Laura Horvath seen during training in Budapest, Hungary on April 10, 2024.
© Balazs Palfi/Red Bull Content Pool
フィットネス

CrossFit世界女王が語る:女性とストレングストレーニング

CrossFitの女性部門を制したレッドブル・アスリートが、女性におけるストレングストレーニングの重要性について語った。
Written by Nutan Shinde
読み終わるまで:7分Published on
「すべての女性がプッシュアップに取り組むべきです」
このように語るのは、世界最強のフィットネスを備えている女性として活躍しているローラ・ホルバスだ。素晴らしい筋力と回復力、そして強固な意志を誇るホルバスは、2023年のCrossfit Gamesを圧倒的な強さで制したあと、フィットネスシーンで躍動を続けている。筋力、すなわちストレングスのアイコンとして認められている彼女は、エリートアスリートを再定義する存在だ。
しかし、ホルバスのフィットネスへの情熱は競技だけに留まらない。彼女はそれをより大きなものへ注いでいるのだ。近年、より多くの女性がウエイトリフティングに取り組んだり、HYROXに出場したり、フィットネスに関する古いしきたりを取り払ったりしている中、ホルバスも「ストレングスはすべての人に関わること」という明確なメッセージを届けようとしている。
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ジムの申し子

一部のトップアスリートは、自分に最適なスポーツを自分で “見つけ出して” いるが、ホルバスは自分に最適なスポーツに “育てられた” 。両親がハンガリー・ブダペストにクライミングジムを構えていた彼女は、幼い頃からそこを遊び場にしていたのだ。ホルバスは次のように説明している。
「今から30年前、私の兄が生まれたタイミングで両親がクライミングジムの建造を始めました。ですので、私はジムで生まれたようなものなのです。すべての自由時間をジムで過ごしていましたし、放課後になれば必ず訪れていました。最初はただ遊んでいるだけでしたが、6歳になるとクライミングに興味を持ち始め、実際にやってみると気に入ったので、すぐに競技活動を始めました」
クライマーとしてキャリアをスタートさせたローラ・ホルバス

クライマーとしてキャリアをスタートさせたローラ・ホルバス

© Balazs Palfi/Red Bull Content Pool

私はジムで生まれたようなものです
ローラ・ホルバス
競技活動を始めたホルバスは、国内選手権で圧倒的な強さを見せると、ヨーロピアン・カップに挑むなど、自分の限界をプッシュし続けていったが、やがてさらに上を目指したいと思うようになった。
「16歳か17歳頃、クライミングのためにストレングストレーニングに取り組むようになりました。クライミングをしているだけではダメで、ストレングストレーニングに取り組む必要があることを私は理解していたのです」
ストレングス・トレーニングに積極的に取り組んでいるホルバス

ストレングス・トレーニングに積極的に取り組んでいるホルバス

© Balazs Palfi/Red Bull Content Pool

このように振り返るホルバスに兄のクリストフがCrossfitを紹介すると、彼女は大きな転機を迎えることになった。
「兄とCrossfitに取り組むようになると、クライミングに取り組む時間が短くなっていきました。そして最終的にCrossfitへ転向したのです」
ボルダリングからバーベル、クライミングロープから縄跳びへ。ホルバスは、ロックホールドを鉄製のグリップに持ち替え、自分のスポーツにストレングスを加えた。Crossfitが彼女の新しい遊び場になったのだ。本人は次のように振り返る。
「Crossfitへの転向は極めて自然でした。なぜなら、私はクライミング時代も競い合うのが好きだったからです。私は人生のすべてにおいて、競い合うことが好きでした。すべてにおいて私は負けず嫌いなのです。昔から趣味としてスポーツに取り組むことは考えていませんでした。本気で競い合いたかったのです」
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自己肯定

ホルバスにとって、ストレングスとはルックスを高めるためのものではなく、自己肯定のためのものだ。
「頼りなくて小さな女性体型ではなく、強靭な女性体型を徐々に好きになっていきました。私は昔から大柄な方でしたが、Crossfitが楽しいと思えた理由は、体型が規定されていなかったところです。大柄でも、筋肉質でも問題ありません。Crossfitでは見た目は関係ありません。パフォーマンスがすべてなのです
クライミングでは、軽量な体型であるほど良いとされていたが、Crossfitはこの概念を完全にひっくり返した。ホルバスが続ける。
「もちろん、Crossfitでも身体を好きなだけ大きくすることはできません。重量制限が存在します。しかしながら、Crossfitを継続していけば、体型が自然に適応していくので、他のスポーツのように体重が重いことが大きな問題になることはありません
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女性のフィットネス改革

ストレングストレーニング、いわゆる “筋トレ” は今や世界的なムーブメントになっており、HYROXはその証左と言えるだろう。HYROXは、8種類のファンクショナル・ワークアウトステーションとランニングを組み合わせて、持久力と筋力を競い合うグローバルスポーツだ。
2024-25シーズンは全世界で50万人がHYROXに参加することが予想されており、この数字は、もはやフィットネスがひとりでジムに通ってウエイトに取り組むことではなくなったことを示している。「フィットネス=コミュニティ・競技・自信」なのだ。
そして、HYROXの女性参加者数は全体の約50%を占めており、女性がストレングストレーニングへ取り組むことが常識になりつつある。ホルバスはこのような現状に好感を抱いている。ホルバスは、あらゆる女性にストレングストレーニングに取り組んでもらいたいのだ。
「すべての女性が懸垂をできるようになるべきだと思っています。たとえば、私の母は長年懸垂ができずにいましたが、Crossfitを始めたことで、できるようになりました。素晴らしいことだと思います」
ローラ・ホルバス

ローラ・ホルバス

© Ádám Bertalan/Red Bull Content Pool

すべての女性が懸垂をできるようになるべきだと思っています
ローラ・ホルバス
また、ウエイトリフティングの目的は、筋力の増強だけではない。自立というより大きな目的もあるのだ。ホルバスが説明する。
「男性だけがウエイトリフティングに取り組む必要はありません。私は、女性も身体を鍛えて動いたり、重いウエイトを挙げたりしても良いと思っています。女性にとって大きなエンパワーメントになるはずです。もちろん、男性に電球を交換してもらっても良いですが、私たちが交換しても良いでしょう」
より多くの女性がジムでのストレングス強化が人生の強化に繋がることに気付き始めています
ローラ・ホルバス
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慣習を打破

ホルバスは従来の美意識に自分を当てはめることを拒否している。彼女は慣習を打破しようとしているのだ。
すべての人に自分を好きになってもらいたいです。自分の身体に自信を持ち、痩せ型・大柄・筋肉質などの枠に自分をはめ込まないでください。自分の身体を快適に感じることができていれば、それで十分です」
「雑誌を開き、モデルの皆さんを見れば、誰もが細身で美しいと思うでしょう。では、少し大きかったり、筋肉がついていたりすれば、美しくないのでしょうか? 昔から、私は雑誌を見るたびに “私は体格が違うからモデルのようにはなれない” と思っていました。あのような女性になるために、食事量を減らして、身体を削る必要はないのです」
女性のフィットネス強化を推進するローラ・ホルバス

女性のフィットネス強化を推進するローラ・ホルバス

© Ádám Bertalan/Red Bull Content Pool

このように語るホルバスの成功の秘訣はどこにあるのだろうか? ホルバスが意識しているのは、ストレングスだけではない。
何かで成功を収めたいのなら、良いルーティンを構築する必要があります。同じことを毎日繰り返すので、退屈に感じるときもあるでしょう。ですが、何かを極めるためには1万時間が必要と言われていますし、とにかく続けましょう。そうすることで何かに秀でることができるのです」
この先どれだけ記録を更新しようと、どれだけ重いウエイトを挙げようと、ホルバスの世の中への思いはシンプルなままだ。
「ファンクショナル・ワークアウトのようなアクティビティを通じて、私たちはより健康に、より幸せに、より長く生きられるようになると思っています」
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Laura Horváth

Hungary's Laura Horváth is a titan of the fitness training world, named The Fittest Woman on Earth in 2023.

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