Jürgen Klopp, Red Bull's Head of Global Soccer sits on a Red Bull F1 car in Salzburg, Austria on January 7, 2025.
© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool
サッカー

【クロップ効果を探る】希代の名将がレッドブルのサッカーにもたらせること

ユルゲン・クロップがレッドブル・グローバルサッカー部門責任者に就任した。ドイツが誇る名サッカー監督はレッドブルとサッカー界に何をもたらしてくれるのだろうか?
Written by Thomas Peeters
読み終わるまで:7分Published on
ユルゲン・クロップは未来に興奮を覚えている。そしてユルゲン・クロップが興奮を覚えているときは、世界のサッカーファンも興奮を覚えるべきだ。
先日、クロップは待望のサッカーのトップレベルへ復帰したが、この復帰は彼にとって新時代の幕開けになる。明確なサッカー哲学を持つ組織との仕事は最適任のはずで、57歳の本人も、サッカークラブの監督を20年以上続けたあと、正真正銘のグローバルな環境となるレッドブルで新たな挑戦を始めることを非常に楽しみにしている。
クロップはリヴァプールに新たな黄金時代をもたらした

クロップはリヴァプールに新たな黄金時代をもたらした

© James Baylis - AMA/Getty Images

元リヴァプール監督であるクロップの情熱カリスマ性、そして “ヘヴィーメタル” と自ら名付けたアグレッシブなサッカー哲学は、レッドブルが目指してきた「若手選手を積極的に起用するハイプレス・ハイスピードサッカー」との相性が抜群のはずだ。
世界各地に存在するレッドブルのサッカークラブを見ていくというクロップの新しい仕事は、彼を毎日ピッチサイドに立たせるものではない。その代わり、彼はレッドブルのサッカープロジェクト全体を指導していくことになる。レッドブルのサッカークラブは4大陸にまたがって活動しているため、今回の仕事で大きなインパクトを残すことに彼は大きなやり甲斐を感じているはずだ。
ドイツ・ブンデスリーガのマインツ05で2001年から始まった長い監督キャリアを通じて、クロップは今回のようなビッグチャレンジでこそ革新と限界突破を得意とする自分の能力がフルに発揮されることを幾度となく証明してきた。だからこそ、本人は未来に興奮を覚えているのだ。
そこで今回は、新たな挑戦を始めたクロップがレッドブルのサッカーにもたらせることをリストアップしていこう。
01

若手選手の発掘・育成

リヴァプールにおけるクロップ最大のレガシーはトロフィーではなく、彼が発掘・育成した優秀な若手選手たちと言われている。
コナー・ブラッドリーボビー・クラークジャレル・クアンサージェームズ・マコーネルジェイデン・ダンズなどの選手たちは、クロップが最も特別なタイトルとしている2024年のカラバオカップ決勝(対チェルシー)に出場した。
ザルツブルク時代のハーランドは17戦16ゴールの記録を残した

ザルツブルク時代のハーランドは17戦16ゴールの記録を残した

© Koji Watanabe/Getty Images

クロップの才能発掘能力は、ボルシア・ドルトムント時代にも発揮され、ロベルト・レヴァンドフスキ香川真司イルカイ・ギュンドアンマリオ・ゲッツェマッツ・フンメルスなどの才能を引き出した。ちなみに、彼ら全員がその後も素晴らしいキャリアを築いている。
このようなクロップの才能発掘能力と育成への情熱は、グローバルなタレントの宝庫としてのレッドブルをさらにレベルアップさせるはずだ。
レッドブルのユニフォームを身に纏ってピッチに立っている才能溢れる若手選手全員をリストアップするまではかなりの時間が必要になるかもしれないが、クロップは、次世代のアーリング・ハーランド、サディオ・マネ、ソボスライ・ドミニク、ヨシュコ・グヴァルディオール、タイラー・アダムスがポテンシャルを最大限まで発揮できる環境作りを自分のミッションにするはずだ。
02

強烈な存在感

クロップのレッドブルでの新たな挑戦が決まったあと、一部のファンが監督業に復帰しないことに対して落胆の意を表明したという事実は、彼の圧倒的な人気の証左だ。
クロップの真摯な姿勢サッカーはエンターテインメントであるべきという信念は非常に影響力が大きく、彼が率いてきたクラブのサポーターだけではなく世界のサッカーファンが、サッカーの人間的な部分に対する彼の情熱と献身に敬意を抱いている。
クロップは祝勝会を含むすべてに全力で取り組む

クロップは祝勝会を含むすべてに全力で取り組む

© INA FASSBENDER/AFP/Getty Images

しかし、サッカーファンが心配する必要はない。なぜなら、彼がピッチサイドに常にいないからと言って、今回の挑戦に対する彼のモチベーションが低いわけではないからだ。トレードマークの笑顔はレッドブルでも維持されており、本人は次のように語っている。
「私はサッカーが好きですが、そのすべてのプロジェクトが現場である必要はありません。私の仕事の中身は変わったかもしれませんが、サッカーとサッカーを今の形にしてくれている人たちへの私の熱い思いは何も変わっていません」
03

さらなるレガシー

クロップが新たに所属するレッドブルは、目的意識の高いリーダーたちと活動を共にしてきた組織だ。すべては、クロップと同じく元リヴァプール監督の故ジェラール・ウリエ氏がグローバル・スポーティング・ディレクターに就任した2012年から始まった。
2020年に逝去したウリエ氏はレッドブルにサッカー哲学を教えることで大きなレガシーを遺した。そしてそのレガシーをラルフ・ラングニック氏が引き継ぎ、彼の貢献によって、レッドブルのサッカーには現在も続く、高速で勇敢なプレースタイル若手選手にトップレベルでプレーするチャンスを与えることへの高い意識が備わった。
RBザルツブルクで元リヴァプール監督ジェラール・ウリエと握手するラングニック

RBザルツブルクで元リヴァプール監督ジェラール・ウリエと握手するラングニック

© GEPA pictures/Red Bull Content Pool

04

優れたサッカースタイル

上記のレッドブルの特長すべては新たにグローバルサッカー部門責任者となったクロップと上手く調和するはずだ。何しろ、クロップが率いて成功を収めたクラブは少なくない。それらに所属していた選手たちはボールを奪うまで相手を執拗に追い回し、ボールを奪った直後に攻撃へと移行していた。
ドルトムント時代の成功がすべての始まりとなった

ドルトムント時代の成功がすべての始まりとなった

© Christof Koepsel/Bongarts/Getty Images

クロップのサッカー哲学とプレースタイルは、あらゆるレベルにまたがるその素晴らしいキャリアを通じて進化を続けてきた。Instagramでの就任発表で、クロップ本人も、昇格、降格、タイトル、トロフィーが賭かった戦いを経験してきたと振り返っていた。
サッカー界におけるクロップの影響力の大きさは、世界各地の若手監督やアカデミーで確認できる。また、ハイプレスからの超高速カウンターという彼が掲げてきたプレースタイルは、多くのサッカークラブの方向性に影響を与えている。
05

大一番に強いメンタル

クロップはキャリアを通じて大一番に強いことを何回も示してきた。大きなプレッシャーがかかり、満員のスタジアムが期待で揺れているとき、彼の率いるチームは魔法のような瞬間を生み出してきた。
たとえば、2019年に4-0で逆転勝利を収めたバルセロナ戦は誰も忘れることはできないだろう。また、バイエルン・ミュンヘンを5-2で下した2012年のDFBポカール決勝も大きな話題となった。
レッドブルでのクロップは、世界各地で繰り広げられる大一番を現地で見守れるようになる。MSLカップ決勝に挑むニューヨーク・レッドブルズ、ヨーロッパレベルを戦うRBライプツィヒ、または昇格を狙うRB大宮アルディージャなど、数多くの観戦機会がクロップに与えられる。
アンフィールド史に残る逆転勝利を挙げた

アンフィールド史に残る逆転勝利を挙げた

© Alex Livesey - Danehouse/Getty Images

06

さらなる高みを目指し続ける姿勢

チャレンジを好んできたクロップは、これまでと変わることなくポジティブかつ謙虚な姿勢で新たな仕事に取り組んでいる。いくつものリーグタイトルとチャンピオンズリーグ優勝を手にしてきたからと言って、自分の知見の上にあぐらをかくわけではないのだ。
その代わり、クロップは成長と進化のチャンスを常に探している。
「また学びたいですね。3日ごとに試合があるときは、学ぶ時間がほとんどありませんでしたが、今は時間とチャンスが得られています。自分で見て、感じながら、サッカーのために役立つものを見極めていきたいです」
リヴァプールをチャンピオンズリーグ優勝に導いたクロップ

リヴァプールをチャンピオンズリーグ優勝に導いたクロップ

© Matthias Hangst/Getty Images Sport

歴史が何かを教えてくれるのであれば、それはクロップがサッカーの未来を探る新たな旅に再び繰り出したということだ。そして幸運なことに、私たちはその旅に同行することができる。
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