2019年の世界選手権ではランの序盤25kmまでリードした
© Jesper Gronnemark/Red Bull Content Pool
トライアスロン

IRONMANレースを完走するためのトレーニング法

レッドブルアスリートのルーシー・チャールズが過酷な長距離ワンデイイベントを戦い抜くために必要なフィットネスについて語ってくれた。
Written by Claire Chamberlain
読み終わるまで:6分Published on
地球上に存在するワンデイスポーツイベントの中で最もチャレンジングとされるIRONMANトライアスロンに挑むのは簡単ではない。
スイム3.8km / バイク180km / ラン42.195kmの合計226kmを、休憩を挟まずに制限時間内(通常16時間)に完走することが求められるIRONMANには、数カ月の入念な準備が必要だ。
この過酷極まりないトライアスロンレースについて精通しているのが、英国人プロフェッショナルアスリートのルーシー ・チャールズだ。現在25歳の彼女は10月上旬にハワイ・コナで行われたIRONMAN世界選手権でスイム歴代最速タイムを樹立し、2年連続でシルバーメダルを獲得した。
IRONMAN完走のために必要な条件を聞き出すために、我々はルーシーをキャッチしてアドバイスを請うことにした。IRONMAN完走を目指している人は参考にしよう。
2018年IRONMAN世界選手権で2位に入賞したチャールズ(左)

2018年IRONMAN世界選手権で2位に入賞したチャールズ(左)

© Jesper Gronnemark/Red Bull Content Pool

トライアスロンへ取り組むことになったきっかけは?
元々、わたしはスイマーだったんです。8歳の頃からすでにかなりの負けず嫌いで、当時で最もハードな種目を希望して、200mバタフライを選びました。それから集中的に取り組んで、16歳で英国代表に選ばれました。
2012年のロンドンオリンピックではオープンウォータースイミング代表に選ばれる寸前まで行きましたが落ちたので、新しいビッグチャレンジを見つけることにしました。それでIRONMANの世界に飛び込んだのです!
正直言って、後悔は全くありません。この競技に夢中ですよ。
チャールズは幼少期から水泳選手として活躍していた

チャールズは幼少期から水泳選手として活躍していた

© Graeme Murray/Red Bull Content Pool

これからIRONMANに取り組む人にアドバイスを送るとしたら?
わたしと同じルートは避けた方が良いですね!
スプリントトライアスロン(スイム0.75km / バイク20km / ラン5kmの合計25.75km)で基礎を作り、それからオリンピックディスタンス(スイム1.5km / バイク40km / ラン10kmの合計51.5km)、ハーフ(別名IRONMAN70.3。スイム1.9km / バイク90km / ラン21.0975kmの合計113.1km)を経て、IRONMANへ進むのが良いでしょう。
わたしはいきなりIRONMANに挑戦しました。結果的にその甲斐があったとはいえ、学習曲線はかなり厳しかったですね。ですので、ステップ・バイ・ステップをオススメしますし、フルディスタンスに挑みたくなるまで楽しみながら続けてください。
どの種目もある程度の経験が必要でしょうか?
3種目の経験が豊富である必要はないと思います。スイムが最もテクニカルなので、スイムの経験があれば必ず役立ちますが、体力的な要求度が最も高いのはバイクとランです。当然ながら、こちらも経験があれば大いに役立つでしょう。
繰り返しになりますが、最もテクニカルなのはスイムなので、スイムの経験が乏しいならマンツーマンの集中レッスンに取り組むことをオススメします。

2分

Lucy Charles shares her swimming technique tips

Lucy Charles giving swimming tips and advice on how to train for an Ironman competition.

あなたの典型的なトレーニングデイは?
普段のわたしの起床時間はかなり早いです。朝5時半にはもうプールにいます。1日で一番辛いのはベッドから起きる時ですね! 起床後は通常2時間スイムして、5km以上泳ぎます。
スイムセッションが終わると一旦自宅へ戻り、2度目の朝食を食べたあと、通常2〜5時間バイクに乗ります。わたしはロンドンに住んでいて、自宅周辺はかなり交通量が多いですから、インドアでマシンに乗ることが多いですね。
それからブリックラン(編注:バイクに乗りレースを想定した運動強度で身体を追い込んでからランの練習を行うこと)に取り組みますので、そのままトレッドミルに向かうか、森に出かけて1時間から90分走り込みます。
遅めのランチを摂ったあと、コンディション調整と怪我の防止のために筋力トレーニングかリハビリセッションに取り組みます。

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アマチュアアスリートが日常の仕事や家事をこなしながらトレーニングに取り組むには、どうすれば良いでしょうか?
わたしもトライアスロンを始めてから最初の2年はアマチュアでしたから、仕事とトレーニングの両立の難しさについては理解しています。家族がいるなら尚更ですよね。
自分のために使える時間も限られますから、できる限り時間を有効活用して1日のスケジュールを管理することが大事です。起床時間を早めて、仕事へ向かう前にトレーニングできれば大きな違いになります。セッションをこなせたという充実感と共にオフィスへ向かえます。
とにかく、自分の時間を最大限活用するようにしましょう。もちろん、体調の悪化や怪我の防止のために、疲れているなと感じたらセッションを休んだり軽い内容に変えたりするのも大事です。

1分

ルーシー・チャールズ=バークレーが語るランニング向上のヒント

IRONMANに向けたトレーニングプランの長さは?
自分の年齢カテゴリでトップに立ちたいなら、ベースマイルを取り入れた4カ月のトレーニングプランに従って取り組むべきです。
4カ月から6カ月の間、トレーニングに取り組めば、フルディスタンスを完走できるようになるはずです。
トライアスロン・バイクでの体力要求度は極めて高い

トライアスロン・バイクでの体力要求度は極めて高い

© Graeme Murray/Red Bull Content Pool

ハワイ・コナのような、高温のレースコンディション対策として取り入れているトレーニングは?
当然ですが、わたしが普段トレーニングしているロンドンはハワイのように暑くありません。ですので、ヒーターを大量に用意して、室内のトレーニング環境をできるだけ高温にしてきました。
屋外でトレーニングする場合も、たくさん着込んで中核体温をなるべく高くすれば、高温のレースコンディションに役立ちます。
とにかく、エクササイズ中に身体を温めるのがカギです。エクササイズしていない時間を寒く感じるようになれば、効果が出ていると言えます。身体が高温環境に適応している証拠です。

1分

Lucy Charles mental preparation tips and how to push yourself

Pro triathlete Lucy Charles shares some advice on mental preparation for the race day of an Ironman competition

レースに向けた準備では睡眠はどれほど重要なのでしょう?
睡眠の重要性は熟知しています。身体を確実にリカバリーさせるために、毎日8〜10時間は眠るようにしています
IRONMANの目標を達成するために、犠牲にしなければならないものはありますか?
ビッグレースに挑む時は、多くの犠牲を払う覚悟が必要です。たまに友人や家族からディナーに誘われても、早く寝るために断らなければなりません。
トレーニングと休息を両立させるには、社交的な生活をいくらか犠牲にしなければなりません。かなりの覚悟が必要です。ですが、IRONMANのような距離を完走したいなら、その犠牲を払う価値は絶対にあります。
完走後にお互いの健闘を讃え合うチャールズ(右)とダニエラ・リフ

完走後にお互いの健闘を讃え合うチャールズ(右)とダニエラ・リフ

© Jesper Gronnemark/Red Bull Content Pool