A promotional shot of Castlevania: Symphony of the Night.
© Konami
ゲーム

『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』:元祖メトロイドヴァニアの影響力

2019年に創業50周年を迎えた古参デベロッパーが1997年にリリースした、元祖 "メトロイドヴァニア" として知られるクラシックタイトルの魅力にあらためて迫る。
Written by Kevin Wong
読み終わるまで:6分Published on
1997年、Konamiは『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』をリリースした。
この作品は、1994年にリリースされた『スーパーメトロイド』と共にビデオゲーム史に残る名作のひとつに数えられており、この2作品の人気が、不変とクオリティを意味するひとつのジャンル "メトロイドヴァニア" を生み出すことになった。
『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』がリリースされるまで、『悪魔城ドラキュラ』シリーズの多くは “リニア” だった。
ドラキュラII 呪いの封印』(1987年)にはアイテムを購入できる町などある程度のオープンワールド要素が盛り込まれていたが、大半はクリア型ステージで構成されており、それらを進んでいき、最後にラスボスと戦うというフォーマットが採用されていた。
しかし、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』は、ゲーム全体がドラキュラ城内という設定で、城がひとつの広大なマップとしてまとめられている。また、プレイヤーキャラクターが吸血鬼アルカードという設定もユニークだ。そして、アルカードは優秀な吸血鬼なのだが、スタート直後に装備品をすべて奪われてしまう。
つまり、プレイヤーはレベルアップをしたり、魔法を学んだり、能力を取得したりしなければならなくなるのだ。そして、このゲームはレベルアップを重ねていくことで、城内の進めるエリアが増えていくようになっている。たとえば、霧に変身できるようになれば、扉をすり抜けてその奥へ進めるようになるのだ。
長い間、ビデオゲームファンは、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』の広大で自由度の高いマップにインスピレーションを与えたのは任天堂の『メトロイド』シリーズだと思い込んでいた。
『メトロイド』シリーズの金字塔のひとつ、『スーパーメトロイド』では、主人公サムスが特殊スキル《スペースジャンプ》や《グラップリングビーム》を覚えてさらに上へ登ったりさらに遠くまで飛んだりすることで、序盤では進めなかったエリアや奥のエリアへと進んでいく。
しかし、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』でアシスタントディレクターを担当していた五十嵐孝司は、開発チームに大きなインスピレーションを与えたのは『メトロイド』シリーズよりも『ゼルダの伝説』シリーズだったことを明言している。
第1作『ゼルダの伝説』(1986年)には広大な地上マップが用意されており、プレイヤーは同じ場所を何回も通過することになるのだが、アイテムを手に入れることで新しいエリアへ進めるようになったり、謎が解明されたりするようになっている。
たとえば、笛を吹けば隠し階段が出現したり、パワーブレスレットを入手すれば岩を動かして通路を作ったりすることができる。
『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』の開発チームは『ゼルダの伝説』のこのようなゲームデザインからヒントを得て2D横スクロールアクションで表現したのだ。しかし、このゲームの系譜を引き継ぐ作品群は、今も "ゼルダヴァニア" ではなく "メトロイドヴァニア" と呼ばれている。
Konamiは2019年に創業50周年を迎えたため、今年は多くのライターがこのデベロッパーのより大きな仕事を称える記事を様々なメディアで書くはずだが、ここではこのシリーズの話を続けよう。
『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』は、『悪魔城ドラキュラ』シリーズにも大きなインスピレーションを与えてきた。過去20年でリリースされた複数の『悪魔城ドラキュラ』シリーズは、この1997年リリースのクラシックから多くを流用している。
また、 “メトロイドヴァニア” はインディーゲームカルチャーに多大な影響を与えており、数多くのオマージュやトリビュートが存在する。
『洞窟物語』『Dead Cells』『Hollow Knight』などは “メトロイドヴァニア” をベースに独自のひねりを加えた作品で、『覆面闘士』は吸血鬼の代わりにルチャドールとしてプレイし、コウモリの代わりにニワトリに変身する。
しかし、もう少し調べてみると、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』の影響が与えたエリアはもっと広いことが明らかになってくる。
たとえば、『スーパーマリオギャラクシー』は、スターを集めるために同じステージを複数の方法でプレイする必要があり、『スーパーマリオ オデッセイ』も、一度プレイしたステージに残っているスーパームーンを見つけるための “お宝写真” を用意している。
また、『レッド・デッド・リデンプション2』のようなオープンワールドタイトルも、時間帯や時代を変えて同じロケーションを訪れて、新しい人物に出会ったり、新しいミッションを解放したりするようになっている。
なぜ我々はこのスタイルのビデオゲームを何回も繰り返しプレイしてしまうのだろうか?
答えは、水平な1本道をひたすら進んでいく他のリニアタイトルとは異なり、“メトロイドヴァニア” は垂直に進める − 奥深さがある − からだ。
ひとつのステージをひたすら掘り進めるこのジャンルは、プレイヤーの反射神経よりも注意力を評価する。このジャンルのデベロッパーは、プレイヤーに新しい挑戦を投げ続ける代わりに、手に取って表裏をじっくりと観察しなければ答えが見えてこないパズルを提供することを好んでいる。
ビデオゲーム業界は “高い没入感” を目指しているが、「巧妙な仕掛けを探り、その裏に隠された秘密を解き明かそうとする」ほど没入感が高いものはない。
ヒントを集め、それらを繋ぎ合わせて答えを見つける喜びを知ったプレイヤーは、さらなる喜びを得るためにひたすら探索を続けていくことになる。
今年、Konamiは創業50周年を祝うべく “アニバーサリーコレクション” を3タイトル用意しており、すべてがPC・PS4・Xbox One・Nintendo Switchでリリースされる。
その第1弾『アーケードクラシックス アニバーサリーコレクション』はすでに4月18日にリリースされており、第2弾の『悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション』も5月16日にリリースされた。
『悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション』には、『悪魔城ドラキュラ』(ファミコン / 1993年)、『Castlevania II Simon’s Quest』(『ドラキュラII 呪いの封印』の北米版 ・ファミコン / 1989年)、『悪魔城伝説』(ファミコン / 1989年)、『ドラキュラ伝説』(ゲームボーイ / 1989年)、『ドラキュラ伝説II』(ゲームボーイ / 1991年)、『Vampire Killer』(メガドライブ / 1994年)、『悪魔城すぺしゃる ぼくドラキュラくん』(ファミコン / 1999年)の初期8タイトルが収録されている。
『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』は、PS4の『悪魔城ドラキュラX・セレクション 月下の夜想曲 & 血の輪廻』に収録されている他、Xbox LIVE アーケードで購入したあとXbox Oneの後方互換機能経由でもプレイできる。
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