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MenaRD:獣道の果てにつかんだ「人生最高の瞬間」
格闘ゲーム史に残る空前のプライドマッチ「Kemonomichi FT10 Daigo vs MenaRD」にて死闘を演じた、ドミニカ共和国出身プロゲーマー・MenaRD選手へのインタビューをお届け。
『EVO』や『CAPCOM CUP』、Red Bull Kumiteといった世界最高峰の大会で優勝を収めているドミニカ共和国出身・27歳(2026年4月当時)のMenaRD選手。
そんな輝かしい実績を持つ彼は、今回、ウメハラ選手に対するリスペクトをありったけ詰め込んだ「果たし状」を丁寧にしたため、純然たる「挑戦者」としてこの対戦に臨んでいた。
この驚くべき事実は、ウメハラ選手が30年以上にわたりプレイヤーとして活躍を続け、数多のファンを魅了し、コミュニティを牽引し、格闘ゲームのプロシーンを切り拓いてきた「レジェンド」であることの証左だ。
だが、それはそれとしてMenaRD選手があるプレイヤーに対して勝負を挑んだか否か、勝利したか否かによって、彼の打ち立ててきた偉業の価値が揺らぐことはないはずである。
MenaRD選手にとっては、仮に負ければ「ウメハラ伝説」の新たな1ページとして刻まれるだけの、いわば「リスクしかない勝負」に思えた人も多いのではないだろうか。
果たしてMenaRD選手はこの「勝負」に何を求め、何を賭けて挑んだのか。10本先取制(以下、10先)の長期戦で無類の強さを誇るウメハラ選手をどのようにして上回り、勝利を経て何を得たのか。そして、その先に見据える新たな目標までを、本人にうかがった。
「Kemonomichi FT10 Daigo vs MenaRD」について
――今回のウメハラ選手との試合は、賞金やタイトルを賭けた対戦ではありませんでしたが、おふたりともご自身の中の「大切な何か」を賭けて戦った勝負だったのだと感じました。もしそうだとしたら、MenaRD選手はこの勝負に何を賭けて臨んだのでしょうか?
MenaRD:ウメハラさんは、私がこれまで対戦した中で間違いなくトップクラスのプレイヤーです。当然、負ける可能性も大いにあることを覚悟していました。
ただし、私にとって「負ける」とは「スコアで負けること」ではなく、「不甲斐ないパフォーマンスに終わること」こそが真の意味での「負け」だと捉えていたんです。ゆえに、あの場で最高のパフォーマンスを発揮すること一点のみに、自分のプレイヤーとしての価値すべてを賭けたと言えるかもしれません。
結果として試合の序盤、ウメハラさんに立て続けに2本先取されたときも動揺はありませんでした。「私たちならば必ず素晴らしい戦いを繰り広げることができる」という、強い手応えがありましたから。
――長期戦の経験が豊富なウメハラ選手に挑むにあたって、どのように対策を講じていったのでしょうか?
MenaRD:豪鬼を使用するプレイヤーは競技シーンに多数いますが、それぞれプレイスタイルや強みが異なり、ウメハラさんも独自のスタイルを持っています。そこで私は、あらゆる豪鬼使いの長所をミックスした「最強の豪鬼使い」を擬似的に作り出し、それを相手にスパーリングするという練習方法を採りました。
具体的には、第一にさまざまな豪鬼使いのトッププレイヤーたちを練習相手として招きました。第二に私のコーチ陣――LuiMan20やCrossoverといったプレイヤーに、私ではなく彼ら豪鬼使いたちをコーチングするようお願いしました。彼らに、「もしウメハラさんだったらMenaRDをどう攻略しようとするか」を徹底的に教え込むためです。
そして、ここが肝心なのですが――最終的に、私ひとりに対して、彼ら豪鬼使いたちが交代しながら次々と襲いかかってくる特殊な形式で練習試合を行いました。私の側から対戦相手の姿が見えないようにパーテーションを置き、豪鬼使い側はいつでも好きなタイミングでプレイヤーを交代できるルールで、10先を戦うのです。
――たとえば、攻めが得意な選手と守りが得意な選手がいて、その2名とランダムな順番で対戦するとしたら、苛烈な攻めと堅固な守りの両方をケアする必要が生じますね。
MenaRD:その通りです。たとえば、NL選手はとくにオフェンス能力が高く、Shuto選手はシステム面の深い理解とドライブパリィの精度に優れ、じゃじい選手は「波動拳」、なおーん選手は「百鬼襲」の活用を得意としていました。
そんな彼らとこの特殊ルールで対戦する練習方法は、非常に効果的だったと感じています。
――そのような質の高いトレーニングの成果も含めて、ご自身としては今回の勝負に全力を発揮できたと感じていますか?
MenaRD:はい。持てるすべての力を注ぎ込みました。私の人生において最高の試合ができたと思います。
そしてウメハラさんとの試合を通して、このゲームをプレイできるのは特別なことであり、決して当たり前ではないということを思い出させてもらいました。
私たち競技者はみな、トーナメントやリーグでの競争、結果、賞金といったことに気を取られてしまう瞬間がよくあります。しかしながら、『ストリートファイター』をプレイすること自体が、自分にとって最大の喜びであるべきなんです。そうした私にとっての「原点」を、この勝負を通じて思い出すことができました。
――世界最強プレイヤーの呼び声も高いMenaRD選手ですが、ウメハラ選手に対して果たし状を送ってまで挑戦するにいたった理由について教えてください。そして、この挑戦を通じてどのようなものを得られたと感じていますか?
MenaRD:ウメハラさんと10先形式で勝負できることは、プレイヤーにとって最大の「誉れ」であると同時に、『ストリートファイター』というゲームが与えてくれる体験の「頂点」だと考えていたからです。
私は今回のことを、単なる「実績」という言葉では表現したくありません。まるでトロフィーのようにケースに飾ったり、他人に見せびらかしたりするようなものじゃない。形には残らない「経験」であり、「栄誉」であり――私の人生において間違いなく最高の瞬間でした。
――そんな最高の瞬間を手にしたMenaRD選手が、次に成し遂げたいと思う目標や夢があれば教えてください。
MenaRD:私にとって次のゴールは、『ストリートファイターリーグ:Pro-JP』において、ZETA DIVISION Geeklyに勝利を捧げること。それ以上のことはありません。
『ストリートファイターリーグ』
――最後に、日本のファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。
MenaRD:地球の裏側で生まれ、全く違う文化の中で育った私ですが、『ストリートファイター』を通じてできた日本の皆さんとのつながりが、もっと大きく、強いものになっていけばいいなと思っています。
このゲームを通じて、皆さんに感動や記憶に残るシーンをたくさん届けていきたいです。よろしくお願いします。