エンデューロはあらゆるMTBカテゴリーの中でも特に過酷で、強靭な筋力やスキル、度胸はもちろん、甚大な体力とスタミナも求められる。知らない人に説明しておくと、MTBエンデューロレースは複数のステージで構成されており、通常の場合、ダウンヒルのタイムトライアル区間と登坂が中心のリエゾン(非計時)区間で構成される。
苦しい登坂区間のせいで、ダウンヒル区間の2ステージ前の段階で腕や脚・肩が音を上げてしまえば、好タイムは決して望めないだろう。では、エンデューロ全区間を攻略できるようになるためには、どのようなトレーニングを行えばよいのだろう?
エンデューロ用トレーニングメソッドの解説のために、今回はスコットランド出身のプロエンデューロライダーで数々の実績を持つジョー・バーンズが登場してくれた。エンデューロのフィットネスとテクニック向上に役立つ彼の教えに耳を傾けてみよう。
1. 1年を通してレース用バイクに乗る
エンデューロの良いところは、1台のバイクで全てをこなせる点だ。ジョーはトレーニングでも年間を通して同じレース用バイクに乗り続けている。レースではプラクティスは1ラップしかなく、コンディションも刻々と変化するので、自分のバイクが唯一不変の要素だ。レース用バイクを完全に熟知するまで乗っておけば、レースにおける変動要素をひとつ減らせる。ロードバイクやMTBに関わらず、トレーニング時にレース用とは違うバイクを使用すれば、これを乗りこなすことに気を取られてしまう。トレーニング用とレース用のバイクを統一してライディングをマスターしておけば、レースに集中できる。
「僕の場合、ターボローラー(固定ローラー台)でもレース用バイクのレプリカを使用している。そうすれば、レースと同じ角度とフィット感でインターバルトレーニングができるからね」と言ってジョーは笑う。
もちろん、これは極端な例かもしれないが、言いたいことは分かるだろう。
2. 自分に合う食事を見つける
様々な食事を試して、何が自分に合っているのかを判断する作業は時間をかける価値がある。自分に合った食事はレースのパフォーマンスに大きな影響を与えるからだ。自分に合った食事に関する知識を得たら、それを徹底すること。たとえば、自分自身のパフォーマンスを最大限に引き出す食事がカレーではないなら、レース前夜にカレーをドカ食いする誘惑に負けてはいけない。
「僕の場合、レース前夜は常にマッシュポテトと魚、野菜を摂るようにしている。パスタなどの炭水化物をドカ食いすると、いつも気分が悪くなってしまうんだ。僕が所属するCanyonのチームクルーたちがレース前夜にレストランなどで外食している時でも、僕は自分の食事を徹底している。レース当日の朝食は、非加熱のポリッジとフルーツを摂り、レース中の補給食はピーナッツバター&ジャムのサンドイッチと決めている」
ジョーの食事法はごくシンプルに見えるが、これは確かに機能を果たしている。そしてジョーは「レースウィークは他の食事を試すための時間ではない」と指摘する。自分自身に合った食事を守ることが大事なのだ。
3. トレーニング日誌をつける
「成長を記録しておくことは、成長そのものと同じくらい重要だ」とジョーは語る。成長を記録するための唯一の方法は、トレーニング内容を毎日ノートに書き留めることだ。
トレーニング日誌をつけることで、成長の内容を明確にし、自分自身の中に潜む問題点や弱点をあぶり出す作業に役立つ。また、日々の成長を実感することで大きな満足感が得られる。
4. ターボトレーナーを導入する
「自分のパフォーマンスを測定する際に、唯一信頼できるのがパワークランク(左右が独立しているペダル)だ。パワークランクは近年かなり手頃な価格になってきている。予算を投じる価値は十分にあるし、トレーニングにおいて大きな助けになる」とジョーは語る。
日を開けて10分間の登坂シミュレーションを行い、全力でペダリングみよう。すると、同条件下でのパワーと持久力の平均値がどれだけ向上したかが見えてくる。ターボトレーナーはこのようなトレーニングに有効だが、ファンの風圧で負荷を発生させるタイプより、マグネット式のタイプを選ぶようにしよう。ファン式のターボトレーナーには、気圧によって負荷が変化する欠点があるからだ。
また、トレーニング中に肩の痛みやハムストリングスの張りなどを感じた時も日誌に書き込んでおくようにしよう。怪我などの状態を把握しておけば、トレーニングプログラムが最適化しやすくなる。
5. ジムでの筋力強化トレーニングを行う
ロングライドやインターバルトレーニングはトレーニング日誌の基本項目だが、体力と筋力を強化する方法はこの2つだけとは限らない。バイクに乗っているだけでは鍛えられないエリアをカバーするためには、ジムでのトレーニングも大きな重要性を持つ。強力なパフォーマンスを手にするためには、ジムでの筋力 / スタミナ強化トレーニングは極めて重要だ。
「エンデューロでライダーたちのスピードを奪う最大の原因は腕の疲労なんだ。腕は呼吸系や脚よりも酷使される」とジョーは指摘し、さらに続ける。「腕を鍛えるにはジムトレーニングが一番だ」
彼はインドアクライミング用のフィンガーボードを使ったトレーニングや、ウェイトを用いた “ファーマーズ・ウォーク” と呼ばれるエクササイズ(両手にダンベルまたはケトルベルなどを持って歩くことで握力や全身の筋力強化を行う)を定期的にこなしている。これらのトレーニングによって、レースにおいて極めて重要な握力と持久力を高めることができる。
6. 休息をしっかり取る
ジョーは、トレーニングプログラムで最も重要なのは休息だとしている。
「僕はエクササイズを3日行うごとに休息日を1日設けるという法則に従っている。また、レース翌日も休息するようにしている。メンタル面でのストレスを癒すためにもね」
もちろん、このエクササイズと休息日のサイクルは時期によって変動するが、適切な休息を設けないままトレーニングを続ければ、効果が半減してしまう。ジョーが言うように、エクササイズの多くは全力で取り組んでこそ最大の効果を発揮する。全力を出し切れないトレーニングは時間の無駄に過ぎない。だからこそ、疲れていると感じた時は迷わず休息を取るべきだ。