イマドキの「陰陽」は、引き寄せ合う(らしい)。
「レッドブルマイク」の新シリーズ「Red Bull IN-YO!」はヒップホップをベースに、様々なジャンルとのセッションによって新しい音楽を作り出していくコンテンツだ。
記念すべき第1回は、”ジャパニーズ・ヒップホップ・クイーン”Awichと高いラップスキルで観客を沸かすCHICO CARLITO、世界で活躍するロックバンドONE OK ROCK、そして福岡出身で海外フェスなどの出演が相次ぐPaleduskの4組のアーティストをフィーチャーする。
ロックとヒップホップ、それぞれがトップを走る”四者四様”のアーティストが、自分の音楽をぶつけ合う。
「陰陽」は互いに対立し合い、バランスを保つ――という中国の思想だが、ここにあるのは「韻と陽」。
韻に代表されるヒップホップのカルチャーに、異ジャンルである「陽」が差し込み、新しい作品を作り上げていく。
緊迫した撮影現場「初めて合わせた」音は…
撮影現場には、緊張した空気が張り詰めていた。
総勢100人以上が制作に携わり、関東某所の倉庫を貸し切って行われた撮影では円形のステージで4組がセッションした。
Taka(ONE OK ROCK)のメロディアスな歌声に、CHICO CARLITOのたたみかけるようなフロー。KAITO(Paledusk)のシャウトにAwichのソウルフルな歌声が重なる。そして4人の個性あふれるボーカリストをONE OK ROCKとPaleduskのバンドメンバーが支える。
Paleduskのギター、DAIDAIは「楽勝でしたね」とおどけつつ、「このメンバーで曲を作るって、あり得ない話。制作が始まってから、こういう日を迎えられたことに感動しています」
ヒップホップとロックのトップアーティスト同士が交わる――という意味では、これまでも、いくつも歴史的な瞬間があった。
ロックレジェンドのAerosmithとヒップホップを世界的なムーブメントに押し上げたRun-D.M.Cによる「Walk This Way」(1986)。2000年代まで時を移せば、両ジャンルの頂点に立っていたJAY-ZとLinkin Parkによる歴史的なコラボアルバム「Collision Course」(2004)も当時、大きな話題になった。国内に目を向ければ、ロックバンドDragon Ashはシングル「Grateful Days」(1999)でラッパーZeebraと共作し、国内のチャートを駆け上がった。
今回のコラボも間違いなく歴史に残るビッグネーム同士の邂逅だ。
曲作り自体は2025年11月から始まっていたというものの、撮影日に「初めて音を合わせた」(CHICO CARLITO)という4組。そんな才能が邂逅してできた楽曲は――。
重圧をぶち破った「クイーン」
Takaは人知れず重圧を感じていた。
「自分たちのバンドの活動の一つ一つが重たい。もっと肩の荷を下ろしてステージに立ちたい」
それを打ち破ったのは、AwichやCHICO CARLITOらが見せた、ONE OK ROCKの主催対バンライブでのパフォーマンスだった。Takaは当時のことを「ヒップホップクルーを間近で見るのは初めてだったが、そのパフォーマンスは衝撃的だった」と振り返る。そのなかでも、Takaの脳裏に焼き付いたのはCHICO CARLITOの姿だった。
ライブ後の打ち上げでは、CHICO CARLITOがONE OK ROCKのファンだったことも判明。ONE OK ROCKが沖縄で初めて行ったライブを最前列で見ていたと明かし、すっかり意気投合したという。これがフックとなり、ONE OK ROCKが目をかけてきたPaleduskも加えて楽曲「C.U.R.I.O.S.I.T.Y.」をリリース。Takaに新しい衝撃を与えてくれたAwichにも
「絶対に何か一緒にやりたい」(Taka)と声をかけて、今回のプロジェクトが始まった。
失敗は許されない…でも
楽曲を作る――と言っても、日本を代表するヒップホップ・クイーンAwichと、ロックシーンのアイコンONE OK ROCK。失敗は許されない大仕事だ。
Awichも「プレッシャーはめちゃくちゃあった」と明かしつつ、「絶対に失敗できないとおびえていたら、純粋な心で音楽を作れなくなる。楽しんで、遊びながら作ることを意識した」という。「何回か食事に行ったり、旅行に行ったり、合宿をしたり……。どういう音楽を作っていきたいとか、どういう風に生きていきたいか、みたいな話までしました。こういうのって、フレンドシップがないと作れないことだから」と人生観まですりあわせたという。
そうした先輩の導きに後輩も反応する。Paleduskのボーカル、KAITOは「撮影の時にもTakaくんから『ライブと同じぐらいに食ってかかるように』とアドバイスをもらって、自分をむき出しにしてやりきろうと思った」とビッグネームを前にしても全く引かず、抜群のパフォーマンスを見せた。
Takaは「昔から『売れてからだったら好きなことできるよ』と言われてきたけど、売れた後に好きなことをやっても実は伝わらない。ヒリヒリした飢えのようなものがあるからこそ、リスナーに伝わると思っています」と語る。
その上で、「僕らはそういうことを言えない立場なのも分かっていて、だからこそ、Paleduskみたいな存在が、僕らのようなバンドを踏み台にして頂点を目指していく――。AwichもCHICOも沖縄出身で、僕らが掲げる世界平和というテーマにも必要な人たち。ONE OK ROCKが積み上げてきたものを使いながら、エンターテインメントの枠を広げていってほしいと願っています」と哲学を語った。
タテにヨコに…Red Bull IN-YOは引き寄せ合う
こうしてできあがった楽曲「777」はそれぞれの個性が混ざり合い、グルーブを生み出した。
シーンの大物が同時にステージに上がるのだから、スタッフに緊張感が走るのは当たり前だが、アーティストたちは実に楽しそうに歌い、奏でる。
でも、これこそがRed Bull IN-YO!が示す価値だ。Awichは「今回のパフォーマンスでは、『遊んでいいんだよ』ということを伝えたかった。いくら遊んでできた曲でも土台がしっかりしていれば、メッセージは伝わる」と話した。
CHICO CARLITOは「自分たちが楽しみながらパフォーマンスして、それを聞いたお客さんたちが上がってくれれば最高だと思っている。これからRed Bull IN-YO!に出るアーティストがいれば、最高のパフォーマンスを見せてほしい」。
KAITOも「僕たちは一つの楽曲を作ってきたバンドとして出演したけれど、ここから新しい音楽が生まれても面白い」、DAIDAIは「ケータリングがめっちゃうまかったから、アーティストはRed Bull IN-YO!の出演を狙うべき」と笑いつつ、「自分と違うジャンルの人と音楽を作るのは『カマシドコロ』になる。僕たちのパフォーマンスが世界にないものを作ろうと思う人の刺激になってほしい」と次に続くアーティストへの希望を語った。
最後にTakaはこんなことを言った。「今日の撮影でもヒップホップとロックということで、大人の人がセパレートして対比を演出しようとしていたけど……。俺たちはくっついて、くっついて、みたいな。このバランスがまさにRed Bull IN-YO!だなって感じました」
AwichがCHICO CARLITOを、ONE OK ROCKがPaleduskをフックアップしたように。AwichとTakaがヒップホップとロックをつなげたように。
イマドキの「IN-YO!」はタテにヨコに引き寄せ合うみたいだ。
- PROFILE -
Awich|ジャパニーズ・ヒップホップ・クイーンの異名を取るラッパー。「GILA GILA feat,JP THE WAVY,YZERR」やRed Bull RASENから誕生した「RASEN in OKINAWA」などでシーンを席巻。アーティストからも「姐さん」と呼ばれる、日本のヒップホップシーンの第一人者。
CHICO CARLITO|1993年生まれ。沖縄県那覇市出身のラッパー。ULTIMATE MC BATTLEなど著名MCバトルで優勝し、シーンに名をとどろかす。Red Bull MICの企画「Red Bull 64Bars」やAwichや唾奇ら地元・沖縄のアーティストと共演した「Red Bull RASEN」でのパフォーマンスが話題に。大型フェスへの出演も続く、シーンの重要人物だ。
ONE OK ROCK|ボーカルのTaka、ギターのToru、ベースのRyota、ドラムのTomoyaからなる4人組の日本を代表するロックバンド。 2005年に結成。これまでに武道館や全国のドーム、アリーナツアーを成功させた。海外レーベルとも契約し、アメリカ、ヨーロッパなどでもライブツアーを敢行するなど、世界を舞台に活躍する。YouTube登録者数は500万人を越える。
Paledusk|ボーカルのKAITO、ギターのDAIDAI、TSUBASA、ドラムのBOBで構成する福岡発のラウドロックバンド。オーストラリア、イギリス、アメリカのレーベルと契約を交わし、海外フェスやライブに進出するなど、躍進めざましい若手最注目株だ。2025年にはメジャーレーベルからデビューし、アニメ主題歌に抜擢されるなどジャンルの垣根を越えたリスナーを集める。