『ジャストコーズ3』はPS4/Xbox One/PC対応 © Avalanche Studios
『アサシン クリード』 と 『コール オブ デューティ』 は毎年のように新作が発売されるが、予算の規模が大きいビッグタイトルの続編は数年間待たされる場合が多い。 『ジャストコーズ』 がその好例だ。このゲームは2010年以降新作が発売されておらず、長期に渡り沈黙が続いているため、Avalanche Studiosが開発したこのオープンワールド型アクションゲームが『ハーフライフ3』と同じ道を歩んでいるのではないかと気を揉まずにはいられない。
しかし、実際は違うようだ。少なくとも我らがリコ・ロドリゲスはその姿を我々の前に再び見せつつある。『ジャストコーズ3』はPC、PS4、Xbox One対応で2015年末に発売予定だ。まだ詳細は明らかにされていないが、今回はディレクターを務めるローランド・レスターリンを捕まえ、開発や今後について話を聞いた。熱狂的なファンを抱えながら、何故ここまで発売が遅れているのだろうか?
マンハッタンにあるAvalanche Studiosのオフィスでインタビューに応じたレスターリンは次のように話し始めた。「次のゲームをどうするか。これについては常に考えています」
「当然ながら、『ジャストコーズ』と『ジャストコーズ2』が成功したので、『ジャストコーズ3』の開発を決定したのは自然な流れでした。私がAvalanche Studiosに参加したのは2011年で、当時はまだ企画が立ち上がったばかりでした。そして2012年頃から開発をスタートさせました」
元Atariの開発マネージャーだったレスターリンにとって、『ジャストコーズ』シリーズに携わるのは夢だったようだ。「最初は本当にファンのような気持ちでした。Avalanche Studiosは私が一緒に仕事をしたいと思える数少ない開発会社のひとつですし、誘われたときは本当にスペシャルな気持ちになりましたよ」
当然のことながら、レスターリンは映画『ワイルドスピード』シリーズが控えめに思えるような、広大なオープンワールドで展開される派手なアクションが魅力の『ジャストコーズ』シリーズの新作に対し、自分なりの希望を持っていたが、その希望とはロケットランチャーやスパイダーマンも顔負けのグラップリングフックによって生み出されるそれらのアクションを引き継ぐことだった。彼はそれがファンを喜ばせる魅力だと信じている。
「まずは『ジャストコーズ3』で何がやりたいかを話し合いました。そのアイディアのいくつかは今作に盛り込まれています。そして新しい機能の大半はファンが求めていること、そしてMODのコミュニティが求めていたことです。プレイヤーたちがどう楽しんでいるのか、そして 『ジャストコーズ2』で盛り込めなかった部分について念入りなリサーチをして、『ジャストコーズ3』に盛り込むかどうかを判断していきました」
「企画が立ち上がった時のアイディアを大事にしたいと思っていました。リコが広大なスペースを3次元で動き回る時に得られるあの感覚です。ですので、すべてを検討した結果、パラグライダー、スカイダイビング、ウィングスーツ、スリングショットなどを盛り込むのは自然ではないかと思えました」
『ジャストコーズ3』 © Avalanche Studios
そして彼は興奮して続けた。「グラップリングフックとの組み合わせは最高ですよね。マップを移動するたびに笑顔になります」
ウィングスーツがあれば、あの巨大なスケールの爆発もかなり楽しめるようになるはずだ。「当然ながら『ジャストコーズ』は破壊と爆発が人気ですので、その部分を更に押し進めたいと思いました。Havok(物理エンジンの開発会社)との長年の協力体制のおかげで、破壊の演出がネクストレベルに進化しましたし、爆発もスケールアップしました」
そして欠かせないのがオープンワールドだ。『ジャストコーズ3』では、リコの舞台が東南アジアのジャングルから南ヨーロッパへ移っている。
「『ジャストコーズ』シリーズは他のゲームと比べるとリゾート感覚が強かったと思います。 美しい海、青々とした木々、見事なビーチなどに囲まれた鮮やかな色合いの環境でした。今作でもその雰囲気を保ちたいと思ったのですが、過去2作で使用したジャングルは他のゲームが真似るようになっていました。そこで美しい海とリゾート感覚が同時に得られる場所で、しかも垂直方向のスケール感を持つ場所を探していました。その結果として選ばれたのが地中海です。また地中海は人類の歴史も豊かです」
『ジャストコーズ3』のストーリーは、CIAエージェントのリコが生まれ故郷の架空の島へ戻るが、この島が無情な独裁者によって支配されていることが分かることからスタートする。「今作ではリコにもう少しキャラクター付けをしようということになりました。彼がどこから来たのか、そして彼が何故『リコ』になったのか。今回は彼の誕生秘話が盛り込まれます」
『ジャストコーズ3』 © Avalanche Studios
しかし、レスターリンはストーリーに関してはそこまで重要ではないとし、『ジャストコーズ3』は過去2作よりも自由度が増えた、自分だけのアドベンチャーが楽しめる巨大なサンドボックスだと強調する。
「マップは1036平方キロメートルの広さになっています。過去最大級のマップを組み込み、垂直方向のスケールアップを目指しています。最近のゲームデザインではそこまで広大なマップは求められていないと思いますが、スケールダウンはしたくなかったのです。マップが広いほど楽しめるようになるはずですから。今作は同程度のサイズを維持しつつ、その密度を高めようとしています」
その結果、今作ではトンネルや洞窟、そして周囲の海などが追加されている。そしてまるでこれまでのスピードボートが大して楽しくなかったかのように、Avalanche Studiosは今作で海の物理シミュレーションに本格的に取り組んでいる。「今作では海の表現にかなりの力を入れているので、ボートの操縦が以前よりも楽しめるはずです。海が動くので、ジャンプやランダムな動きが体験できます」
当然ながら、これらの表現は次世代機やハイエンドのPCがなければ実現不可能だ。レスターリンは2010年の段階から開発チームは『ジャストコーズ3』を次世代機で発売したいと考えていたと言う。
『ジャストコーズ3』 © Avalanche Studios
「どのゲームでも最初の段階で『このゲームにはどのフォーマットがふさわしいのだろう』と考えます。実は、私たちは最初の段階から現行のゲーム機ではやりたいことが表現できないと考えていました。次世代機のメモリとパワーが必要だと思ったのです。私はオタクですし、これまでできなかったことが実現できる膨大なパワーは気に入っています」
レスターリンはPS4版とXbox One版のフレームレートと解像度についてはまだ話せる段階にはないとしたが、この部分は、『アサシンクリード ユニティ』や『DRIVECLUB』などの他のPS4やXbox One専用タイトルでしばし物議を醸し出しているため無視できない。「最高のゲーム体験をしてもらえるよう、最大限の努力をしています。今は具体的な目標を設定していませんが、素晴らしいビジュアルが楽しめるはずです」
またレスターリンは「なぜ『ジャストコーズ3』はマルチプレイヤー非対応なのか?」など問い詰めるような我々の質問にも具体的には回答しなかった。『ジャストコーズ2』はシングルプレイ専用だが、MODを追加すれば狂気と楽しさが混在する2000人のマルチプレイヤーが楽しめるようになる。そのため、『ジャストコーズ3』のマルチプレイヤーを望むファンは多かったが、Avalanche Studiosはマルチプレイヤーを盛り込まないことを発表した。何故なのだろうか?
レスターリンは『ジャストコーズ』シリーズはシングルプレイが最も楽しいゲームだが、MODが開発されればそれはそれで是非楽しみたいと回答した。「私たちと同等のゲーム体験を作り出せるかという挑戦からは様々なことが学べると思いますので、私たちはMODコミュニティをできる限り応援したいと思っています。ですが、『ジャストコーズ』シリーズはサンドボックスですので、個人で楽しむゲームです。プレイヤーが迫力ある連続爆発を楽しみたい場合は、それは誰かに邪魔されないようにしなければいけません」
『ジャストコーズ3』ではマルチプレイヤー非対応の代わりに、開発側でさえも可能だとは思っていなかったような自分だけの派手なゲームプレイが楽しめるようにしていくようだ。「非同期にして、オンライン機能を減らす方向です。逆にチャレンジやリーダーボードのような部分を強化して、それを仲間と楽しむというか、お互いに自慢しあうようなシステムにしようと。このようなシステムがソーシャルゲームとしての側面を促すと思います。沢山のプレイヤーがスキルを自慢するようになるはずです」
では、レスターリン自身のスキルはどうなのだろうか? 彼の元で働くスタッフが知らなかったようなゲームスキルを持っているのだろうか?
「私はたまに嫌な奴になるんです。ですので、複数のオブジェクトをつなぎ合わせて、軍事施設をワンアクションで一気に壊滅させるのが得意ですね。あとはバイクをヘリコプターにぶつけるのも楽しいですね。難しいですが、成功させると笑いが止まらなくなりますよ」
これこそがレスターリンの考える『ジャストコーズ3』の楽しさであり、彼が今回盛り込みたいと思った部分だ。『ジャストコーズ3』はグラップリングフックやウィングスーツ、そして様々な車両などを使って自分自身で楽しさを表現するゲームなのだ。
「プレイヤーは私たちが可能だとは思っていなかった方法でシステムを組み合わせ、また別の100個の可能性を生み出しています。崖から車で飛び出し、車からバックフリップで飛び出すなど、こういう小さなアクションがプレイヤーに笑顔をもたらすのです」
現在『ジャストコーズ3』は順調に開発が進んでおり、2015年末の発売を予定しているとリステリンは付け加えた。この時期の発売は激しい競争に巻き込まれるが、Avalanche Studiosが心配する必要はないだろう。
Xbox OneとPS4専用の最初の数タイトルはそこまで衝撃を与えるものではなく、リマスター版や世代を超えて楽しめるタイトルがその穴を埋めることになったが、『ジャストコーズ3』が前2作と同様のアドレナリンラッシュを生み出す内容であれば、シーンは大きく変化することになる。クリスマス、そしてリコとの再会が今から待ち遠しい。