HYROX：科学研究が示す効率的なトレーニング方法
HYROXはただ筋力を競い合うレースではない。全身の機能性にフォーカスしたレースであり、最近は研究も盛んに行われている。そのような研究が示している "レースで最大限の結果を効率的に得る方法" をプロコーチが解説！
持久力・筋力・スキルが問われるHYROXは、世界で最も人気が高いハイブリッドスポーツのひとつへと急成長を遂げつつあります。
最近は、科学研究がアスリートとコーチにパフォーマンスを向上させる要因を理解させる助けとなっており、それらの研究結果は、より賢いトレーニングへの明確な方向性を示しています。
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科学研究の結果
最近発表されたBrand / Edel / Lebahn / Schmidt（2025年）とDavids（2025年）のHYROX関連の研究は以下の結果を示しています。
- 有酸素系能力が最重要：Brandtたちの研究は、VO2 Maxと持久力トレーニングの量はフィニッシュタイムと密接に繋がっていますが、握力や全身の筋肉量はそこまで重要な要因ではないことを示しています。HYROXはインターバルベースの持久力スポーツとして扱われるべきなのです。
- トランジションが重要：どちらの研究もステーションとランを結ぶトランジションがトップアスリートとその他の大きな違いになっていることを指摘しています。HYROXでは、効率の良いトランジションとペース設定が純粋なフィットネスと同等に重要です。
- 筋力はHYROX固有：Davidsの研究は、HYROXはすべての筋肉が等しく使われるスポーツではないとしています。筋肉の最大出力が必要になるのは、スレッド、プッシュ、プル、バーピーブロードジャンプのようなHYROX固有のステーションですが、筋力と筋持久力のバランスを取ることが必要です。
- 疲労時のテクニックも重要：どちらの研究も、疲れているときにマシンを効率良く動かし、フォームとムーブメントの質を維持することが結果を大きく左右する要因になることを示しています。
ローイングに取り組むHYROXの競技者
© HYROX
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有酸素系能力が最重要な理由
有酸素系能力の向上がすべてのHYROXアスリートのパフォーマンスの基礎に据えられるべきです。科学研究は、持久力トレーニングの量とVO2 Maxが成功の最大要因であることを示しています。有酸素系能力が劣っていれば、他の能力を長時間に渡り引き出せなくなってしまいます。
さらなる研究によって、この論を裏付け、より具体的な情報を得る必要がありますが、HYROXは高強度運動を長時間続けるフィットネスレースのため、優れたVO2 Maxがアドバンテージになるのは確かである一方、「VO2 Maxの何割を1時間維持できるのか」が重要になります。
HYROX世界王者から学ぶ
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トランジションをマスターする
同様に重要なのが、トランジションをスムーズかつスピーディに行うための練習と、疲労時にペースを維持できるようにする練習です。レースではランからステーション、ステーションからランへのトランジション（切り替え）のタイムも計測されます。
トップアスリートたちはこのトランジションを効果的に行う方法を知っています。そのため、トランジションを練習し、プレッシャー下でエフォートをコントロールする方法を学ぶことが、自己ベストと平凡な結果を分けることになります。
HYROXはメンタルタフネスが試される真の試練
© Christian Pondella/Red Bull Content Pool
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HYROX固有の筋肉を鍛える
HYROXでは持久力が最重要になるが、HYROX固有の筋力と筋持久力も無視できません。スレッドプッシュ、スレッドプル、ファーマーズキャリーのようなステーションでは筋力が求められますが、筋持久力を犠牲にする代わりに補完するトレーニングを積んでいく必要があります。
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疲労時のテクニックを維持する
HYROXのアスリートたちは生体力学的テクニックと効率的なムーブメントを優先すべきです。疲労していてもフォームが維持できれば、怪我を防げる上にエナジーを保存できるため、レースの最後までパフォーマンスを維持できるようになります。
HYROXで重要になるのは「どれだけハードにトレーニングを積めるか」だけではありません。「どれだけスマートに準備ができるか」も重要です。HYROX関連の研究が進んでおり、それらを有効活用しているアスリートとコーチが新しい基準を設定しています。
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科学研究に基づいたHYROXトレーニングアドバイス
アドバイス①：エンジンを組み上げる
Brand / Edel / Lebahn / Schmidt（2025年）とDavids（2025年）の研究は、有酸素系能力（心臓・肺活量・持久力）がHYROXの成功を決定づける要因のひとつであることを示しています。
これは一貫した心肺系コンディショニング、ゾーン2トレーニング、HYROXに特化したHIITトレーニング、漸進的持久力トレーニングが好結果には必須ということを意味しています。
HYROXイベントでは全身の筋力・持久力が問われる
© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool
アドバイス②：トランジションをマスターする
ランからステーション、ステーションからランへのトランジションでもタイムは計測されます。Davidsの研究（2025年）は、ペースを管理して、トランジションで素早くリカバリーできるアスリートがより優れた結果を出せることを指摘しています。スムーズなトランジションができるように練習しつつ、エフォートをコントロールする方法を学びましょう。
アドバイス③：HYROX固有の筋肉を鍛える
スレッドプッシュ、スレッドプル、ファーマーズキャリーのようなステーションではそれぞれ特定の筋力が必要になります。トレーニングでは、この筋力と筋持久力を同時に高めていくことが、ベンチプレスの最大重量を増やしていくことよりも重要です。
HYROXのトレーニングとレースに向けた準備はただのワークアウトの枠を超えている
© Leo Francis/Red Bull Content Pool
アドバイス④：疲労時のテクニックを意識する
好結果を得るためにはムーブメントの効率化が重要です。フォームが乱れてしまえば無駄にエナジーを使うため、スピードが落ちてしまいます。レース終盤は落ち込みが特に大きくなります。疲労していてもフォームを維持できるようにする練習やムーブメントの効率を高める練習が役に立つでしょう。
基礎を作り上げ、ディテールを追い込み、進歩していくことが勝利に繋がることを忘れないようにしましょう。
筆者紹介
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