ほとんど驚かないと思うが、IFSC(国際スポーツクライミング連盟)ボルダリング世界王者に輝いたショウナ・コクシーが伝授する技術向上のための最大のヒントは「とにかく練習を重ねる」だ。
しかし、近年はクライミングをワークアウトプログラムに取り入れる人が増加しているので、ショウナを捕まえて、フィットネス系インスタグラマーのキム・ハートウェルとニーナ(@NinaHealthily)のボルダリングスキルをたった30分間で向上させるチャレンジに挑戦してもらい、アドバイスの中身を教えてもらった。
1. ウォーミングアップはしっかりと
過去に戻って、昔の自分にアドバイスできるとしたら「時間をかけてウォーミングアップしなさい」って伝えると思う。怪我を未然に防ぎ、毎回のセッションを最大限に活用するにはウォーミングアップが欠かせないわ。たとえ夏でも、ジャケットを着てウォーミングアップして。身体をしっかりと温めてからクライミングを始めたいし、心拍数も高めておきたい。身体がしっかりと温まっているか、外から判断できる唯一の目安は発汗量よ。だから、しっかり汗をかいて! 縄跳びでも構わないし、ウォールを登ってみてもOKよ。自分に合っている方法なら何でも良いわ。わたしは、ボルダリングジムに着いたらジャケットを着たまま5分から10分クライミングしてみるの。ウォールを登ったり下ったり、あるいは横へ移動したり。色々なムーブメントを軽く試してみる。異なるクライミングやホールドを試しながら、肩から指先にかけてしっかりと身体が温まっていることを確認しておきたいわね。
2. ウォールで過ごす時間を増やす
クライミングは回数も大事だけど、内容も大事。良いクライミングができれば、気分も良いし、ルックスもクールでしょ? 流れるように動いて、手足の運びを上手く正確にこなしたいものよね。1回のセッションでなるべく沢山のクライミングをこなすことがベストトレーニングよ。懸垂や体幹強化、指先の強化などのトレーニングも大事だけれど、やはりウォールで過ごす時間を増やすことが上達のカギね。
3. グレード(難度)はひとつずつ上げる
常に自分を限界まで追い込みすぎないことが大事。マラソンに向けてトレーニングしているランナーが、常に全力で練習することはないのと同じね。とはいえ、クライミングでは、「グリーンとブルーはクリアしたから、次はレッドに挑戦する」といった具合に、かなり早いペースで次々にグレードを上げていく人を良く見かけるわ。個人的な意見だけど、1週間で複数のセッションをこなしているなら、そのうち1回は基礎的なセッションにするべきだと思うわ。
無理のない範囲でこなせるサーキットを組んでいるの。繰り返しウォールから落ちているだけでも、上手な落ち方が身につくはずよ!
1個ずつ着実にブロックを積み上げるように練習すれば、様々なグリップの種類やムーブ、手足の置き方を学べるわ。様々な角度から取り組み、過去にクリアしたレベルをきちんと復習するようにして。こういうトレーニングは疲れるから、どうしてもクライミングに変化が出る。だから、1回のセッションでより多くのことが学べるの。わたしは今でも週に1度、もしくは数週間に1度はクライミングウォールへ向かうようにしているし、無理のない範囲でこなせるサーキットも組んでいるわ。こうすれば、何度もクライミングをこなして沢山のムーブメントを繰り返すことになるから、調子が上がってくるのよ。繰り返しウォールから落ちているだけでも、上手な落ち方が身につくはずよ!
4. 筋力と勢いを活用する
クライミングはお尻をかなり使うスポーツよ。言うまでもなく、良好なポジショニングを得ることはかなり大事だけれど、トリッキーなセクションに取り組むようになれば、ダイナミックな動きが必要になってくる。筋力だけに頼ったクライミングをしていると、勢いが上手く活用できなくなるの。その勢いを生み出す肝心な部分が、脚とお尻よ。ウォールでお尻を突き出している自分を想像してみて。辛くなってくると、腕と脚はすでに疲労しているから、お尻を使って勢いを得ることが大事になってくるの。手と足を上手く置きながらお尻を使えば、クライミングはよりスムーズになっていくはずよ。
ショウナのレクチャーを受けた2人のフィットネスブロガー、ニーナとキムの感想は?
「クライミング界のトップで活躍するショウナと話ができて、本当に刺激的だったわ」とニーナは語る。
「その分野を知り尽くした人からのアドバイスはとても役に立つし、刺激的でモチベーションも高まるからおすすめよ」
「ウォーミングアップに関して沢山のアドバイスをくれたわ」とキムは語る。
「わたしは過去にパーソナルトレーナーの勉強をしたことがあったから、身体の温め方の基礎は知っていたつもりだったけれど、ショウナはクライミングに特化した素晴らしいヒントを教えてくれた。最初に大きなボルダーに取り組んで、指の感覚をほぐして握力を得ていくことが大事だってアドバイスしてくれたの。これまでのわたしは、初級レベルのウォールから徐々にレベルを上げてウォームアップをしていたけれど、彼女は大きなホールドを使って指をほぐして、それから小さなホールドに取り組んでいく方法を教えてくれた。これまでのわたしのやり方は、逆に指に負担をかけていたみたい」
「サーキットについても目から鱗だった。ウォーミングアップ終えたあとはひたすらウォールのレベルを上げていくだけだったけれど、ショウナが、サーキットを組んで色々な方法で同じウォールに取り組んでからレベルを上げるように教えてくれた。今まで知らなかったけれど、とても効果的だし、チャレンジングよ!」