アート&デザイン

伝統表現からデジタルまで、多領域で挑戦を続けるイラストレーター・上田バロン

絵は簡単にジャンルを超えられる。だからこそ、常に新たな領域にチャレンジしたい。知らない事や、ゼロから何かを築き上げることは恥ずかしいことじゃない。それは、まだ見ぬ世界に近付いていく方法でもあるんです
Written by ARINA TSUKADA
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上田バロン

上田バロン

© HAL

ファッション、広告、ゲーム、出版、WEBなど多方面で活躍するイラストレーター、上田バロン。最近では「琳派400年記念祭」の一環として、伝統的な日本画とデジタル印刷技術を融合させた作品を手がけるなど、多様な領域とのコラボレーションを幅広く展開している。彼の飽くなき挑戦から、クリエイションにかける思いを訊ねた。
—バロンさんが絵を描き始めたのはいつ頃からですか?
バロン:子どもの頃からずっとですね。描いた絵をほめてもらえたり、色々な反応が返ってきたときの原体験が今もモチベーションにつながっているのだと思います。けれど、大人になっても自分がやりたいことだけをシンプルに続けていくのは案外難しい。専門学校時代、当時の先生から「絵描きを職業にしたいと思うか」と聞かれたとき、僕はこれを職業にしたいと思ったんですね。自分の仕事に地位を与えていきたかったし、今ここにある可能性をもっと押し広げたいと思ったんです。
—仕事としてのイラスト活動が、バロンさんの多彩な領域を広げていったのでしょうか。
バロン:イラストレーションというジャンルは印刷技術とセットで成長してきたものですが、環境がどんどん多様になっていく中、僕らにとってのフィールドも変わってきていると感じています。絵は簡単にジャンルを超えられる。だからこそ、常に新たな領域にチャレンジしたいと思っています。知らないことや、ゼロから何かを築き上げることは恥ずかしいことじゃない。それは、まだ見ぬ世界に近付いていく方法でもあるんです。
—そうした新領域へのチャレンジの中でも、今回は「琳派四百年祭」にて伝統的な「琳派」を現代にアップデートした作品『Universe-地水風雷四季花鳥図』を手がけられていますね。この作品はどのようなきっかけから始まったのですか。
バロン:2009年に、とあるオーベルジュ施設から茶室に飾る作品の制作依頼を受けたんです。江戸の粋、浮世絵のような作品を、というオーダーだったのですが、そのとき改めて日本文化を知ろうと、茶の湯の世界などを学んでいきました。同時に、「100年残せる作品とは何か」を考え、今泉版画工房の今泉浄治氏の協力のもと、20版近くにもなる大型のシルク印刷を職人の力を駆使して越前和紙に手作業でインクと、金箔を施す作品を1年半かけて仕上げました。その作品を見た京都伝統工芸大学の教授から声がかかり、今回の作品につながりました。
—今回、「琳派」を挑戦するにあたってはいかがでしたか。
バロン:琳派というのは、当時最高峰のグラフィックデザインだと思うんです。人間が見た光景そのものを描くのではなく、捨象して、グラフィカルに配置する。今で言うコピー&ペーストの概念にも近いというか、一度描いたものを再編集していく抜群のセンスがあったと思います。こうした瞬間的な見た目のクールさを意識しながら、自分にしかできないことは何かと考えていきました。
—金箔の和紙に、デジタル印刷という組み合わせが意外で、新しい感覚を受けました。
バロン:金箔を張った和紙に、ローランドDG社の最先端のUV印刷を3層に重ねたデジタル印刷を乗せています。こうしたおかげで、1層目のプリントから透けて金地の部分が見えてくるなど、独特の質感になったと思います。
上田バロン

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—こうした伝統的な作品とコラボする一方、Red Bull Ignitionではアメリカ村に作品が半永久的に設置されるわけですが、アメリカ村での思い出などはありますか。
バロン:アメリカ村という場所は、若者が引き寄せられてカルチャーが生まれるところだと思います。以前、マクドナルドのアメリカ村店舗にて3階建ての店内フロア全面にポスターを掲示する試みにトライしたことがあるのですが、こうした挑戦が新たな自信にもつながりました。今回のような、街に新たな景色をつくっていく仕事はやりがいを感じますね。
—大阪という街にはどんな印象をお持ちですか。
バロン:僕は京都の出身で、ここ十数年はずっと大阪で暮らしています。仕事の関係上、東京など別の土地で暮らすことも考えたのですが、僕の一番の仕事は絵を描くことだなと思ったんです。コミュニケーションも仕事の大切な要素だけれど、常に手を動かして、真剣に作品をつくり続けていれば、向こうから会いに来てくれる人がたくさんいる。それを信じて、絶えず新しい表現に取り組んでいきたいと思っています。
上田バロン

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