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カニエにビートを売り込む5つの方法

カニエのニューアルバムに参加した一介の英国人青年が教えるビッグアーティストに注目される方法とは?
Written by Red Bull UK
読み終わるまで:6分公開日:
セルフィーを撮影するAdnan Khan aka Menace
セルフィーを撮影するAdnan Khan aka Menace
カニエ・ウェストというアーティストについては、誰もが賛否の入り交じった意見を口にする。それでも、彼の目利きの確かさについては誰も否定できないはずだ。
カニエの6枚目のスタジオアルバム『Yeezus』には、Evian ChristやHudson Mohawkeといった英国の気鋭プロデューサーたちによるビートが使用されていた。そして先週、カニエのニューアルバム『The Life Of Pablo』に収録される「Father Stretch My Hands Part 2」というトラックに、Menaceという名義で活動するAdnan Khanという英国の若手プロデューサーのビートが使用されていることが判明した。Adnanはイングランド北西部のロッチデールという街に住み、携帯電話修理ショップに勤務する22歳の青年だ。
これはAdnanにとっても大ニュースだった。彼自身も、彼のビートをカニエが使用していることを『The Life of Pablo』のリリース数日前に知らされたばかりだと言う。
「一晩で世界が変わってしまったような感覚と言えばいいのかな」と彼は切り出す。「色んな雑誌やメディア記事が『The Life of Pablo』に関わったプロデューサーがいったい誰なのかを知りたがっていたよね。最近、ロッチデールは悪い意味で有名になったこともあったけど、こういうポジティブなニュースで自分の地元を発信できて嬉しいよ」
いつの日か自分のビートの上でJay-Zがラップしているのを聴いてみたいというAdnanにとって、それはもはや決して遠い夢ではないかもしれない。というのも、Adnanがカニエの手掛けるレーベルG.O.O.D Musicと契約を果たしたというニュースが報じられているからだ。
カニエのような大物から興味を惹くには一体何をすれば良いのだろう? Adnanが実際に取り組んだ5つの方法を紹介する。
1.自分らしい音楽を確立する
「プロデュース歴は10年くらいになるんだけど、最初はそれほどシリアスに取り組んでいたわけではないんだ。真剣に取り組み始めたのはここ数年のことなんだ」とAdnanは語る。彼は好きなプロデューサーとしてDr. DreとScott Storchの名前を挙げている。Scott Storchは、50 CentやThe Game、TIをはじめとしたヒップホップ・アーティストたちにビートを提供するロングアイランド出身のプロデューサーだ。Adnanは独学でピアノを学んだため、メロディなどをサンプリングする代わりに自分で演奏している。「僕はMPCみたいなビートメイクの機材は持っていない。コンピューターとキーボード、それにシンセサイザーが1台あるだけさ」
2. 自分のウェブサイトを立ち上げる
Adnanが作ったビートが初めて売れたのは数年前だった。「YouTube経由で僕にコンタクトしてきたある人物が『このビートを売ってほしい』とメッセージを送ってきたんだ。だから、僕はPayPalのアカウントを開設したよ。コンタクトがあったその日にすぐ入金があった。『もしかしたらこれは商売になるかもしれない』って考え始めたんだ」とAdnanは語る。次に彼がしたことは、ビートを販売するためのウェブサイトの立ち上げだった。そこでは数種類のリース条件が提示されており、基本的なリースプラン(1トラックあたり30USドル=約3,400円で高音質MP3を手に入れることができるが、全ての著作権やプロダクション・クレジットはAdnanが保持する)から占有使用権(1トラックあたり200USドル=約22,500円でWAVファイルを手に入れることができ、商用利用における制限は一切無し)までさまざまなプランが用意された。現在までに彼が売ったビートの数は数百曲にも及ぶそうだ。その顧客の中には、Meek Millといったビッグネーム・アーティストの名前も含まれている。
3. ソーシャルメディアで有名になる
インターネット全盛の現代でも、昔ながらのハッタリは有効だ。「口コミの拡散効果っていうのは絶大なんだ」とAdnanは語る。実際、彼のビートがカニエに届いた経緯も間接的なものだった。昨年、新進気鋭のブルックリンのラッパー、DesiignerがAdnanのビートを占有使用権付きで購入し、そのビートは「Panda」という曲名でリリースされた。そして、DesiignerがカニエのG.O.O.D Musicと契約した際にそのビートを携えてスタジオへ向かったことで、Adnanのビートがカニエの耳に届くことになった。
4. 音楽出版を理解する
音楽出版というシステムにおける複雑さは、この業界においてあまり深く理解されていない部分かもしれない。しかし、著作権を持つ者が正当にビジネスを行うにはこのシステムを理解することが大事だ。音楽出版社(もしくは楽譜出版者)はアーティストの作ったトラックの著作権を登録し、それらを管理して正当な報酬を支払ってくれる。しかし、仮にAdnanが最初から音楽出版社に著作権を譲渡していたとしたら、ウェブサイトにおいて占有使用権付きでビートを売ることはできなかっただろう。「今でも自分でトラックの出版権を保持しているおかげで、ビートを売った代金を直接得ることが出来る」と彼は語る。しかし、今や彼は音楽出版契約の交渉において強気に出ることができる立場にある。「今では僕についてくれるマネージメントや弁護士もいるから、じきに音楽出版契約を結ぶつもりだよ」
5. 努力を惜しまない
そう、まずはこれが大事だ。現在でも、Adnanは引き続き携帯電話修理ショップでのリペアマンの仕事を続けている。「でも、いったん仕事から戻ったらひたすらプロデュースに没頭しているよ。ときには徹夜で作業することもあるね。今は、自分の身の回りで起きている出来事を注視している段階さ。願わくは、今回カニエがビートを使ってくれたことがきっかけになって、フルタイムで音楽に専念できる道が開けると嬉しいね」