Liam Lawson with the runner-up trophy for the 2021 DTM season
© Julian Kroehl/Red Bull Content Pool
ストックカー

【レッドブル・ジュニアチーム注目ドライバー】リアム・ローソンが見据えるF1デビュー

2021シーズンのDTMでルーキーながら大活躍を見せたあと、次のステップへ進もうとしているニュージーランド出身の19歳にスポットライトを当てる。
Written by Paul Keith
読み終わるまで:9分公開日:
レッドブル・ジュニアチームに所属するニュージーランド人ドライバー、リアム・ローソンは2021シーズンのDTM(ドイツツーリングカー選手権)に旋風を巻き起こした。レッドブルAFコルセのフェラーリを駆る19歳の鮮烈ルーキーは圧倒的な優勝を飾り、ドライバーズランキングトップへ急浮上した。
DTM 2021シーズンは、古参ドライバーが若きローソンからタイトル獲得のチャンスを取り上げるという後味の悪い幕切れとなってしまった。しかし、タイトルを逃したのは残念とはいえ、この結果はF1デビューを目指すローソンの妨げにはならないはずだ。
DTMを1シーズンで卒業し、2021年12月にはアブダビでのF1ヤングドライバーテストスクーデリア・アルファタウリから参加したローソンは、フル参戦2シーズン目となるFIA F2 2022シーズンでの明るい未来を心待ちにしている。
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【リアム・ローソンのDTM 2021シーズンを振り返る】

ローソンは同じくDTM初参戦だったF1ドライバーのアレックス・アルボンとコンビを組み、AFコルセが用意したフェラーリ488 GT3をドライブした(最終戦はニック・キャシディがアルボンの代役を務めてニュージーランド人コンビが実現)。
チームはコース内外で速さを発揮し、ピットレーンではF1スタイルの作業でタイムを稼ぎ、モンツァでの開幕戦ではいきなり優勝を飾って周囲を驚かせた。また、レッドブル・リンクで開催された第5戦ではレース1・レース2を連勝。安定したドライビングを見せていたローソンはチャンピオン争いでトップに急接近した。
ローソンはタイトル争いでリードを維持したまま最終戦ノリスリンクに乗り込み、予選でもポールポジションを獲得したが、そこから先は最悪の展開となった。
ABTアウディをドライブするケルビン・ファン・デル・リンデがレース1とレース2でスタート直後のターン1でローソンと接触。ローソンはレース1こそ表彰台圏内まで復帰できたが、レース2の接触ダメージは完走が精一杯の深刻なものだった。
そして、このような荒れたレースを尻目にメルセデスがチームオーダーを発令。結局、2021シーズンのDTMタイトルはマキシミリアン・ゲーツの手に渡った。
レース直後、感情の昂りを抑えきれなかったローソンはファン・デル・リンデを「僕がこれまで競ってきた相手の中で一番ダーティな男」と非難(レースから数日後、ファン・デル・リンデはローソンに謝罪)。
ようやくほとぼりが冷めた今、ローソンがDTMで戦った1年間を振り返るとともに今後の展望について語ってくれた。
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【リアム・ローソン インタビュー】

— シーズンを振り返ってみて、DTMでの経験についてどのような感想を持っていますか?
DTM参戦は本当に楽しめましたし、とても楽しい経験になりました。僕がこれまで慣れ親しんできたカテゴリーとは様々な面で違っていました。シーズン全体としては素晴らしい内容でしたし、チーム全員を誇りに思っています。
でも、あのような形でシーズンが決着するのは期待通りではなかったですし、思いもよらないことでした。
— シーズン開幕戦は上出来の内容で、デビューレースでDTM史上最年少優勝を記録しました。開幕戦モンツァの感想を教えてください。
モンツァは僕にとってDTMデビューレースでした。実はGT / ツーリングカーでレースするのも初めてだったので、現実的な期待をまったく持たないままレースウィークエンドに臨みました。
予選6番手だったので優勝は考えていませんでしたし、正直なところ優勝は少し想定外でした。自分たちでも驚くような結果になり、現実ではないような気分でした。でも、いったん実感が湧いてくると、僕たちはチャンピオン争いで良いポジションにつけているのだと自覚しました。
— チャンピオンシップにおける重要な瞬間はどこだったのでしょう? 「タイトルを獲れるかもしれない」と自覚したのはどのタイミングでしたか?
僕にとって重要な瞬間は、先ほど話したモンツァでの初優勝ですね。あのレースで手ごたえが掴めました。テストが始まってすぐにチームがまとまっていったので、シーズン開幕前から良い予感がありました。
どれだけ速いのかは分かっていませんでしたが、チームがとても上手くまとまっていることは分かっていました。そして開幕戦で速さを確認したとき、タイトルを争えるチャンスがあることが分かりました。
DTMデビューシーズンで3勝・ポールポジション4回・表彰台10回を記録
DTMデビューシーズンで3勝・ポールポジション4回・表彰台10回を記録
シーズン開幕前から良い予感がありました
リアム・ローソン
— ヨーロッパは母国ニュージーランドから遠く離れていますが、地元での反応はどうでしたか?
母国からの応援はすごかったですね。年を重ねるごとに応援が増していますが、2021シーズンは終盤にかけて応援がひときわ大きくなりました。シーズンを通して僕のレースを見てくれている人たちから素晴らしい応援メッセージを受け取っています。本当に嬉しいですね。
— レッドブルAFコルセの雰囲気はどうでしたか?
2021シーズンのレッドブルAFコルセは素晴らしいチームでした。自分が家族の一員のように感じられるチームは初めてでした。ガレージの誰もがすごく情熱的で、「勝ちたい」という気持ちを僕と同じくらい強く持っています。
このチームと一緒に仕事をしていると、自分が新人ドライバーだということを忘れそうになります。ひとりのプロフェッショナルとして扱ってくれたのが嬉しかったですし、心から楽しめました。また、全員の仕事への姿勢がとにかく素晴らしかったですね。みんなが全力を尽くすんです。
2021シーズンのレッドブルAFコルセは素晴らしいチームでした。家族の一員のように感じられるチームは初めてでした
リアム・ローソン
— DTMでのレースで最大のチャレンジとなったのは何でしたか?
最大のチャレンジはBoPルール(Balance of Performance:マシン間の性能格差調整)、特に上位フィニッシュしたドライバーに課せられるサクセスバラストでした。
BoPのおかげで序列が大きくシャッフルされ、好成績を収めたドライバーは余分な重量をマシンに積まなければならず、レースウィークエンドでは毎回マシンの様々な部分に調整を加えなければなりませんでした。バラストを積んだ状態で速く走る方法を考えなければならないことも往々にしてありました。
シーズン開幕戦のモンツァではBoPに大きな変動があり、サクセスバラストを課せられてしまったので、レース1と同等のペースを期待してレース2へ臨んだのですが、速さがまったく足りませんでした。重いバラストを積んだマシンを乗りこなす方法が分からず、結果的にクラッシュしてしまいました。ですので、BoPによる変動への適応が最も難しかったですね。
— 最も思い出に残っているレースを教えてください。
2021シーズンで一番思い出に残っているのは、レッドブル・リンクのレース2です。本当にチャレンジングなレースでした。僕のマシンは25kgのサクセスバラストを積んでいて、マルコ・ウィットマンが背後に追っていました。マルコが乗るBMWはストレートスピードが非常に速く、抑え込むのが最も難しいマシンなんです。シーズンのあの時点でのBMWは特に速かったですね。
ですので、素晴らしく速いマルコからポジションを守るのは至難の業でした。おそらくシーズンベストのレースでしたね。最終盤までマーカス・アウアーを追いかけて優勝争いを展開したアッセンのレース2もほぼベストレースと言える内容でした。あのバトルも強烈でした。
— レッドブル・リンクでは2連勝を飾りましたが、F3やF4でこのサーキットを走っていた経験がアドバンテージになったと思いますか?
そうは思いません。レッドブル・リンクでレースを戦った経験は確かにありますが、他にも様々なサーキットで経験を重ねてきました。レッドブル・リンクが僕たちのマシンに合っていたというだけだと思います。
あのレースで決め手になったのは、同地でレース前週に実施したテストです。あのラウンドを迎えるまでチャンピオンシップでかなり遅れを取っていたので、早急にポイントを埋め合わせる必要があることは分かっていました。ですので、テストでは一生懸命取り組みました。この努力がレースウィークエンドでの大成功に繋がりました。
市販スポーツカーとの関連性がより強くなっているGT3車両
市販スポーツカーとの関連性がより強くなっているGT3車両
GT3マシンの全体的なスピードはそれほど速くはありませんが、フィーリングはとても良好です。何しろフェラーリですからね!
リアム・ローソン
— あなたがこれまでドライブしてきたマシンと比較して、GT3マシンはどうでしたか?
全体的なスピードはそれほど速くはありませんが、フィーリングはとても良好です。何しろフェラーリですからね! DTM参戦マシンはすべてスーパーカーがベースになっていて、隅々まで考え抜かれて設計されています。スーパーカーのデザインは予算など度外視ですし、乗っているとすべてが極めて良好に機能していることがダイレクトに感じ取れます。
ドライバーエイド機能については、最初はあまり好きになれなかったのですが、しばらくするとトラクションコントロールやABSを好きなように使えるところがすごく気に入りましたね。もちろん、これまで僕がドライブしてきたマシンとはすべてが別物でした。
— アレックス・アルボンをチームメイトに迎えた感想は?
アレックスと同じチームでシーズンを経験できたことは本当に最高でした。アレックスは僕のロールモデルです。彼と同じ足跡を辿ろうとしています。おそらく最も印象的なのは、彼のフィードバック能力です。アレックスがマシンのフィーリングについて話しているのを聞きながら大いに学ばせてもらいました。彼は本当に説明が上手く、常に理路整然としています。
空港へ向かう長時間の移動中などでF1やモータースポーツについて話す機会にも数多く恵まれましたし、アレックスのおかげでF1シーンの仕組みをより深く理解できました。
アレックス・アルボンを同僚に迎えたローソンは大きな成長の糧を得た
アレックス・アルボンを同僚に迎えたローソンは大きな成長の糧を得た
アレックス・アルボンのおかげでF1シーンの仕組みをより深く理解できました
リアム・ローソン
— 次のステップはどのようなものになるのでしょう?
僕ひとりで決められるものではありませんが、DTMにはもう参戦しないでしょう。望んでいた結末にはなりませんでしたが、2021シーズンを戦えたのは良い経験になりました。ですが、僕が心から誇りに思うのは2021シーズンを通じたチームの仕事ぶりです。この機会を存分に楽しみました。
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【2022シーズンへ向けて】

2022シーズンのローソンは、F1直下のフィーダーシリーズFIA F2にフル参戦する予定だ(本稿執筆時点ではまだ所属チームはアナウンスされていない)。また、ローソンは2021年末にイタリア・ファエンツァにあるスクーデリア・アルファタウリのファクトリーを訪れてシート合わせを行ったあと、アブダビでのF1ヤングドライバーテストに参加して2021シーズン仕様のスクーデリア・アルファタウリAT02をドライブした。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーでドライバー育成プログラム責任者を務めるヘルムート・マルコは、2022シーズン中にローソンが数回のF1フリープラクティス出走機会を得ることを期待している。
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