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『Kingdom Come: Deliverance』:家庭用ゲーム機への道

中世ヨーロッパを忠実に再現する話題のKickstarterプロジェクトが、アルファ・ベータを経て、家庭用ゲーム機版の開発を進めている。
Written by Adam Cook
読み終わるまで:6分Published on
『Kingdom Come: Deliverance』

『Kingdom Come: Deliverance』

© Warhorse Studios

Warhorse Studioの野心的なKickstarterプロジェクト(目標額160万ドル / 約1億7600万円を突破。バッカー数:3万5384人)について、Red Bull Gamesは立ち上げ当初から追い続けており、過去にはリードデザイナーのDan Vávraのインタビューを紹介したが、今回は再びVávraに登場してもらい、途中経過を教えてもらうことにした。
現在アルファからベータへ移行中の『Kingdom Come: Deliverance』は、中世のチェコを忠実に再現しているRPGで、同国出身のVávraにとっては思い入れがひときわ強い。今回のインタビューではこのゲームの背景に更に一歩踏み込み、チェコの歴史などに触れながら、家庭用ゲーム機版がどのような内容になるのかについて話してくれた。
『Kingdom Come: Deliverance』は非常に魅力的ですが、家庭用ゲーム機では中々見かけないタイプのゲームです。このアイディアはどこから生まれたのでしょうか? 中世に思い入れがあったのでしょうか?
僕は愛国者なんだ。自分が生まれ育ったチェコの歴史や風景を愛しているのさ。でも、ビデオゲームでそれが語られることはまずない。僕が描こうとしているのは、ヨーロッパの歴史に大きな影響を与えたこの国の歴史と風景なんだ。『Kingdom Come: Deliverance』では、15世紀のヨーロッパ、神聖ローマ帝国時代のフス戦争が舞台になっている。当時のチェコとボヘミアは神聖ローマ帝国の中枢に位置していて、プラハが帝国の中心だった。僕たちはヨーロッパ史の中でひときわ面白く、血なまぐさく、魅力的なこの時代を紹介したいんだよ。僕たちのスタジオはプラハに位置しているから、ゲーム内に登場するロケーションを実際に見て回れるのは大きなアドバンテージになっているね。
愛犬とスタジオに座るDan Vávra

愛犬とスタジオに座るDan Vávra

© Warhorse Studios

どの程度中世のボヘミアを再現できているのでしょうか? 城の再現には調査と実験にかなりの時間を費やしたのでしょうか?
中世時代に書かれた書物を研究しながら、大学や博物館、歴史学者などと密接に仕事をしているし、15世紀の剣術を学んだ剣士からも話を聞いているんだ。『Kingdom Come: Deliverance』は、プラハから約50km南へ下ったサーザヴァが舞台だから、現地の城や教会、風景、森林などを実際に訪れたし、地元の人たちと話をしながら、資料用の写真をできるだけ沢山撮影して、現実に近づけようとしているんだ。結論から言ってしまうと、これはただのゲームじゃない。僕たちは15世紀のヨーロッパの生活そのものを紹介したいんだ。当時の人々がどんな話をしていたのか、何を恐れていたのか、そして日々の生活はどんなだったのか… そういう部分を描きたいんだ。
アルファをリリースして改めて気付いた部分はありましたか? アルファまで辿り着いたことで自分たちのヴィジョンに変化はありましたか?
アルファとベータからはできる限り沢山のフィードバックを集めたよ。ちょっとしたアンケートを取ったら、5,000以上の回答があった。素晴らしかったね。パフォーマンス面でいくつか問題があったけど、プレイヤーたちはクエストや戦闘システムは大いに気に入ってくれている。システムや機能はまだ初期段階なので、常に修正しているけれど、向かっている方向は間違っていないと思う。
まだまだやることはあるし、それをちゃんと形に仕上げてプレイヤーに届けるのが楽しみだよ。僕たちはクラウドファンディングで立ち上がったわけだし、コミュニティの声に耳を傾けて、彼らの意見を取り入れていくつもりさ。
テスト版と製品版の最大の違いは何になると思いますか?
テスト版のマップは製品版の6分の1の大きさだから、全体の一部しかプレイできない。ベータはまだ最適化されていないので、これから修正していくつもりだけど、製品版は複雑に入り組んだ会話や完成したクエスト、危険で血なまぐさい戦闘と包囲戦、15世紀の美しく広大な風景などが楽しめるはずだよ。ピザに喩えるなら、今は生地だけの段階だね。美味しいチーズやソースはリリースと同時に紹介されるし、プレイヤーは自分の好きなトッピングを楽しめるようになるはずだよ。
家庭用ゲーム機への移植はどの程度チャレンジングなのでしょうか?
アルファとベータはPC版だけだけど、既にスタジオ内では家庭用ゲーム機版のテストをスタートさせているんだ。現時点でかなり仕上がっているけれど、スムースに動作させるためにはまだいくつか修正が必要だね。
Xbox OneにはSteamの早期アクセスに似たPreview Programが用意されています。この機能を試す予定ですか? それとも完成してからリリースする予定でしょうか?
家庭用ゲーム機は完成した製品版をリリースする予定だよ。アルファとベータはPCだけだね。
『Kingdom Come: Deliverance』

『Kingdom Come: Deliverance』

© Warhorse Studios

コントローラ用に操作を再調整する必要はありましたか?
なかったね。スタジオではXbox Oneを使いながらプログラミングをしているし、戦闘はコントローラで完ぺきに対応できるよ。
PC版と家庭用ゲーム機版のグラフィックの差の違いは? 家庭用ゲーム機版の方が劣っているのでしょうか?
その点については具体的な情報を教えられる段階にないんだけど、このゲームはディテールが細かくて、数多くの植物やNPCが登場するし、広大な世界が再現されている。だから、そのすべてを家庭用ゲーム機版に盛り込むためにはまだまだ沢山やるべきことがあるんだ。
Kickstarterプロジェクトとしてスタートしてしばらく経ちますが、今日までにライバルゲームは登場しましたか? ライバル、または同タイプのゲームだと考えているタイトルはありますか?
他のゲームやスタジオをライバルと呼ぶつもりはないね。もちろん、市場をしっかり調査していくつもりだけど、他のゲームが成功を収めるのであれば、それはそれで評価したい。他のゲームが素晴らしければ、逆にモチベーションになるしね。でも、現時点では『Kingdom Come: Deliverance』と同じゲームはないと信じているよ。歴史考証がここまで正確でリアルなRPGは他にはないからね。そこが僕たちのセールスポイントなんだ。
『Kingdom Come: Deliverance』

『Kingdom Come: Deliverance』

© Warhorse Studios

ゲームスタート時のキャラクター作成の自由度とゲームストーリーの自由度について教えてください。
プレイヤーが操作するヘンリーというキャラクターは自由に成長させることができる。すべての能力とスキルを自由にレベルアップさせることができるんだ。でも、クラス分けはされていないし、最初から自分のスタイルに合わせたゲームがプレイできるよ。
僕たちは様々な形でストーリーを進めてもらいたいと思っているんだ。だから、クエストのゴールはひとつだけど、それまでのプロセスはプレイヤー次第だ。剣を手にとって暴力的に解決することもできれば、話し合いで解決することもできる。もちろん、間違った選択をすればクエストによっては解決できなくなってしまうけど、メインクエストが影響を受けることはないようにするつもりだよ。