Jesse Marsch
© Markus Berger / Red Bull Content Pool
サッカー

RBライプツィヒ新監督ジェシー・マーシュから学ぶサッカー&人生哲学

レッドブル・ザルツブルクで数々の成功を収め、2021-22シーズンからRBライプツィヒを率いることが決定した米国人サッカー監督がサッカーと人生についての考えを語ってくれた。
Written by Matt Majendie
読み終わるまで:7分公開日:
ジェシー・マーシュ監督の下、レッドブル・ザルツブルクはエキサイティングで攻撃的なサッカースタイルを打ち出しながらヨーロッパのビッグクラブたちを相手に堂々とした戦いを見せ続けた。
また、マーシュ監督時代には南野拓実をはじめとする将来有望な選手たちをビッグクラブへ送り込むことにも成功した。
先日、かつてアシスタントコーチを務めていた古巣RBライプツィヒの新監督に就任することが発表されたジェシー・マーシュ監督が、サッカーや人生への取り組み方について教えてくれた。
ブンデスリーガでさらなる飛躍が期待される米国人監督のライフハック・ベスト10を紹介しよう。

1:目標は大きく高く設定する

マーシュ監督は、チャンピオンズリーグ出場権獲得とグループリーグ突破を目標に掲げた時に周囲から笑われた。しかし、彼のこの自信が目標達成に繋がった。マーシュ監督はザルツブルク時代を次のように振り返っている。
「就任初日にチャンピオンズリーグ出場クラブになる必要があるということを説いた。大きな目標を設定すれば、毎日その目標について話し合い、努力を続けざるを得なくなる。“目標を達成できる” と自分を信じる必要が出てくる。目標は声にするべきだ。そしてその目標達成できなかった時は大いに悔しがるべきだ」

2:“自分の最も弱い部分” を基準に判断する

マーシュ監督は、チャンスが来たときに実力を100%発揮してもらうために、先発メンバーよりも彼ら以外の選手たちに手間暇をかけるアプローチを採用している。そして、このアプローチのおかげで、彼のチームはローテーションの層が厚い。
「私はこのアプローチを “ウィーケスト・リンク” と呼んでいる。チーム力は “その中で最も弱い選手” が基準になる。誰がピッチに立っていようが、これは変わらない」と語るマーシュ監督はローテーションを積極的に採用しており、先発メンバーに怪我やトラブルがなくても、ベンチやベンチ外の選手をピッチに立たせてチーム力の底上げに取り組んでいる。

3:若手にチャンスを与える

キャリアを通じて、マーシュ監督は積極的に若い世代に経験を積ませてきた。ヨーロッパ最大の舞台でも若い選手を積極的に起用してきたマーシュ監督は「経験がプレーを成長させる唯一の方法」と考えている。
「怪我人は必ず出る。また、怪我人を無理矢理投入しても準備ができていないのでまず結果は出ない。勝利とは個人、個人の成長、チーム全員が一丸になることによって得られるものだと思っている。これが私の哲学だが、私は経験を積むことでこの哲学を手にした」
「私は、リーダーシップ、メンタリティ、サッカー、人生における自分の哲学がヨーロッパの最高レベルで通用するのかどうかを確かめたいと思っているが、今までのところは通用しているようだ」

4:マーシュ監督のメンタリティの源

マーシュ監督のメンタリティは彼が積んできた経験によって培われたものだ。スポーツを愛する子供(本人は当時の自分を “そこそこ上手かったが抜きんでてはいなかった” と評価している)だったマーシュ監督は、あらゆるスポーツに挑戦したが、彼のスポーツへの熱意は 負けず嫌いな性格から来るものだった。
マーシュ監督は「トランプ、バスケットボール、アイスホッケー、卓球などで負けたら最悪の気分になっていた」と振り返っている。しかし、実はこのような経験が、マーシュ監督を勝利第一主義から解き放つことになった。
彼のメンタリティに大きな影響を与えたもうひとつの大きな経験がプリンストン大学での学生生活だった。米国有数の名門大学に入学した彼は「ひとりの人間としてどれだけ成長できるか」というテーマでスポーツと勉強を両立させた。
ジェシー・マーシュ
ジェシー・マーシュ

5:世界一周旅行が教えてくれたこと

マーシュ監督が家族で世界一周旅行をしたことは広く知られている。この世界旅行には、家族の時間を過ごせたという当然のメリットとは別に、他人とプレッシャーについての理解を深められたというメリットもあった。
「世界旅行をした私は、仕事で得ているストレスなど実は存在しないということ、自分の “世界” はとても小さく、自分が感じているストレスなど些細なことだということに気付いた。また、他人についても学べた。自分とは違う人たちの暮らしや考えに目を向けることを学んだ。他人を理解できればベターなコミュニケーションを取ることができると私は信じている」

6:サポーターと共に歩む

レッドブル・ザルツブルクの監督就任時、サポーターたちの間でいくつかの疑念が生まれた。RBライプツィヒでもまた同様の疑念が生まれる可能性は十分に考えられるが、本人はそのような疑念を受け止め、彼らの声に耳を傾けていくつもりだ。
サポーターがいなければ、自分たちは存在しない。どのクラブへ行こうと、私は必ずサポーターとクラブの関係の “核” に触れようと努力している。ザルツブルク時代も、地元コミュニティの意志が反映されているクラブにするように心掛けた」

7:ポジティブに考える

マーシュ監督は「これは米国人の気質だが」と前置きして、「私はどんなに状況が不利でも必ず勝てると思うようにしている」と語り、自分がこのような気質を持つ米国人であることを誇りに思っていると続けている。
「私にはヨーロッパでのプレー経験がないのに、監督としてリーグを制し、チャンピオンズリーグに毎年出場し、さらにはビッグイヤーを掲げられると無理なく考えられるほど間抜けだ。無謀なんだ(笑)」
ジェシー・マーシュ
ジェシー・マーシュ

8:毎日の成長を心掛ける

マーシュ監督のサッカー哲学は彼の生活にも持ち込まれている。マーシュ監督は、サッカーのシステムであろうと、家族とのコミュニケ−ションであろうと、すべての面で成長することを目標に定めている。
「すべては小さな一歩の積み重ねだ。ドイツ語を毎日少しずつ学ぶのもそうだし、チームのトレーニングメニューをもう少し分かりやすくするのもそうだし、人間関係について考え、選手と会話を試みるのもそうだ。結論を言えば、私は達成感が得たい。より強く、より優れた、より賢い人間に成長できたという実感を得たい。これが得られれば、自宅へ戻り、ビールとワインを飲み、家族とリラックスした時間を過ごせる。笑顔で素晴らしい1日を過ごせるんだ」

9:最低は最高の学習機会

ザルツブルク時代は数々の素晴らしい瞬間に恵まれたが、監督、そしてひとりの人間としてのマーシュ監督に最大のインパクトを与えたのは、最低の瞬間の数々だった。
6-2で大敗したチャンピオンズリーグ2020-21シーズン・グループリーグのバイエルン・ミュンヘン戦について、マーシュ監督は次のように振り返っている。
「あのような試合はしっかりと振り返る必要がある。なぜなら、悔しいからだ。あそこまで酷いと自分の心が闇に飲み込まれてしまう。しかし、最も厳しい状況を迎えた時に、私は最も強くなる必要がある。自分たちが気圧されていないことを示してやるという強い気持ちを持つ必要がある」
「簡単な状況では全員問題ない。実力が問われるのは厳しい状況、追い込まれた状況だ。バイエルン・ミュンヘンに勝つためにはどうしたら良いのか? 私はヨーロッパ最強チームに勝利するための “基準点” を定めようとしている」

10:エナジーレベルを最大で保つ

トレーニング中や試合のタッチライン上のマーシュ監督からは、彼の放出するエナジーが非常にパワフルであることと、それがコーチ陣や選手に伝わっていく様子が明確に確認できる。マーシュ監督は、ロッカールーム全体に注意を払い、チーム全員が自分からポジティブなパワーとエナジーを受け取り、最大限の力を発揮できるようにすることが監督の役割だと考えている。
「そのような役割を果たすためには、常に自分のエナジーを最大限に高め、ポジティブでいる必要がある。そしてそのような自分をチームに伝えていく必要がある。毎日チームを私と同じエナジーレベルへ引き上げることがリーダーとしての私の仕事だ」
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