますが、マラソンのトレーニングブロック初期では、1分間の短いインターバルセッションに取り組み、中枢神経系を鍛えて脚力を高めるだけでも良いでしょう」

3:ストレングスの持久力アップに取り組む

アップダウンのある丘で持久力を高める
アップダウンのある丘で持久力を高める
「トレーニングが進むにつれて、速いランナーはストレングスの持久力をアップして、最後まで脚を残すためのセッションを数多くこなしていきます」とコーツは説明する。
ストレングスの持久力は、肉体が長時間に渡ってパワーを生み出せる能力と関連しており、レジスタンス系トレーニングに取り組むことで鍛えられる。
「サブスリーレベルのランナーは、ただ単にハードなペースで丘の頂上まで駆け上がるのではなく、丘でアップダウンを繰り返すランニングや、ケニアン・ヒルズ(編注:Kenyan Hills。ケニア流トレーニングを参考にしたテンポ・ラン。登りをハード、平地をイージー、下りをリカバリーに振り分ける)に取り組んでいます」
ストレングスの持久力を高めるには、特定のストレングス系エクササイズに取り組んでも良い。
「速いランナーはジムでの筋力エクササイズにも多く取り組んでいます。心肺系のトレーニングだけではなく、筋肉組織をトレーニングして強化する必要もあります」

4:多様なペースを身につける

マラソンペースを向上させるには様々なペースで練習に取り組む必要がある
マラソンペースを向上させるには様々なペースで練習に取り組む必要がある
イメージとは異なっているが、複数のペースでのランニング(イージー、中速、閾値周辺、90%、マラソンペース)に取り組むことをコーツは薦めている。
「私は良く『速く走るためには、多段式ギアを備えた自動車のようになれ』と言っています。同じペースで走り続けると、身体がそのペースに慣れてしまうのです」
「トップレベルのランナーは練習でも様々なペースで走っていますが、サブフォーレベルでは、距離を稼ぐために常に同じペースで走っているランナーが多いですね」

5:トレーニングは量より質

冒頭で紹介したStravaデータは、2018年にサブスリーを達成したランナーは平均週8回のトレーニングセッションに取り組んでいるという結果を出しているが、つまり、これは、1日2セッションをこなす日があることを意味している。
しかし、コーツは量よりも質にフォーカスすべきだと考えており、次のように説明する。
「時間の制約がなく、身体が対応できるのなら、距離を稼ぐことに問題はありません。ですが、現代社会では多くの人が多忙な日々を過ごしており、彼らに1日2回のトレーニングセッションをこなすような体力的・時間的余裕はありません」
「ですので、距離を稼ぐだけでは疲労に潰されてしまいます。重要なのは、自分の身体に耳を傾けることです」