今や音楽はストリーミングで聴く時代になり、アルバムの最後にひっそりと収録される、いわゆる「隠しトラック」(シークレットトラック、またはヒドゥントラックとも呼ばれる)に出会う楽しみはしばしば見落とされている。
次のCDに入れ換えたり、アナログレコードを裏返したりするのが面倒だなと思っていたら、思いがけない曲が隠されていた… このような時代があったことを覚えているだろうか? あの音楽体験は、この先も失われるべきではない。
自宅のコレクションを考古学的に掘り返してみるきっかけになることを期待して、今回は我々が独断と偏見でピックアップしたお気に入りの隠しトラックをSpotifyプレイリストにまとめた(人によっては不快に感じる表現が含まれている点についてはご容赦いただきたい)。
何度も繰り返し聴いたはずのあのアルバムにも、知られざる隠しトラックが収録されているかもしれない!
The Ramones「Spider-Man Theme」
レザー&デニムを愛するニューヨークパンクの最重要バンドは、その最終作『¡Adios Amigos!』で摩天楼のスーパーヒーローに最高にクールなオマージュを捧げた。
アルバムラストの「Born To Die In Berlin」のあとに収録されていたアニメ版『スパイダーマン』テーマ曲のカバーは、のちにオーストラリアの『スパイダーマン』玩具のTVコマーシャルで使用された。
Beach House「Wherever You Go」
Beach Houseが2012年にリリースしたアルバム『Bloom』のラストトラック「Irene」の13分26秒後に始まる、荘厳かつ優美な「Wherever You Go」はまさしく予期せぬボーナスだった。
The Beatles「Her Majesty」
アルバム『Abbey Road』の最後に登場する「Her Majesty」の23秒バージョンは、Paul McCartneyが満足していなかったため、収録されないはずだった。
しかし、アルバムのエンジニアを務めたJohn KurlanderはMcCartneyの意向に従わなかった。この結果、世界初と思われる隠しトラックが収録された。
Janet Jackson「Whoops Now」
ポップクイーンのひとり、Janet Jacksonは1995年リリースのアルバム『Janet』に収録したインタールード「Sweet Dreams」の後に「Whoops Now」という隠しトラックを追加した。
この楽曲はのちにシングルとしてリリースされ、オーストリア / フランス / 英国ではチャートトップ10入りを果たし、またニュージーランドではリリース1週間でチャート1位を獲得した。
Jarvis Cocker「Running The World」
Pulpの元フロントマンは、この罵りの言葉に満ちた(同時にどこか暗示的な)隠しトラックを、我々の人生をコントロールしようとする者たちに捧げた。
ソロアルバム『Jarvis』のラストトラック「Quantum Theory」が鳴り止んで30分後に始まる「Running The World」は、ライブパフォーマンスを何回も重ねながら完成した楽曲で、映画『トゥモロー・ワールド』のエンドクレジットにフィーチャーされた。
また、政治家が何らかのヘマをやらかした時にFacebookフィードに登場する楽曲としても知られている。
Pearl Jam「Hummus」
Eddie Vedder率いるシアトル出身のバンドメンバーたちがひよこ豆をすりつぶしたフムスを好きなようだが、それを声高に主張するのは好まないようだ。
そのため、この隠しトラックは1998年のアルバムのラストトラック「All Those Yesterdays」のあとにひっそりと収録されることになった。
Deftones「Damone」
米国出身のニューメタルの旗手は、2枚目のスタジオアルバム『Around The Fur』に2曲も隠しトラックを収録した。
最初の隠しトラック「Bong Hit」はアルバムのラストトラック「MX」が終わってから約20分後、そして2曲目(アルバムベストと言える)「Damone」は約30分後にスタートする。
Nirvana「Endless, Nameless」
Nirvanaのセカンドアルバム『Nevermind』の初回プレスにこの「Endless, Nameless」は収録されなかった。また、後期プレス分では削除されていた。
しかし、この隠しトラックが収録されたバージョンを入手できたラッキーなファンたちにとって、悲しさと怒りと不満が6分48秒に渡って表現されるシアトルロック「Endless, Nameless」は、Nirvanaの最も浮世離れしている側面が感じられる名曲だ。
Nine Inch Nails「Physical」
Adam And The Antsが1980年にリリースしたアルバム『Kings Of The Wild Frontier』に収録されていた「Physical」の血塗られたインダストリアルバージョンと言えるこのカバーは、1992年にリリースされたEP『Broken』の隠しトラックとして収録された。
EELS「Mr. E’s Beautiful Blues」
“E” ことMark Everettと同じような人生の悲しみに直面してきた人なら、歌詞「全くもって今日は美しい日だ(God damn right it’s a beautiful day)」の見せかけのアイロニーが理解できるはずだ。
『Daisies Of The Galaxy』に隠しトラックとして収録されたこの楽曲に関しても例外ではない。この「Mr. E’s Beautiful Blues」はアルバムの最初のシングルカットとなり、EELSの代表曲のひとつとなった。
番外:Lauryn Hill「Cant Take My Eyes Off Of You」
Frankie Valliが1960年代に放ったクラシックヒットのLauryn Hillによるヒップホップカバーは、ソロアルバム『The Miseducation Of Lauryn Hill』の隠しトラックとして収録された。
本来の「Can’t」ではなく「Cant」と表記されたこのバージョンは1998年にシングルとしてリリースされ、世界的ヒットとなったのちに1999年のGrammy賞で「最優秀女性ポップヴォーカルパフォーマンス」部門にノミネートされた。