五十嵐カノア
© Tatsuya Yamanaka(Q+A)
サーフィン

五十嵐カノアがサーフィンから学んだ5つの大切なこと!

わずか3歳から波の上に立っていた五十嵐カノアにとって、サーフィンは大切なことをたくさん教えてくれる先生だった! ここでは、そんな彼がサーフ人生で得た5つの教訓を紹介してもらう。
Written by alex shu nissen Edit by Hisanori Kato
読み終わるまで:8分Published on
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© Tatsuya Yamanaka(Q+A)

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【Topic1 】 サーフィン競技で学んだこと !

負けた理由にこそ、成長のチャンスがある
若くしてトップアスリートとして活躍を続けるカノアさん。世界中から注目される中、日本の国旗とファンの期待を背負う重圧は、並大抵のものではないはず。
 
しかし、彼はよくインタビューで、プレッシャーを味方にしていると語っている。一体どうやってメンタルをコントロールしているのだろうか。
「プレッシャーはむしろエネルギーになります。競技をする中で学んだのは、辛い時でも全てはレッスンであるということ。結果には、勝ちか負け、があるのではなく、勝ちか“学び”なんだと捉えています。負けたとしても、次により良くなるチャンスを得たって考えるんです」

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負けを必要以上に悪く捉えない。人間誰しも良い時もあれば悪い時もある。プロフェショナルというのは、悪い時にこそ、その本質が問われるもの。ことサーフィンに関しては、自然を相手にするわけだから、常に結果を求められるアスリートにとっては、かなり酷な競技だ。
「もちろん結果が出ないのは辛いですよ。どれだけ努力しても、それでも足りない時もある。相手に負けるより、海に負けることが多い。だからこそ割り切って、自分にだけは負けないようにするんです。自分のコントロールできないことにエネルギーを使うと疲れちゃいますから」

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このメンタルは、15歳で足を骨折しサーフィンができなくなった経験から培われたという。サーファーとしての成長期に大事な大会に出られず、取り残される焦りを感じる中で、家族のアドバイスが支えになった。
「他人のことを考えていても足は治らない。自分のできることだけに集中するべきだ、と両親が励ましてくれました。この期間でメンタルが強くなって、今では怪我でさえも意味があったと思えます。大切なのは、得た教訓をどう活かすか。それは海の中に限りません。外ではなく内側に意識を向けることで、日常生活でも心が乱れることは少なくなりました。例えば、車の渋滞はコントロールできないけど、10分早く家を出ることはできますからね」
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【Topic2 】 日本とアメリカの往来で見つけたこと !

繊細さと大胆さ、二面性の使い分けが大切
日本人の両親を持ち、アメリカで育ったカノアさん。自分自身としては、日本人、アメリカ人どちらの感覚が強いか尋ねてみた。
「どっちだと思うかと聞かれたら、どっちも。何人でもなくて、世界人というか、宇宙人と答えたい(笑)。自分は自分でしかないし、世界中に友だちが居て、どの言語を喋る自分も全部が自分だと思う。だから、アイデンティティで悩むことはそんなにありませんでした」
   
サーフィンを通して地球を巡る彼は、広い視点で世界を見ているのだろう。その上で、日本人、アメリカ人、両方のマインドの良い部分を取り入れるようにしている。
「日本人のすごいところは、よく考えるところ。自分自身、考えすぎてしまうこともあるけど、100%になるように細かく準備しておいて良かったと思うことが多い。繊細な周囲への気遣いも心がけています」

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長所や短所というのは、シチュエーションによって変わるものだ。勝負の局面では、スイッチを一気に切り替える。
「逆に大会の時は、アメリカ人の持つ、他人を気にせず、自信を持って突き進むマインドで臨みます。周りを見ないで自分だけに集中するんです。要は、国籍は関係なく、自分に必要な精神を大事にすれば良いと思います」
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【Topic3 】 文武両道で身につけたこと !

日々の継続は向上心を育む
カノアさんは現在、ハーバード大学の大学院に進学し、経営学を学び始めた。トップレベルのサーファーとして活躍する今、なぜ改めて勉学に打ち込むのだろうか。
「子どもの頃から勉強するのが好きだったんです。プロサーファーになって、机に向かって勉強することがなくなったのが、むしろ寂しかったぐらいで。だから、最高の環境で学べるチャンスが来て、絶対に逃したくないと思いました」

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ビジネススクールで学び、投資で会社を成長させることが、今はすごく楽しいのだと語っていた。カノアさんが人生の生きがいにしているのは、成長を実感するということのようだ。
「昨日の自分よりも、今日の自分が1%でも成長していたいと思って毎日を生きています。勉強して新しい知識をつける喜びは、サーフィンで新しい技ができるようになるような、そんな達成感を味わえて嬉しいんです」
 
5か国語を話せることでも知られる彼にとって、学ぶことは苦痛ではなく、自然なことなのだ。語学の習得の方法にもアスリートらしいストイックな向上心が感じられた。
「語学も、友だちと一緒にいるうちに自然と学んでいきました。教えてもらった単語を繋げてみることから始めて、伝わらなくても、笑われても、どんどんトライしてみる。どうせ絶対に間違うんだから、堂々と自信を持って喋るんです。大事なのは喋れるようになるまで諦めないこと。継続する大切さを学べるのが勉強とスポーツの共通点だと思います」

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【Topic4 】 OFFの息抜きで実感したこと !

1分も無駄にせず、今に100%集中
アスリートにとっては休息を取ることも仕事のうち。とはいえ、カノアさんの場合、オフとは言っても、ただゆっくりチルして体を休めるだけ、なんてことはなかった。
「ゴルフやバスケをしたり、勉強をしたり、家族と過ごしたりしていますね。休みの日でもスケジュールを立てて、正確に守ることを意識してます。1分も無駄にしたくないので、その時間は100%目の前のことに集中するんです。その方が一日にいろんなことができますからね。中途半端がいちばん良くありません」

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想像よりも忙しいオフだったが、これこそがトップを目指す競技者のメンタリティ。全ての人に平等な、限りある時間。この使い方で差が出るということなのだろう。サーフィンをしていない時間も無駄にはできない。
「サーフィンのことを考えないのって実はすごく難しくて。何かに集中してないと、頭のどこかで常に考えてしまいます。だから他のスポーツをするのが良いんです。熱中している瞬間はサーフィンを忘れらるから良い息抜きになるんですよね」

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オフの時間を有効活用すること、その中でも、サーフィンから離れることが、不思議とサーフィンに良い影響を与えてくれると言うのだから面白い。
「世界で戦うレベルになってくると、サーフィンをどんなに練習しても、上達できるスキルってほんの僅かに良くなるぐらいなんですが、バスケやゴルフは一日で急激にコツを掴んで上手くなる日があって。そういった成功体験が刺激になり、サーフィンでのスランプを抜けるきっかけになったり、“自分はできる”って自信にも繋がるんです」
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【Topic5 】 過去の自分から導く将来のこと !

人間力がサーファー力も育てる
これまでサーフィンというスポーツを通して日々成長してきたカノアさん。過去の自分自身を振り返ってもらい、大きく変化した部分を聞くと、人間性の部分だと答える。
「海に入ったら、プロもビギナーもみんな同じ。リラックスして入る時は、よく周りのサーファーと話すのですが、その時間が好きなんですよね。海の中はスマホもないから、生身のコミニケーションができる。一緒に写真を撮ったりサインもできないけど、心が通じた気がして、すごく喜んでくれます」

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彼との会話から感じる、大らかな温かみと安心感。そんな人間味のあるグッドバイブスも、海で学んだことみたいだ。
   
「どんなにサーフィンが上手くても、善い人間でなければリスペクトできない。まずは人間性がいちばん大切、サーファーとしてどうかは、その後の話です。自然にみんなをハッピーにするような、会って良かったと思われる人物でありたい」

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善い人間であろうとすれば、良いことが起こる。彼は自分の選手生命を通して、正しい行動を続ければ、報われる、ということを証明しようとしている。もちろん、目指しているのはトップ・オブ・トップ。だが、追い求めているのは結果だけではない。
  
「残す目標は世界チャンピオンと金メダル。それを達成する過程で、サーフィンの幸せを1人でも多くの人々に伝えたい。子どもにも大人にもポジティブなエネルギーを与えたいです。今までたくさん海から幸せをもらっているので、もっと恩返しをしたい。海の自然を守る活動も、自分にできることを続けていきたいですね」
   
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「サーフィンとは何か?」 の基礎知識が学べる記事は【こちら】
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