まだ24歳だが、イングランド出身のジェイク・ディアデンはアスリートがキャリアを通じて達成できること以上をすでに達成している。HYROXプロアスリートの彼はエリート15のシングルスとダブルスで活躍しており、マーク・ディーンと世界選手権男子ダブルス制覇を成し遂げている。
2025年、ディアデンはHYROXグラスゴーで自己ベスト55分44秒を記録して新たな高みに達すると、そのまま勢いを維持し、2026年1月にはヒューストンマラソンを2時間22分8秒で完走。目標タイム2時間19分にはわずか及ばなかったが、マラソン自己ベストを6分短縮したこの偉業は、ディアデンのハイブリッドトレーニングの効果をあらためて証明することになった。
ディアデンのやることすべてと同じで、このマラソン出場も戦略的な判断に基づいていた。元ウルトラランナーの本人は「HYROXレースでランニングが自分の弱点であることに気付いたので、スピードアップに取り組んできました」と説明している。
ランニングとストレングストレーニングは相性が悪いという考えはまやかしです
このマラソンは、数年前から続くより広範なランニングへの取り組みの一部だ。ディアデンはこの取り組みにより10kmランのタイムを数分短縮できており、結果的にHYROXでもアドバンテージを得ることができている。
「HYROXで伸ばせるのはランニングだけなので、ライバルに先んじて取り組み、効果的に走れるようになることを目指してきました」と説明するディアデンは、2026年9月にはベルリンマラソンに出場する予定だ。
「有酸素運動は筋力アップの邪魔になる」という世間のイメージに反し、ディアデンはストレングストレーニングを一切犠牲にしていない。事実、彼は2026年のHYROX世界選手権のエリート15男子ダブルスにジェームズ・ケリーと出場する。
これは、ディアデンのハイブリッドトレーニングが、彼をHYROXシーン屈指のオールラウンダーに押し上げる助けになっていることの証左だ。ディアデンは次のように語る。
「ランニングとストレングストレーニングは相性が悪いという考えはまやかしです。あらゆるプロランナーがストレングストレーニングに取り組んでいます。ボディビルダーが取り組んでいるストレングストレーニングのメニューとは少し違うように見えるかもしれませんが、HYROXのようなパフォーマンスが重視されるスポーツでのトレーニングでは間違いなく両立できます」
そこで本記事では、HYROXアスリートを目指している、または【Red Bull Gym Clash】出場を考えている人のために、ディアデンのアドバイスとともにハイブリッドトレーニングの基本を解説していく。
01
ハイブリッドトレーニングとは?
ひと言にまとめるなら、ハイブリッドトレーニングとは「ウエイトトレーニングと有酸素運動を組み合わせたトレーニング」だ。たとえば、週5でトレーニングに取り組んでいるなら、そのうち2日をランニング、3日をウエイトトレーニングに振り分ける。このようなトレーニングをハイブリッドトレーニングと呼ぶ。
息切れすることなく階段を上れるフィットネスがなければ、筋力が強くてもあまり意味がありません
「ハイブリッドトレーニングでは満足感を得ることができます。なぜなら、筋力とフィットネスを同時に手に入れられるからです」とHYROXのワールドチャンピオンであり、マスタートレーナーでもあるディアデンは説明する。
「私たちはどちらか片方にフォーカスしてしまうときが多いですが、息切れすることなく階段を上れるフィットネスがなければ、筋力が強くてもあまり意味がありません」
ハイブリッドトレーニングのフォーカスは、ルックスを磨くことよりも、実用的なフィットネスを手に入れることにある。突き詰めれば、プレスアップが1階もできない超高速ランナーになりたい人や、バスに乗り遅れてばかりのムキムキのボディビルダーになりたい人はいない。
有酸素運動とストレングストレーニングを組み合わせるハイブリッドトレーニングに取り組めば、HYROXレースのためだけではなく、生活全般のフィットネスを高めることができるのだ。
02
ハイブリッドトレーニングのやり方
HYROXは究極のハイブリッドトレーニングと言ってよいだろう。そしてこのフィットネスレースについて誰よりも良く知っているのがディアデンだ。「HYROXでは様々なトレーニングが必要になります。ストレングスとスピードだけではありません。スキーエルゴやウォールボールなど8種目をパーフェクトにマスターする必要があり、それぞれ独自の負荷がかかります」
ハイブリッドトレーニングの魅力は、自分なりに解釈して自分なりのカスタマイズができるところにある。以下にディアデンからのアドバイスを紹介しよう。
① 身体の声に耳を傾ける
ディアデンは、怪我と病気に繋がるためオーバートレーニングを避けることが重要としている。「オーバートレーニングを避けるためには自分に正直でいる必要があります。“十分” を学び、そこで止める勇気を持ちましょう」
② フォーカスエリアを柔軟に切り替える
持久力と筋力を同時に向上させるハイブリッドトレーニングメニューを組むのは簡単ではない。ディアデンはそのときに向上させたいエリアに合わせて柔軟にメニューを変更することが重要としている。
「自分が向上させたいエリアを優先して、そこに取り組みます。別のエリアは後回しにしてください」とディアデンは説明しているが、これはランニングに取り組むならストレングスを無視しても良いという意味ではない。ウエイトとランニングの自己ベストを目指す代わりに、ランニングに取り組みながら筋力を維持できるだけのウエイトトレーニングにも取り組んでいくのだ。
「私がランニングに取り組んでいるときは、ストレングストレーニングを週5から週2〜3まで減らします。ランニングの調子が良い、あるいはストレングスの調子が良いときは、その調子に合わせてトレーニングを調整してください」
③ フォームを意識する
どんなトレーニングでも必ず疲労する。ストレングスとランニングの両方に取り組んでいるときは尚更だ。ディアデンは、常に全力で取り組んでいるとフィジカルとメンタルの両方が疲れ切ってしまうことに注意すべきだとし、次のように説明している。
「全力を出して問題ないトレーニングセッションもあるかもしれませんが、大抵の場合は、全力を出さず、正しいフォームを意識して、基本を確実に身に付けることが重要です」
ディアデンは、すべてのセッションで全力を出す代わりにスローダウンしてエフォートよりもテクニックを重視すれば、レースやイベント当日に大きなアドバンテージになると考えている。
④ 弱点を克服する
毎回全力を出すのが不可能なのと同じように、HYROXレースのすべてをパーフェクトにマスターするのも不可能だ。ディアデンは、スローダウンして自分の弱点の克服に取り組むことが重要としている。
「疲労下でのランニング、あるいはステーション間のトランジションなどの弱点に取り組む必要があります」とディアデンは説明している。ディアデンは、様々なトレーニングに長時間取り組むことを無駄としており、その代わりにレースやイベントでの結果に繋がる細部の修正に取り組むべきと考えている。
「エクササイズの前に “このエクササイズが自分の目標達成にどう関わってくるのか” について考えてみましょう。答えが出せないなら、そのエクササイズをやるべきではありません」
⑤ 試行錯誤する
ディアデンのトレーニング最大の特徴は、“自分のやり方” を徹底的に追求しているところだ。人間には個人差があるため、自分に合ったハイブリッドトレーニングを用意するというのは理にかなっている。
ディアデンはこのアプローチを持久力トレーニングにも持ち込んでおり、「暑熱トレーニングは自分に合っていますね」と説明している。自分に合うトレーニングを模索することがパフォーマンスのレベルアップに繋がっていくので、色々と試してみよう。少なくとも、楽しそうなワークアウトは試してみるべきだ。
⑥ トレーニングスケジュールを組む
ディアデンがハイレベルなトレーニングを維持できている理由は、1週間のトレーニングスケジュールをしっかりと組んでいるからだ。自分流のトレーニングスケジュールを組めば進捗を管理しやすくなるので、燃え尽きを避けることができる。
「週4〜5日をトレーニングに充てられるなら、私ならHYROXレースをシミュレートしたトレーニングに1日を割き、疲労下でのランニングに取り組みます。あとは800mランのエフォートでの閾値ランに1日、スローペースでのロングランに1日を割きます。残り1〜2日がウエイトトレーニングです」
もちろん、これは「ランのタイム短縮」というディアデンの現在の目標に基づいたトレーニングプランで、目標は個人で異なる。しかし、ハイブリッドトレーニングのビギナーなら、ディアデンのバランスでスケジュールを組むのは良いスタートになるだろう。
03
ハイブリッドトレーニングが万能な理由
ハイブリッドトレーニングはHYROXアスリート専用ではない。フィットネスを向上させたいあらゆる人のためのものだ。フィットネストレーニングを始めたばかりの人なら、週3日のランニングは退屈に感じるはずで、ウエイトトレーニングだけも単調なはずだ。
しかし、これら2つを組み合わせれば、より広範で実用的なフィットネスが手に入る上に、やりすぎに起因する怪我を防ぐこともできる。
最大のメリットはトレーニングへの興味を維持できるところだ。ランニングの目標達成に1ヶ月取り組んだあと、次の1ヶ月はクリーンやプレス、バーピーに取り組むことができる。ハイブリッドトレーニングなら、マラソン完走、HYROXレースの自己ベスト更新、あるいはスピードアップや筋力アップなど、目標を無限に調整・設定できるのだ。
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